聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

文字の大きさ
254 / 297
2章

【226話】

しおりを挟む
「鈴蘭さん、ウチの子の様子がおかしいんです!」

 ミヤハルに稽古をつけていた鈴蘭を呼びに来たのは、5歳の子供を連れた母親であった。
 先日保護した2人だ。
 適当に安全な場所が見つからないので現在『神狩り』が保護をしているのだ。

「どれ、ふむ、熱があるな。それに汗も酷い。少し失礼するぞ」

 鈴蘭が子供の額に人差し指と中指を翳す。

「ふむ、インフルエンザだな」

「インフルエンザ!?」

「民間療法で十分だろうが、それでは母君は納得できまい?病院辺りにもテリトリーを広げるか」

「おん、インフルエンザやったら流行するやろから病院が使えるのはええと思うわ」

「では何処の病院にするか調べるか。この辺りに詳しい者と医療に詳しい者を集めるか。ユラさん、頼んで良いか?貴方は人の警戒心を抱かせない稀有な存在だ。人員の募集を頼む」

「は、はい!」

 ユラがフリースペースの方へ走っていく。
 自分は何の役にも立たないと落ち込んでいたユラだ。
 鈴蘭に頼みごとをされて、自分にも役割がある事で沈んでいた気分が浮上したらしい。

「鈴蘭さんは誑しやなぁ」

「お見通しか。ミヤハルが11歳だと言う事が信じられんな」

「鈴蘭さんも見かけと本年齢があってるようには見えへんわ。外見年齢の倍は生きてそうな貫禄あるで?それにしてもユラ姉ちゃんに気ぃつかってくれて有難う。ユラ姉ちゃんこのところ落ち込んどったから」

「ミヤハルがどんどん力を付けるからな。置いて行かれる気分がするのだろう。食事も作れんしな」

「食事は、なぁ、うん。存在そのものが皆のストレス緩和剤にはなっとると思うんやけど、本人はそんな事気付いても無いんよなぁ。鈍いからなぁユラ姉ちゃん」

「あの人当たりの良さとお人好しな所は皆に好まれている。居るだけで心が安らぐ者も居るだろう。存在価値があるのだと認識して貰いたいものだがな」

「うーんユラ姉ちゃん鈍いから多分言っても本気と思って貰われへんわ。気ぃ使って貰っておると思われるんが落ちなんよなぁ」

「ふふ、ミヤハルはユラさんが好きなのだな」

「当然!大切な姉ちゃんやで!関係性は姪叔母やけど」

「大丈夫だ、彼女にも自分の力が役に立つと自信を持てる日が来る。その日までミヤハルが傍で支えてやれば良い」

「おん、任せててんか!」

「では我々も下に降りようか。結界は張ってあるが雨の下に居るのは気が滅入る」

 そう言って鈴蘭は屋上から一気に地上に飛び降りた。
 ミヤハルも闘気を纏い、【身体強化】を使い地上に着地する。

(流石に【強化】の能力を手に入れるだけあって闘気の使い方が神がかっているなご先祖様は)

 鈴蘭やマオには勝てないが、既にミヤハルは下級神くらいなら戦略さえ間違わなければ負けはしないだろう。
 自分の上に鈴蘭とマオと言う能力がケタ違いに強い存在が居るせいで、己の力量に今のミヤハルは気付いていないが。

(ご先祖様が古代種に進化するのもそろそろかも知れないな)

 後ろをついてくるミヤハルは年相応の子供だ。
 その小さな背中に世界を背負わせるのは哀れにも思う。
 だがこれだけが神のゲーム盤をひっくり返す方法なのだ。
 その為にも鈴蘭は先祖であるミヤハルを鍛える。
 心の中で詫びながら。
 ミヤハルに数億年後の平穏を、番と出会える日が早く来るように祈りながら。
しおりを挟む
感想 1,137

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

処理中です...