聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

文字の大きさ
241 / 297
2章

【213話】

しおりを挟む
「皇帝陛下!カカンでの結界の試作が成功しそうです!!」

 玉座の間に飛び込んできたのは神殿の使いだ。
 今回の《聖破邪大結界》は国のトップの者と神殿の神官たちが中心になって行っている。
 何せ天界式の結界だ。
 並の術師では意味の理解すら出来ないだろう。 
 それ程の複雑な結界なのである。
 よくぞカカン1000年前の大聖女は純粋な人間でありながらこんな結界を作り上げたものである。

「そうか、では我が国もカカンの試作結界のレシピを受け取り本格的に《聖破邪大結界》の制作に取り掛かる!」

「御意!」

 神官は頭を垂れて神殿へと帰還していった。
 皇帝アンドュアイスの言葉を司教に伝えるのだろう。

 それにしても遂に結界の制作が動き始めた。
 国全体を覆うものを作ろうと思えば数カ月はかかるだろう。
 同盟を組んでいる大国の中でも、大陸の中心に位置し、同盟国の要であるガフティラベル帝国は他の国の数倍の大きさがある。
 他の国の倍以上の時間をかけなければ結界は完成しないだろう。
 だからこそリリィ・オブ・ザ・ヴァリーはガフティラベルに身を置いている。
 結界の制作にどれ程の時間がかかるか想像できるからだ。
 
 だがリリィ・オブ・ザ・ヴァリーはあくまで手伝いである。
 天界の御使いが地上の人間に手を貸し過ぎるのは天命にはんするのだ。
 そうで無ければすべての国にリリィ・オブ・ザ・ヴァリーが結界を張ってしまえば済む話だった。
 それなら数日で全ての国に《聖破邪大結界》が張られていたことだろう。

「今回の結界の制作、魔術しか使えない私は手伝えなくて申し訳ないです………」

 王配のルーシュが暗い顔をしていた。
 大切な人が困っているのに手助けが出来ない。
 大事な伴侶が大陸の運命をかけて戦うだろうに、自分は力になれない悔しさ。

「皇后には暴走した魔物の相手をして貰おうと考えている。戦う事は得意だろう?」

 何時までも聞いていたいような甘美なアルトの声がルーシュにかけられる。

「サイ…御使い様」

「お前にまでそう呼ばれるのは寂しいが、今は仕方がないな」

「そうですね、私もしっくりこないです」

「仕事が終わったらヤケ酒にでも付き合って貰おうか?」

「全てが終わって平和になったら全能神様の伴侶様とのいちゃつきも突っ込まないで見て差し上げますよ」

「では全能神様の愛犬とその伴侶のいちゃつきを突っ込まずに見てくれるよう全能神様に伝えておこう」

「よろしくお願いしたします御使い様」

 2人、視線を渡して微かに微笑む。
 普段は本来口が悪いやり取りをする2人だが、お互いが大切な心友なのだ。
 全てが終わったらストレス解消は伴侶でない、同性の心友としたいと思っても問題ないだろう。
 そして伴侶の愚痴…はないので惚気を放しながら酒を酌み交わすのだ。
 その日が早く来ることを、ルーシュとリリィ・オブ・ザ・ヴァリーは互いに願うのであった。

 リリィ・オブ・ザ・ヴァリーが魔界に渡る、数か月前の話であった。
しおりを挟む
感想 1,137

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

処理中です...