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月の箱庭
13 要の石
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人々は息を潜め家に閉じこもっていた。少しずつ狂い始めている現実を実感し始めていた。
森の動物達の凶暴化。次いで、人間達にも確実に狂気が広がっていく。空気の中に感じる違和感に体調を崩す者も出ていた。
国は異常な静けさの中にあった。
グウェンティアがまともに動けるようになったのはあの日から三日後の事だった。
ただでさえ体力の限界だったのだ。それに加え、魔術を使ったことが仇になった。普通であればたいした事ではない。普通でなかったからこそ、回復が遅れたのだ。外へ出て、初めてこの村を見渡した。
それ程、大きくはない。少数の人間が生活できるだけの空間が確保されている。緑が多く、適度な湿度を保っていた。上空を見上げれば、薄い膜があることが判った。
少し大きめの結界陣だ。
だが、この規模だと要になる物が必要だ。村の中央に足を運び、目に入った物を確認した。少し大きめの貴石には絶えず文字が踊っている。
「要の石ね。かなり古いけど、機能しているわ」
グウェンティアは足下にいるグロウに呟いた。グロウは目を細める。
「この結界石を創ったのは漆黒だな」
グロウは当たり前のように答えた。
「つまり、結界に関わるもの、遺跡関係の物は漆黒が創ったわけね」
グウェンティアは爪を噛む。漆黒は紅の予言と紫の命令で次々に必要な物を創造した。未来に何が起こるのか判っていたからこその行動だ。勿論、紅の予言を信じて疑っていないからこそだ。
「これはまともな魔術ね。石碑のような危険な魔術の気配がないわ」
グウェンティアはあの時の事を思い出し、身震いをした。一つ間違えれば確実に死んでいただろう。それ程に強い魔術だった。他の遺跡にも施されていない事を祈るしかなかった。
グウェンティアは貴石を見詰め続けているうちにある事に気付いた。踊っている魔術文字が乱れる時がある。それは一瞬で注意をしなければ判らない程度のものだ。しかし、ここは箱庭の外の世界だ。少しのことで命取りになる。
「グロウ、魔術文字が乱れるのは大変な事よね」
グウェンティアは爪を噛みながら問い掛けた。グロウは彼女に視線を向けた。
「当たり前だろう。乱れれば結界の存在そのものが崩壊する」
グロウの言葉にグウェンティアは溜息を吐いた。
「どうかしたのか」
グロウは問い掛ける。グウェンティアの様子がおかしかったからだ。
「この要の石、崩壊しそうだわ。文字が乱れる時がある」
「何時もの事だ」
いきなり後ろからかけられた声に、グウェンティアは慌てて振り返った。何時もならすぐに気付く筈だ。だが、最近、感覚が鈍くなっているような気がしていた。
「いつもの事って。何故、そんなに冷静なの」
グウェンティアは驚きを隠せなかった。背後にいたのはゼディスで、何事もなかったような表情をしている。
「原因が判ってるんだ。慌てる必要などないだろう」
ゼディスは肩を竦めた。その言葉に、グウェンティアは眉を顰めた。原因を知っていて放置している。つまりは、放置せざるえないのか。
「納得できない顔をしているな。まあ、無理もない」
ゼディスは声を押し殺すように笑う。
「貴方達では無理って事かしら。それとも、根本的に手が打てないのかしら」
「後者だな。手の打ちようがない」
ゼディスは少しだが、憂いを帯びた表情になる。
「根本的な事だ。箱庭がおかしくなれば、こっちも同じだ。基本的に連動しているからな」
ゼディスの言葉は重い意味を持っているようだった。
「つまり、私達が遅かれ早かれ来ることが判っていたって事かしら」
グウェンティアは軽い調子で問い掛けた。深刻に考えたところで、何かが変わるわけではない。
「まあ、予言は絶対外れないからな。考えものだと思うが」
ゼディスは長い髪を鬱陶し気に後ろへ流した。風が要の石を取り巻いているせいだ。
「要の石は箱庭がおかしくならない限り、不安定ではあっても大丈夫なのね」
「お前の言葉とは思えないな」
グウェンティアはゼディスを鋭く睨みつけた。紅は全てを知っている。良くも悪くもだ。彼女が何を生業にしているのか、知っているのだ。
「私も人よ。好きであの仕事をしていたわけではないわ」
グウェンティアは視線を要の石に戻し、小声で呟く。ゼディスは驚きもせず、言葉を受け止めた。
「まあ、今この場にいられるのもその技術のおかげだな」
「そうよ。文句ある」
小声ではあったが棘のある口調にゼディスは苦笑する。何も咎めているわけではない。事実をありのまま言っているに過ぎない。
「お前の両親には感服する。普通なら決して教えたりはしないだろうからな。仮にも令嬢だ」
グウェンティアは要の石を凝視しながら、昔を思い出していた。
「過去は過去よ。今更どうすることもできないわ」
「確かにそうだ」
ゼディスは頷く。過去を振り返る余裕など今はないのだ。本当なら、出発し少しでも早く解決しなくてはいけないのだ。
「早く帰らないと、大変なことになるわ」
グウェンティアの呟きに、ゼディスは目を細めた。告げなくてはいけない事柄があったからだ。
グロウは目ざとくゼディスに視線を向けた。一つの不安は多くの不安に繋がる。
「もったいぶらずにさっさと言ったらどうだ」
グロウは低く唸るように言った。ゼディスは声の主に視線を向ける。黒の獣は金の瞳でゼディスをただ、見ていた。そこに、感情は感じられない。
