聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【87話】

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「あ、動いた」

「本当かサイヒ!」

 あんまり目立っていないが多少膨らんだサイヒの腹。
 その腹に手と耳を当てるルーク。
 
 ポコン

「う、ううううう動いたぞ!動いたぞサイヒ!!」

「ふふ、嬉しそうだなルーク。だからと言って目の下にクマを作るのはどうかと思うぞ?」

「だ、だって自分が作ったものを赤ちゃんに身に着けて欲しいじゃないか」

「これはこれは妬けるな。赤ん坊にルークが取られてしましそうだ」

「私がサイヒを蔑ろにする訳ないだろう!サイヒとの子供だから大切なんだ!!」

「ふふ、分かっている。ちょっとした意地悪だルーク。子供の服を作るのも良いが私との時間はあんまり割かないでおくれよ」

「当然だサイヒ、愛してる」

「私も愛しているよルーク」

 自分たちは何を見せつけられているのだろう?
 そう文官たちは思った。
 全能神とその伴侶の魔王がイチャついている。
 しかも魔王は赤ちゃん服を作っているらしい。
 魔王って裁縫できるの?
 皆が訝しんだ。

「ルークの作る服はどうだマロン?」

「ルーク様は飲み込み上手なのです1人で作れるようになりましたわ。今は赤ちゃんのケープを編んでいる所ですの。私は靴下を編ませて貰ってますわ」

「あぁマロンも作ってくれているのか、感謝する」

「お兄様の子供は私にとっては姪か甥ですわ!可愛くて当然です!!」

「ニーナに困ることはなさそうだ」

 ふわり、と花が開く様な笑みをサイヒが見せる。
 其処に居た者全員がその笑みに魅せられる。

「だが2人に残念な知らせだ。作ってくれた服が役に立たないかも知れない」

「なっ、まさかお腹の子供に何かあったのかサイヒ!?」

「お兄様は大丈夫ですの!?」

 ルークとマロンはおろおろとする。
 少し離れたところから自分の仕事を片付けながら、クオンはサイヒに言葉遊びはほどほどにして欲しいと痛む胃の為にティーポーションを口に含んだ。
 うん、今日も美味しい。

「サイヒ、2人、特にマロン様を揶揄うのは止めろ。今回のは趣味が悪いぞ」

「うむ、流石は心友。お見通しか」

「「?」」

 小首を2人してコテリ、と傾げる。
 とても可愛らしい。

「どうやら2人居るみたいなんだ」

「2人、ですか?」

「と、言う事は……」

「「双子!?」」

「だろうな。心音が2つ聞こえる」

「じゃぁサイヒ似の凛々しい男の子が生まれるだろうか?」

「ルーク様に似た女の子も可愛らしいでしょうね」

 ルークとマロンがキャッキャと盛り上がる。
 女子か?
 いや、マロンは女子で合っていた。
 合っていた、がルークは…20歳の男である。
 可愛く見えるのは何が悪いのだろうか?
 見ていて魔王だと言う事を忘れそうになる。

「式迄後2ヵ月だ。そろそろゲストにも案内を出さなければな」

「世界中の聖女が集まるのか?」

「幾ら私でも世界中の聖女と顔見知りな訳ではないぞクオン。フレイムアーチャの聖女とはルーシュの所で匿って貰っていたシスター時代位だ」

「そう言えばあったな、そんな事件が…もうかなり昔のように感じる……」

 クオンはルーシュを思い出した。
 少年じみた長身の少女。
 自分の同種。
 つまりはサイヒに振り回される不憫枠。

「兄様とルーシュは上手くやっているだろうか?」

「コチラの結婚が先になってしまったからな」

「オグリちゃんとルインちゃんは仲良くしてますかね?」

「あそこが1番早くくっ付くと思ったんですけどね。オグリはまだルインに勝てないんでしょうか?」

「ふふ、結婚式が俄然楽しみになって来たな。ドレス姿で度肝を抜いてくれよう」

「サイヒはドレスでなく何時もの男物の正装でも誰より美しいぞ」

 頬をバラ色に染めた恋に溺れた瞳をしたルークがサイヒを見つめる。

「そうだな、私は男物の方が性にあっているのだが今回は仕方あるまい。真面目に女装しよう。ルークのドレス姿も美しいが、ソレは私1人の楽しみとしておこう」

 クスクス笑うサイヒに顔が真っ赤なルーク。
 2人の中の良さを喜ぶように、サイヒの腹を2つの足が内側から蹴飛ばした。
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