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【69話】
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白い白い空間だった。
あまりにも白すぎて上下左右が分からなくなるほどの白。
彼方まで地平線が続いているのか目の前が壁なのか分からない程の白。
白く
白く
白く
ソコに立ち入った者は自分が立っているのか座っているのか浮いているのか沈んでいるのか分からずに、錯乱しいずれ発狂するだろう。
そんな狂気じみた白の空間にサイヒは佇んでいた。
この空間に入ってからどれほどの時間が経過したかなど分からない。
もう何年も何十年も何百年も、あるいはそれ以上の天文学的な数字の時間の様に感じたし、ほんの数秒だった気もする。
だがサイヒの青銀の目は強い意志を宿していた。
狂気の鈍い光などその瞳には宿っていない。
ふぅ、とサイヒは息を吐く。
そして呆れたような顔をして言い放つ。
「かくれんぼはもう終わりにしたいんだが?」
『おやおやつれない、もう少し隠れ鬼を楽しもうじゃないか』
「悪いが私はせっかちなんだ。これ以上隠れるなら空間もろとも消し去ってやるが?」
『おぉ怖い怖い、無暗に私の空間を傷つけられたくないからね。君を私の城にお招きするとしよう』
サイヒの脳内に声は直接語りかけてくる。
男なのか女なのか若いのか年老いているのか判別がつかない声だ。
その声がサイヒを招くと発言した瞬間に、サイヒの目の前に大きな白い城門が現れた。
門を守る兵士は居ない。
むしろサイヒを中へ促す様に門はギィ、と重低音の音を上げながら開かれて行く。
「はっ、城迄真っ白か。いい加減に違う色が見たいのだがな」
『神は色を好まない。色を持つ君こそがこの空間で異質なのさ、天界とはそう言うものだろう?』
クスクスと笑い声がサイヒの耳元で聞こえる。
脳に直接語り掛けるのは止める事にしたらしい。
白い王宮をサイヒはただ真っ直ぐに歩いて行く。
それを阻止する者は居ない。
ただただ真っ直ぐと進む。
支配者とは真っ直ぐに、1番奥に座を構えている者だからだ。
王宮の中も白一色でどれだけ歩いたか分からなくなる。
王宮の主の趣向で無限回廊にしている事も想定はしている。
だがサイヒは迷いなくただ前に進む。
力ある物はそんな小細工を使う必要が無いからだ。
王宮の中、最初の城門と同じほどの大きな扉があった。
其処が王宮の主の居場所だ。
昔から決まっている。
支配者とはそう言うものなのだ。
ギィ
扉が開く。
白い絨毯の先に居るのは白い存在。
玉座まで真っ白だ。
白い存在は長い白い髪をしていた。
肌の色も雪のように白い。
白いローブを着込んでいる。
白い睫毛に縁取られた瞳迄限りなく純白に近い純銀だ。
「凄い凄い、見事に白いじゃないか」
サイヒはパチパチと手を叩き白い人物を称賛した。
『その態度、気に入らないね。私を下に見ているつもりなのかな?』
「ソチラこそ、まるで私より自分が格が上だとでも思っているのか?」
ギリィ
白い存在が奥歯を噛み締める。
『全能神である私にふざけた態度を取る。馬鹿なのか、よほど私の足元をすくう自身でもあるのか?』
「全能神?長く生きただけの人間が面白い事を言う」
『ほう、君には私が人間に見えるのかな?』
「いいや、神様に見えているさ。人間が想像する神様像ドンピシャだな」
ピクリ、と自称全能神が眉を顰める。
その仕種は確かに人間らしい。
「長く生きても人間の想像力には限界があるようだな。数億年も生きていてその程度の想像力しか無いのだから、なぁ古代種」
『貴様!何を知っている!!』
「例えば数億年前に神が世界を滅ぼした事。
例えば神の手から逃げ延びた人類が、特殊能力に目覚め新世界の管理者になった事。
例えばその管理者が古代種と呼ばれ新たな世界の神々を管理している事。
例えばその管理者が神による統治に飽きて、自らが神になろうとした事、だとかだな。
あぁこの言い方だとまるでお前が人間で、神に成り代わった幼稚な爺、と言う事になるな」
クツクツとサイヒが笑う。
挑発するように。
『何故、高々20年も生きていない人間がそんなことを知っている!?』
「お前は私を弄り過ぎたんだよ神様。
お前が私を魔王と愛し合うように遺伝子を弄ったこと。
魔王より強くあるために力ある者の血を掛け合わせた事。
まさか、自分と同じ古代種の血迄混じるとは思わなかったみたいだな。
私をカスタマイズするのは相当楽しかったようだな。そんなに愛し合う英雄と魔王の闘いが見たかったか?泣きながら殺し合いするのを見て楽しみたかったか?悪趣味すぎて流石に引くぞ。
しかし【全知全能】と言う能力を持ちながら、考え無しに快楽に走るから足元をすくわれるんだ。
私の中には歴代の”本物の聖女”と”古代種”と”最高峰の魔術を司る魔族”の力と知恵が宿っている。
お前は私に与え過ぎたんだよ」
『古代種?古代種の血が流れているだと!?何処のどいつの血が!!』
「訛りがある性別不詳気味の愉快犯の血だ」
『あの、餓鬼かぁっ!』
「おいおい神様、これぐらいで激高していると神様じゃなくて人間だと皆にバレるぞ?
