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【74話】
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「迎えに行く」
朝食が終え、珈琲に口を付けながらルークが言った。
「迎えですか?」
クオンが尋ねる。
まぁ尋ねずとも誰を迎えに行くのかは分かっているのだが。
「戻ってくると書いてあったので待っていたが、あまりにも遅い。サイヒの実力を疑う訳ではないが、何かあったとしか思えない」
確かにサイヒが消えて1ヵ月が経とうとしていた。
ルークはサイヒが神殺しを完遂したことを疑ってはいない。
何故ならサイヒが消えて3日で、神の加護を子宮に宿した大国の聖女たちが加護を失った。
神が屠られた証拠だろう。
なら何故サイヒは帰って来ないのか?
傷を負っているのかもしれない。
道に迷っているのかもしれない。
誰かに引き留められているのかもしれない。
考え出せばキリがない。
だがサイヒが死んだとは思わない。
サイヒはルークの半身だ。
ルークは傍に居なくてもサイヒの存在を体の奥底で感じる事が出来る。
サイヒの存在は消えていない。
今も何処かに居るのだ。
ならば帰れない事情があるのだ。
サイヒがどうしても変える事の出来ない理由。
それが終わるまでにどれくらいの年月がかかるだろうか?
ルークはサイヒと出会ってからこんなにも長い時間離れていたことはない。
サイヒ無しではルークは生きていけない。
もう我慢の限界だったのだ。
早くあの黒髪に触れたい。
青銀の瞳を覗き込みたい。
優しい笑顔を見つめたい。
柔らかな体を抱きしめたい。
「クオン、新たな主人を探せ。いや、兄さんが良いな。私はこの国を捨てるぞ」
「思ったより粘りましたね。俺はこの半分でルーク様は音を上げると思っていましたよ。後、新しい主人を探すつもりはありません。ルーク様について俺も国を捨てましょう。俺は国に仕えているのではなくルーク様に仕えているのですから」
「マロンはどうする!?」
「マロン様は俺について来てくれると言っております。なのでとっとと後宮制度を廃止して下さい。流石に人妻を連れて行くのは不味いでしょう?後宮を廃止して下さればすぐにでもプロポーズしますので。
ルーク様がサイヒと婚姻するより先に俺はマロン様と婚姻させてもらいますよ。
出発はそれからでも遅くは無いでしょう?急ぐなら後片付けをチャッチャとやってしまって下さい」
ルークはぽかん、と口をあけて呆けている。
「何間の抜けた顔してるんですか?」
「まさかお前にそれ程の行動力があったとは思わなかったぞ……」
「サイヒの影響ですかね?昔より自分の欲に素直になりました。何せ俺に初めてできた心友らしいので多少は影響を受けても仕方ないでしょう?あ、嫉妬しないで下さいよ、面倒臭いですから」
「ついて来て、くれるのか?」
「計画性のないルーク様1人で放り出すわけにはいかないでしょう?マロン様の護衛はカー君とモリリンとクロタンが担当するそうなので」
「あいつ等も話が纏まっているのか!?」
「カー君とモリリンはサイヒを崇拝してますからね。早く再会したいみたいですよ?後クロタンはサイヒに変なライバル心を抱いてるみたいです。自分よりルーク様に近しいのが腹に来ているようですね。
それと、ガフティラベル帝国の後継はアンドュアイス様が継いでくれるようですよ。伴侶の目算もたっているようですし。
帝国の後継は気にせず、早く残った仕事を終わらせる事を今は考えて下さい」
「兄さんが……」
「陛下に直談判しに行ったみたいです。ルーク様は婿に行く気なので帝国を注ぐことは出来ないから自分が後継になると。何でも裏技を使って実力至上主義の皇帝陛下を納得させたみたいですよ」
「皆、私の為に動いていてくれたのか…」
「ルーク様の隣にサイヒが居ないのは皆、違和感を感じるんですよ。早く取り戻して下さい」
「あぁ、有難うクオン」
「後で他の方にもお礼を言いに行って下さいよ」
「勿論だ。ではサイヒを迎えに行くため残りの仕事をとっとと片付けるとしよう!」
ルークの表情が柔らかくなる。
そんなルークの表情を見たのは久しぶりだとクオンは思った。
サイヒが隣に居ないルークは冷たさすら感じる雰囲気を醸し出す。
気を許したものにはそれ程でもないが、王宮の使用人などは最近のルークの冷たすぎる雰囲気に王宮の使用人たちは怯えてしまっている。
それほど魔王として覚醒したルークの醸し出す空気は凍てつくように冷たい。
(だがサイヒの名が出るとその空気が温かくなる。サイヒだけがルーク様を暖かな日差しの中へ連れ出してくれる。ルーク様にとって花の名を持つサイヒは、春を呼ぶ女神のなのだろうな……)
3日後、ルークたちはサイヒを探す旅へと出る事となる。
サイヒを迎えに、魔王が天界を目指す。
それを止める者は存在するのかしないのか……。
例え邪魔が入ろうとルークはその歩みを止めないだろうが。
ルークがサイヒと再会するまで、後3カ月………。
朝食が終え、珈琲に口を付けながらルークが言った。
「迎えですか?」
クオンが尋ねる。
まぁ尋ねずとも誰を迎えに行くのかは分かっているのだが。
「戻ってくると書いてあったので待っていたが、あまりにも遅い。サイヒの実力を疑う訳ではないが、何かあったとしか思えない」
確かにサイヒが消えて1ヵ月が経とうとしていた。
ルークはサイヒが神殺しを完遂したことを疑ってはいない。
何故ならサイヒが消えて3日で、神の加護を子宮に宿した大国の聖女たちが加護を失った。
神が屠られた証拠だろう。
なら何故サイヒは帰って来ないのか?
