聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【閑話・小話詰め10】

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【小話14】

 己が何者であるか知れば、その力を自覚するのは一瞬だった。
 体の内側から魔力のうねりを感じる。
 魔力が出口を探して体中を目まぐるしく奔流している。
 自分中にこんなモノがあるなんて想像もしていなかった。

 だが、そうだからと言って自分はどうする?
 愛する少女は自分との愛を確かめるため遙か彼方へと旅立ってしまった。

 愛する少女は世界より自分を取った。
 自分だって世界より愛する少女を取る。

 ならすることは1つだ。

 少女の生きてきた世界を守ろう。
 少女は帰ってくると言った。
 少女が帰ってくる場所を守らないといけない。
 今の自分はソレが出来る。

「カー君、モリリン、来い」

「「はっ!」」

 空間が歪んで2体の悪魔が男…ルークの前に膝まづいた。
 ルークは腰にシーツを巻き付けただけの格好だ。
 だがそれでも威厳が無くなる、と言う事は無かった。
 寧ろその圧は今まで見て来た相手など、今のルークと比べれば赤子のような者であろう。

「お前たちにフォクウンの悪魔の討伐を命じる。私に従うなら捕縛で良い。従わない意思を見せたなら消せ」

 氷のように冷たい声。
 冷たい眼差し。
 怜悧な表情。

 先程愛した少女を抱いた時の蕩ける様な甘さの、熱に浮かされた柔らかな声と瞳と表情は失われた。
 愛した少女が消えたから。
 きっと愛する少女が帰って来なければ、ルークは、魔王は熱さと甘さを忘れて取り戻すことは出来ないだろう。

 今日この日、少女が愛した無垢なる魔王は…冷たき氷の化身と化した。

「サイヒ、早く帰って来てくれ、私は待ち続けるから……」

 少女の名前を呼ぶその声だけは、昔の甘い熱の籠った声だった。
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