聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【103話】

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「マジでチビ達が相手なんの?」

「カマラでもドラジュでも好きな方を選ぶと良いぞ?」

 王宮には広場がある。
 主に騎士たちの訓練場として使われる。
 其処にお茶タイムが終わった全能神と愉快な仲間たちが現れた訳だ。
 兵士たちは一瞬で広場を明け渡した。
 移動に淀みがない。
 相当慣れているのだろう。
 全能神、普段からいったい何をしているのだ…。

 さて今回広場に来たのはルーシュへのサービスである。
 バトルジャンキーのルーシュがサイヒに手合わせを挑んだからだ。
 
 人間時代でさえデコピン1発で沈められたのに、よりによって神の資格を得たサイヒと手合わせしたいとは無謀にもほどがある。
 だがルーシュの珍しい我儘を聞いてやりたいと思ったサイヒは条件を出した。

 カマラ及びドラジュに勝てたら手合わせしてやる、と。

 そして冒頭に戻る。

 チビを倒さないとサイヒと戦えない。
 だが相手は生後3ヶ月の幼児である。
 普通の子供とは違うのは分かるが流石に気が引ける。

「ルーシュ様、ドラジュと手合わせする?」

 コテリ、とドラジュが小首を傾げる。
 途轍もなく可愛い。
 着ているのが寅さん着ぐるみなので可愛さ倍増だ。
 エメラルドの零れ落ちそうな程の大きな目がキラキラとルーシュを見ていた。

 騎士たちも身悶えている。

 余りにも可愛い。
 双子が生まれてからその可愛さに、王宮中の者が何時も何処かで誰かが身悶えている。
 特にドラジュは子供特有の可愛さを発揮しているので皆大変である。

 しかしカマラも侮れない。

 生後3ヶ月で既に王宮のメイドを誑し込んでいる。
 サイヒに似すぎていて本当に怖い。
 こっそり王宮から抜け出して、肉体年齢を変えて国民の少女のハートも奪っている。
 ついたあだ名が「初恋泥棒」。
 王宮で働いている使用人たちは、ドラジュには絶対自分の子供を合わせないと決めている。
 敵わぬ恋はするものでは無い。

「じゃぁ、カマラちゃんで」

 流石にドラジュに手を出せない。
 闘気を向けるのも躊躇う愛らしさ。
 その点カマラはサイヒのミニチュア版なので手合わせくらいは何とかなるかも、とルーシュは考えた。

「ご指名有難う御座いますルーシュ殿。では」

 【肉体成長】

 カマラの術が発動する。
 銀色の光に包まれてカマラの姿が見えなくなる。
 そうして光が消えるとソコには色違いのサイヒが居た。

「マジでサイヒに似すぎだわカマラちゃん……」

 サイヒとの違いは色と胸と身長くらいだろう。
 カマラは中性体なので胸は無い。
 身長はサイヒより男性よりの性質があるからか5cm前後高い。
 ルーシュと同じほどの体系だ。

「サイヒの色違いと思えば戦えちゃうね!」

「あまり舐めないで下さいよルーシュ殿」

 クッ、とカマラ唇が弧を描く。
 本当にサイヒによく似ている。
 色気が無いのは年季の差か性質の差か?

 そして戦いの火ぶたは切って落とされた。

 その5分後、額から煙を出しての去れているルーシュの姿があった。

「だから油断するなと言ったろうに」

「カマラはドラジュに比べて戦闘に能力が向いているからな。ルーシュが負けるのも仕方がない」

「ルーシュ大丈夫?おでこに【治癒】の法術かけるね?」

「あざーす、アンドュアイス様……うぅ幼児に負けた………」

 相当悔しかった様子である。

「仕方ないよルーシュ、だってカマラはルークよりも強いでしょ?」

「えっ!?」

「おぉ、さすがはアンドュ。カマラの戦闘力を見抜いたか」

「だってカマラは魔力でも法力でもない力感じるから。神力だよね?多分僕も勝てないや。オグリと【融合】したら何とかなるかなぁ……」

 流石の慧眼だ。
 大帝国の皇帝になる男はそこいらの物とは格が違う。
 アンドュアイスの場合ソコに本能も加わっているが。

「今度はルインが帰って来てから【融合】使ってもうワンチャン!」

「と言っているが構わないかカマラ?」

「私は良いですよ母様」

「だ、そうだ。ルインがデートから戻って来たら2回戦を始めると良い。それと夕食までまだ時間もあるし、騎士たちの訓練に加わっても良いぞ」

「マジ!?やった、天界の騎士と合同訓練!!」

「じゃぁ僕も加わるね」

「ルーク様とお話しなくて良いんですか?」

「うん、僕も興味があるからルーシュと一緒に訓練に加わるね」

 ニッコニコと笑っている様だが、目が笑っていない。
 剣呑な光を内に宿して天界の騎士たちを見ている。
 アンドュアイスの迫力に天界の騎士は及び腰である。

「折角だから私たちも見学をしようかルーク?」

「兄様の雄姿も見たいし見学をしよう」

「僕も見学する」

「じゃぁ私も見学しよう」

「冷たい飲み物持ってきますね。クオン様、日差しを遮るものを」

「パラソルでも持ってきます」

 こうしてルーシュのバトルジャンキーのせいで、天界の騎士たちは全能神一家に見学されながら訓練を行う事になった。
 全く持って周りを巻き込んで人に迷惑をかける辺り、ルーシュもサイヒと同族だ。
 悪気が無いから余計に質が悪い。
 そんな心友とぺっt…義兄の楽しそうな姿を見ながらサイヒは茶を嗜むのだった。
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