聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

文字の大きさ
142 / 297
そして全能神は愉快犯となった

【120話】

しおりを挟む
「あ、あれカマラ君?」

「えぇ、兄さんですね」

 カフェの窓から外をのぞくと黒髪黒目に姿を変えたカマラが、庇護欲をそそる可憐な少女と2人で歩いていた。
 少女を見るカマラの目は、とんでもなく優しい。
 天界に居る時には見られなかった目だ。
 表情も柔らかい。

「あの子がカマラ君の好きな子かぁ…サイヒちゃんと似た顔でああも相好を崩されると複雑な気分になるわ」

「ユラさんは母様と兄さんの顔の方が僕の顔より好きなのですか?」

「へぁっ?」

 思わず間抜けな声がユラの口から出る。
 想像もしなかった言葉をかけられたからだ。

「そ、そう言う事じゃなくて!サイヒちゃんとカマラ君は私の親友だった子に似ているから、その似た顔であんな表情されると何と言うか、親友が知らない女の子にデレデレしてるみたいで、複雑?みたいな…」

「そのご親友さんが好きだったのですか?僕の先祖に当たる方ですよね?」

「そりゃ数億年も付き合いがあったんだもの。好きに決まっているじゃない」

「ユラさんはご先祖様と恋愛関係にあったのですか?」

「そんなのある訳無いじゃない!相手は女の子よ!」

「女性同士での恋愛もあるでしょう?」

「ナイナイ!あったら今頃貴方たちが生まれてないわよ」

「つまりユラさんの片思いだった、と?」

「私とあの子との間にそういうのは一切ないの!」

「でもユラさん、お母様と兄さんの顔好きですよね?」

「それは…好き、だけど………」

 はっきり言ってサイヒやカマラの顔はユラの好みドストライクだ。
 ストレートど真ん中剛速球と言ったくらい好みだ。
 男にも女にも見える特上の美貌。
 こんな美しい存在は唯一無二であろう思わせる完璧を越えた奇跡の美しさ。
 そんなにも綺麗な顔が好みで無いと言う人物があったら是非会ってみたい。
 それくらいにサイヒとカマラの美貌は凄まじい。

 だがドラジュだってタイプは違うが奇跡的な美しさと言った点では同様なのだ。
 ルークとサイヒの良い所を取って来た、と言える顔だ。
 2人のどちらにも似ているようでどちらにも似ていない。
 唯一無二と言うならドラジュの方が当て嵌まる。

 サイヒとカマラはそっくりだし、その先祖も生き写しのような美貌なのだから。

 ドラジュの顔の方がユラにとっては緊張する美貌なのだ。
 何せ親友と似ていないのに、それと同様クラスの美貌の持ち主。
 出会ったことのないタイプの美貌。

 サイヒとカマラがストレートのドストライクと言うなら、ドラジュだって魔球クラスの変化球で好みドストライクである。

「じゃぁ僕の顔は好きですか?」

 ニコニコと微笑まれながらドラジュに尋ねられる。

「うっ…」

「好き?嫌い?」

 子供に問いかける様な優しい声と表情でドラジュが問いかける。
 その笑みは優しいはずなのに、圧が凄い。
 物凄い圧がドラジュから発せられていた。

 美形の笑顔…迫力半端ない。

 周囲の女性はもうドラジュを見て、倒れそうなくらい頬を真っ赤に染めている。
 ギャラリーが羨ましいとユラは思った。
 この質問をこのプレッシャーの中で答えなくとも良いのだから。
 見ている分には眼福この上ないだろう。
 モブAになりたい。
 今のユラの心情だった。

「ねぇユラさん、僕の顔は好き?嫌い?」

 甘いテノールが鼓膜を擽る。
 耳が孕みそうだ。
 ギャラリーの女性の何人かは既に腰を砕けさせ、テーブルと仲良くなっている。
 変わってくれ!
 ユラは背中に冷や汗が流れるのを感じた。
 
 なのに顔には熱が集まる。

 赤くなったり青くなったりとユラの顔面は忙しい。

 キュ、とドラジュはユラの指先を握った。

「答えるまで、離さないですよ?」

 チュッ

 ユラの中指にドラジュの唇がリップ音を立てて触れる。

 グラリ
 ゴン!

「ゆ、ユラさん!大丈夫ですか!?」

 ユラは全身を真っ赤にしてテーブルに突っ伏した。
 眼が回ってしまって瞳が虚ろである。
 クタリとその全身に力が完全に入っていない脱力状態だ。

「焦りすぎたかな…?」

 ついカマラに心があるんじゃないかと言う発言を聞いて、ドラジュも嫉妬してしまったのだ。
 だがこのユラの反応。
 男慣れしていないのが丸わかりだ。

 クスリ、とドラジュは妖艶な笑みを浮かべた。

「これ位で気をやるなんて、本当に可愛い。まだ誰も手付かずなその全て、僕色に染めたいね、早く」

 クスクス笑うドラジュの垂れ流される色気に、カフェにいる女性たちは腰を砕けさせテーブルや床とお友達になるのであった。

 ドラジュ、ユラを口説くのに夢中過ぎてすっかり本来の目的を忘れている。

 カマラが少女とカフェに入って来て初めてドラジュは本来の目的を思い出すのであった。
しおりを挟む
感想 1,137

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

処理中です...