聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

文字の大きさ
121 / 297
そして全能神は愉快犯となった

【100話】

しおりを挟む
 カラン

 扉が開くと同時に鐘がなる。
 何故か店の中に居る者は、何かが気になってそちらの方向を向いた。
 虫の知らせと言うヤツだろうか?

((((((((!?))))))))

 そしてその場に居た全員が目を見開き息を飲んだ。

「兄様、今日は何を召し上がるんですか?」

「普段食べないジャンクな物だな」

 黒髪にエメラルドの瞳の少年が、同行者に問うた。
 同行者の銀髪に青銀の少年が答える。
 
 2人は性別を感じさせない中性的な美貌の持ち主だった。
 声も男か女か分からない甘い落ち着いたアルト。
 弟であろう黒髪の少年の方が愛らしい雰囲気を出しているのに対して、兄と呼ばれた銀髪の少年は視線だけで世の女の魂を奪いそうな色香が漂っていた。
 一見性別が分からないが、体のラインがシャープで女性特有の曲線を描いていないので皆男なのだろうと結論付けた。

 年齢は2人共17~8歳ほど。
 年子かもしかしたら双子かもしれない。

 2人は店の奥の目立たないテーブルを選び着席する。

 自分たちが目立つ自覚はあるらしい。
 すでに扉を開いた時点で店中の視線を集めているのだが…。

 男は黒髪の少年の儚さのある美貌に視線を奪われる。
 女は銀髪の少年の艶っぽい男の色気に視線を奪われる。
 流し目の一つでもしたら腰が砕ける事だろう。
 だが2人は他人の視線を気にして無い様だ。
 やたら距離感覚が近い2人は楽しそうにメニュー表を見ている。

「兄様、ボクは”ポテトチップス”と言うモノを食べて見たいです」

「確かにマロンさんは作ってくれないからな。なら私はこの”ねるね〇ねる〇”と言うものを食べてみよう」

 よく分からないラインナップのメニューを置いている店である…。
 だが2人の美少年は興味をそそられたらしい。
 銀髪の兄の方が手を上げウェイトレスを呼ぶ。
 ちなみにメニュー表に夢中だった2人は、ウェイトレスたちが見えない所で誰が2人のテーブルに行くかキャットファイトをしていた事に気付いていない。
 他の客は引いていたが気持ちは分かってしまうようだ。

 そして見事勝利を得た覇者が2人の注文を取りに来た。

「私にはコレを。弟にはコレを頼む。飲み物はコー〇を2つ」

「はい、承りました!お2人はお店初めてですよね?御名前は何と言われるのでしょうか!?」

 これは誰もが聞きたかったことなのだろう。
 店に居るものが耳をダンボにして聞き耳を立てている。

「私は”レン”、弟は”コウジュ”だ。以後お見知りおきを」

 ふっ、と微かに銀髪の少年ーレンが薄い微笑を浮かべた。
 ウェイトレスは膝から崩れ落ちそうになるのを必死で堪えた。
 ここで崩れれば取れる情報が取れなくなってしまう。

 バンッ!
 カランッ!!

 大きな音を立てて扉が開いた。

「見つけましたよお二方」

 地を這うような低い声が乱入者から発せられた。
 オレンジ色の髪に青緑の瞳の美丈夫だ。
 2人の少年には敵わないが美形。
 何より大人の男にしかない頼もしさが感じられる。
 店の女性がキャッキャッと嬉しそうに声をあげる。

「あっ、クオンさん」

「うむ、思ったより早く見つかったな。母上に【探知】をされたのだろうな」

 焦った様子のコウジュと何やら楽しそうなレン。

「帰りますよ」

「注文をしてしまった」

「オーダーは取り消せますか?」

「は、はいぃぃ」

 3人の美形に挟まれてウェイトレスは真っ赤な顔で首を縦にコクコク振った。

 そして嵐の様な存在感の2人の兄弟はクオンと呼ばれる美丈夫に首根っこを引っ掴まれて連れて行かれた。

((((((((嵐の様だった………)))))))))

 皆が暫く3人の去った扉を凝視して固まっていた。

 :::


「カマラ様、ドラジュ様!王宮から逃げ出したあげくあんなジャンクな物を食べようとするとは何事ですか!?」

「市民が食べている者を食べて見たかった」

「……ポテトチップス………」

 ケロッとしているカマラとシュンとしているドラジュ。
 双子でも大分性格が違うらしい。
 簡単に言うとカマラがサイヒ似でドラジュがルーク似である。

「市民の生活に興味を持たれるのは結構な事です。で・す・が!お2人は何歳ですか!?」

「生後3ヵ月だが何か?」

「何か?じゃないでしょう!まだ離乳食を食べる年です!添加物にまみれたモノは成長に良くありません!!しかも外見年齢を成人近くまで変えてする事ですか!?」

「生後3ヵ月では外を出歩けないからな」

「出歩けないからな、じゃありません!あまりサイヒを見習わないで下さい!!」

「我が母親ながら随分な言われようだ」

「クオンさんはお母さまがお嫌い?」

「嫌いなわけでは無いですが、言動に問題が多い注意人物だとは思っています。ルーク様はその点サイヒに関わらなければ良い上司なのですが…ドラジュ様はルーク様似なので大人しくて助かりますが。カマラ様の誘惑に負けて何処へでも付いて行くのはお停めください!!」

「誑かした覚えはないぞ?」

「覚えが無いから質が悪いんですカマラ様とサイヒは!」

「お兄様はお母様と似て格好良いです!!」

 頬をバラ色に染めてドラジュがカマラを見る。
 その視線にカマラは笑みを返す。
 ドラジュは耳まで真っ赤に染めた。

(駄目だ、この兄弟…ルーク様とサイヒのミニチュア版だ………)

「マロンが作る料理では物足りないのですか?」

「いや、マロンさんの作る料理は最高だ。ただジャンク、と言うモノに興味があっただけだ」

「せめて、外見年齢と実年齢が見合うようになってから外の店に行って下さい……」

 あまりにもサイヒに似たカマラにクオンは胃が痛くなった。
 ドラジュは本当に育てやすいのだが……。

「それでは姿を戻して下さい。マロンがお昼のお茶の準備をしていますから」

「今日のメニューはなんでしょうね、兄様?」

「マロンさんが作るなら何でも美味しいさ。楽しみだ。さて術を解くか」

 ボフンッ!

 2人の姿を隠す様に煙が上がった。
 腫れた煙の中から出て来たのは、それはそれは愛らしい生後3か月の赤子の姿だ。
 ちなみに着ているものも幼児の衣類に変わっている。

「手をきちんと洗って下さいよ」

「「はぁ~い」」

 這い這い期が既に終わっている赤子2人はトテトテと王家用の食堂に向かった。

「サイヒが2人になったみたいだ……」

 クオンはカマラの行動に振り回されながら、胃をさすりながら2人が向かった食堂へと向かうのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 サイヒ似の兄(仮)カマラとルーク似の弟(仮)のドラジュです。
 カマラのお陰でクオンの胃痛が倍返しです。
 まだ恋愛する年齢でも無いので、子供たちの性別は無性のままです(*´▽`*)
しおりを挟む
感想 1,137

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

処理中です...