天界の皆はお前が人間だと知らないんだろう、なぁ神様?」
『ならば…お前を殺すまでだ!お前は私が創った!なら親である私にはお前を消す権利だってある!』
「それ子供虐待する人間の親が言うセリフまんまだな、神様よ。いや、それとももう古代種と呼んでやろうか?人間の方が良いか?それともお父様、か?」
『黙れ――――――――っ!!!!』
自称神の怒号が白い世界を揺らした。
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古代種云々についてはサイト内のお話全部に通じる世界設定です。
【皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか?】を読んで頂けると分かります。
設定が繋がっているお話の中で1番古い時代の話になります。
興味が少しでもありましたら読んでみて下さると嬉しいです(*- -)(*_ _)ペコリ
あまりにも白すぎて上下左右が分からなくなるほどの白。
彼方まで地平線が続いているのか目の前が壁なのか分からない程の白。
白く
白く
白く
ソコに立ち入った者は自分が立っているのか座っているのか浮いているのか沈んでいるのか分からずに、錯乱しいずれ発狂するだろう。
そんな狂気じみた白の空間にサイヒは佇んでいた。
この空間に入ってからどれほどの時間が経過したかなど分からない。
もう何年も何十年も何百年も、あるいはそれ以上の天文学的な数字の時間の様に感じたし、ほんの数秒だった気もする。
だがサイヒの青銀の目は強い意志を宿していた。
狂気の鈍い光などその瞳には宿っていない。
ふぅ、とサイヒは息を吐く。
そして呆れたような顔をして言い放つ。
「かくれんぼはもう終わりにしたいんだが?」
『おやおやつれない、もう少し隠れ鬼を楽しもうじゃないか』
「悪いが私はせっかちなんだ。これ以上隠れるなら空間もろとも消し去ってやるが?」
『おぉ怖い怖い、無暗に私の空間を傷つけられたくないからね。君を私の城にお招きするとしよう』
サイヒの脳内に声は直接語りかけてくる。
男なのか女なのか若いのか年老いているのか判別がつかない声だ。
その声がサイヒを招くと発言した瞬間に、サイヒの目の前に大きな白い城門が現れた。
門を守る兵士は居ない。
むしろサイヒを中へ促す様に門はギィ、と重低音の音を上げながら開かれて行く。
「はっ、城迄真っ白か。いい加減に違う色が見たいのだがな」
『神は色を好まない。色を持つ君こそがこの空間で異質なのさ、天界とはそう言うものだろう?』
クスクスと笑い声がサイヒの耳元で聞こえる。
脳に直接語り掛けるのは止める事にしたらしい。
白い王宮をサイヒはただ真っ直ぐに歩いて行く。
それを阻止する者は居ない。
ただただ真っ直ぐと進む。
支配者とは真っ直ぐに、1番奥に座を構えている者だからだ。
王宮の中も白一色でどれだけ歩いたか分からなくなる。
王宮の主の趣向で無限回廊にしている事も想定はしている。
だがサイヒは迷いなくただ前に進む。
力ある物はそんな小細工を使う必要が無いからだ。
王宮の中、最初の城門と同じほどの大きな扉があった。
其処が王宮の主の居場所だ。
昔から決まっている。
支配者とはそう言うものなのだ。
ギィ
扉が開く。
白い絨毯の先に居るのは白い存在。
玉座まで真っ白だ。
白い存在は長い白い髪をしていた。
肌の色も雪のように白い。
白いローブを着込んでいる。
白い睫毛に縁取られた瞳迄限りなく純白に近い純銀だ。
「凄い凄い、見事に白いじゃないか」
サイヒはパチパチと手を叩き白い人物を称賛した。
『その態度、気に入らないね。私を下に見ているつもりなのかな?』
「ソチラこそ、まるで私より自分が格が上だとでも思っているのか?」
ギリィ
白い存在が奥歯を噛み締める。
『全能神である私にふざけた態度を取る。馬鹿なのか、よほど私の足元をすくう自身でもあるのか?』
「全能神?長く生きただけの人間が面白い事を言う」
『ほう、君には私が人間に見えるのかな?』
「いいや、神様に見えているさ。人間が想像する神様像ドンピシャだな」
ピクリ、と自称全能神が眉を顰める。
その仕種は確かに人間らしい。
「長く生きても人間の想像力には限界があるようだな。数億年も生きていてその程度の想像力しか無いのだから、なぁ古代種」
『貴様!何を知っている!!』
「例えば数億年前に神が世界を滅ぼした事。
例えば神の手から逃げ延びた人類が、特殊能力に目覚め新世界の管理者になった事。
例えばその管理者が古代種と呼ばれ新たな世界の神々を管理している事。
例えばその管理者が神による統治に飽きて、自らが神になろうとした事、だとかだな。
あぁこの言い方だとまるでお前が人間で、神に成り代わった幼稚な爺、と言う事になるな」
クツクツとサイヒが笑う。
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しかし【全知全能】と言う能力を持ちながら、考え無しに快楽に走るから足元をすくわれるんだ。
私の中には歴代の”本物の聖女”と”古代種”と”最高峰の魔術を司る魔族”の力と知恵が宿っている。
お前は私に与え過ぎたんだよ」
『古代種?古代種の血が流れているだと!?何処のどいつの血が!!』
「訛りがある性別不詳気味の愉快犯の血だ」
『あの、餓鬼かぁっ!』
「おいおい神様、これぐらいで激高していると神様じゃなくて人間だと皆にバレるぞ?
天界の皆はお前が人間だと知らないんだろう、なぁ神様?」
『ならば…お前を殺すまでだ!お前は私が創った!なら親である私にはお前を消す権利だってある!』
「それ子供虐待する人間の親が言うセリフまんまだな、神様よ。いや、それとももう古代種と呼んでやろうか?人間の方が良いか?それともお父様、か?」
『黙れ――――――――っ!!!!』
自称神の怒号が白い世界を揺らした。
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【皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか?】を読んで頂けると分かります。
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