傷を負っているのかもしれない。
道に迷っているのかもしれない。
誰かに引き留められているのかもしれない。
考え出せばキリがない。
だがサイヒが死んだとは思わない。
サイヒはルークの半身だ。
ルークは傍に居なくてもサイヒの存在を体の奥底で感じる事が出来る。
サイヒの存在は消えていない。
今も何処かに居るのだ。
ならば帰れない事情があるのだ。
サイヒがどうしても変える事の出来ない理由。
それが終わるまでにどれくらいの年月がかかるだろうか?
ルークはサイヒと出会ってからこんなにも長い時間離れていたことはない。
サイヒ無しではルークは生きていけない。
もう我慢の限界だったのだ。
早くあの黒髪に触れたい。
青銀の瞳を覗き込みたい。
優しい笑顔を見つめたい。
柔らかな体を抱きしめたい。
「クオン、新たな主人を探せ。いや、兄さんが良いな。私はこの国を捨てるぞ」
「思ったより粘りましたね。俺はこの半分でルーク様は音を上げると思っていましたよ。後、新しい主人を探すつもりはありません。ルーク様について俺も国を捨てましょう。俺は国に仕えているのではなくルーク様に仕えているのですから」
「マロンはどうする!?」
「マロン様は俺について来てくれると言っております。なのでとっとと後宮制度を廃止して下さい。流石に人妻を連れて行くのは不味いでしょう?後宮を廃止して下さればすぐにでもプロポーズしますので。
ルーク様がサイヒと婚姻するより先に俺はマロン様と婚姻させてもらいますよ。
出発はそれからでも遅くは無いでしょう?急ぐなら後片付けをチャッチャとやってしまって下さい」
ルークはぽかん、と口をあけて呆けている。
「何間の抜けた顔してるんですか?」
「まさかお前にそれ程の行動力があったとは思わなかったぞ……」
「サイヒの影響ですかね?昔より自分の欲に素直になりました。何せ俺に初めてできた心友らしいので多少は影響を受けても仕方ないでしょう?あ、嫉妬しないで下さいよ、面倒臭いですから」
「ついて来て、くれるのか?」
「計画性のないルーク様1人で放り出すわけにはいかないでしょう?マロン様の護衛はカー君とモリリンとクロタンが担当するそうなので」
「あいつ等も話が纏まっているのか!?」
「カー君とモリリンはサイヒを崇拝してますからね。早く再会したいみたいですよ?後クロタンはサイヒに変なライバル心を抱いてるみたいです。自分よりルーク様に近しいのが腹に来ているようですね。
それと、ガフティラベル帝国の後継はアンドュアイス様が継いでくれるようですよ。伴侶の目算もたっているようですし。
帝国の後継は気にせず、早く残った仕事を終わらせる事を今は考えて下さい」
「兄さんが……」
「陛下に直談判しに行ったみたいです。ルーク様は婿に行く気なので帝国を注ぐことは出来ないから自分が後継になると。何でも裏技を使って実力至上主義の皇帝陛下を納得させたみたいですよ」
「皆、私の為に動いていてくれたのか…」
「ルーク様の隣にサイヒが居ないのは皆、違和感を感じるんですよ。早く取り戻して下さい」
「あぁ、有難うクオン」
「後で他の方にもお礼を言いに行って下さいよ」
「勿論だ。ではサイヒを迎えに行くため残りの仕事をとっとと片付けるとしよう!」
ルークの表情が柔らかくなる。
そんなルークの表情を見たのは久しぶりだとクオンは思った。
サイヒが隣に居ないルークは冷たさすら感じる雰囲気を醸し出す。
気を許したものにはそれ程でもないが、王宮の使用人などは最近のルークの冷たすぎる雰囲気に王宮の使用人たちは怯えてしまっている。
それほど魔王として覚醒したルークの醸し出す空気は凍てつくように冷たい。
(だがサイヒの名が出るとその空気が温かくなる。サイヒだけがルーク様を暖かな日差しの中へ連れ出してくれる。ルーク様にとって花の名を持つサイヒは、春を呼ぶ女神のなのだろうな……)
3日後、ルークたちはサイヒを探す旅へと出る事となる。
サイヒを迎えに、魔王が天界を目指す。
それを止める者は存在するのかしないのか……。
例え邪魔が入ろうとルークはその歩みを止めないだろうが。
ルークがサイヒと再会するまで、後3カ月………。
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