「箱庭は大変なことになってる」
ゼディスは感情のこもらない声音で真実を告げた。紅がもたらした予言と自身が持つ力ではっきりと言い切ることが出来る内容だった。
箱庭は封印と結界の均衡が崩れ始めている。城の地下深くに封印された力が放出され始め、止めるための要を失っている。何時かは起こりうる現実がはっきりとしただけの事だ。
「つまり、時間は残りわずかだって事ね」
グウェンティアも淡々と言った。箱庭を離れる時に予測していたことだ。何時までも、現状を維持し続けるのは無理だ。
「どれくらい、保つかしら」
「そこまでは紅と言えど断言できないな」
ゼディスは肩を竦める。予言は予測にすぎない。目安にはなるが絶対の時間までを予測するのは不可能だ。
「ただ言えるのは、時間は残り僅かだと言うことだ」
ゼディスは視線をグウェンティアに戻した。グウェンティアは表情一つ変えてはいない。
無表情のまま、前方を見詰めている。眼前にある要の石は相変わらず文字が踊り、時々不安定になりながらもそこに存在している。
「明日、出発したいわ。なるべく早く目的を達するために」
グウェンティアはただ、事実を口に乗せる。必ず見せ付けられる現実を受け入れる準備をしている余裕はない。できるだけ早く、迅速に行動に移さなくてはならない。
「かまわないが、平気か。甘く見ていると、倒れるぞ」
「覚悟のうえよ。多少の無理ぐらいしなきゃ、元の場所に戻るのに大変な時間を要するわ」
彼女には自覚があった。
多大に消費された体力と魔力は簡単に回復するものではない。だからと言って、手をこまねいているつもりはない。元々、魔術は使わないのだ。不利になる材料にはなりえない。
二人は後ろを振り返った。遥か後方に二つの影がある。徐々に此方に向かっていることは判っていた。彼等にも現実を受け止める準備をしてもらわなくてはならない。
「真実は告げないのか」
ゼディスの問いにグウェンティアは頷いた。今ある現実のみでいい。
「目の前の現実だけで精一杯の筈よ。真実は重すぎるわ」
沈んだ声が、全てを語っていた。話したくとも、無理である現実。
それは、苦痛を伴う秘密だ。話してしまえば楽になる。だが、精神が神経が崩壊しかねない。それ程、強烈な事実なのだ。
「世界の崩壊、普通の人では受け入れる事は出来ないわ」
「お前は」
ゼディスの問いにグウェンティアは少し眉を上げただけだった。
「私は既に地獄を見てるし、経験もしたわ。今更、世界がどうのと言われても、何一つ感じない」
グウェンティアの心は幼い時に受けた仕打ちで麻痺している。かなり強烈な事がない限り動揺はしないだろう。
世界の崩壊すら、彼女にとっては他人ごとだ。依頼がなければ、動くことすらなかった筈なのだから。
「私の中で世界は終わっているも同然。ただ、必要だから動いているだけ」
近付いて来る影を見詰め、小声で言った。ゼディスは小さな溜息を吐く。
紫の三日月は病んでいる。そのことは千年前の紅によって予言されていた。病んでいるからこそ、対処ができる。皮肉な結果だ。
「今更だが、自分を大切にするんだな。知らずに壊れる前に」
ゼディスの言葉はグウェンティアにとって何一つ意味はなかった。一瞬、ゼディスに視線を向け、直ぐ、前方に戻す。
「始まりは終わり。終わりは始まり」
グウェンティアは呟いた。
ゼディスは怪訝な表情をする。
「終わりが始まる時、全てが終わり全てが始まる」
更に、念を押すように呟いた。紅すらも読み取れない、何かが紫にはある。知ることが出きるのは紫のみだ。
「何時か判るのか」
「全てが解決した時に」
グウェンティアは無表情なまま、答える。
世界の崩壊が始まろうとしていた。
森の動物達の凶暴化。次いで、人間達にも確実に狂気が広がっていく。空気の中に感じる違和感に体調を崩す者も出ていた。
国は異常な静けさの中にあった。
グウェンティアがまともに動けるようになったのはあの日から三日後の事だった。
ただでさえ体力の限界だったのだ。それに加え、魔術を使ったことが仇になった。普通であればたいした事ではない。普通でなかったからこそ、回復が遅れたのだ。外へ出て、初めてこの村を見渡した。
それ程、大きくはない。少数の人間が生活できるだけの空間が確保されている。緑が多く、適度な湿度を保っていた。上空を見上げれば、薄い膜があることが判った。
少し大きめの結界陣だ。
だが、この規模だと要になる物が必要だ。村の中央に足を運び、目に入った物を確認した。少し大きめの貴石には絶えず文字が踊っている。
「要の石ね。かなり古いけど、機能しているわ」
グウェンティアは足下にいるグロウに呟いた。グロウは目を細める。
「この結界石を創ったのは漆黒だな」
グロウは当たり前のように答えた。
「つまり、結界に関わるもの、遺跡関係の物は漆黒が創ったわけね」
グウェンティアは爪を噛む。漆黒は紅の予言と紫の命令で次々に必要な物を創造した。未来に何が起こるのか判っていたからこその行動だ。勿論、紅の予言を信じて疑っていないからこそだ。
「これはまともな魔術ね。石碑のような危険な魔術の気配がないわ」
グウェンティアはあの時の事を思い出し、身震いをした。一つ間違えれば確実に死んでいただろう。それ程に強い魔術だった。他の遺跡にも施されていない事を祈るしかなかった。
グウェンティアは貴石を見詰め続けているうちにある事に気付いた。踊っている魔術文字が乱れる時がある。それは一瞬で注意をしなければ判らない程度のものだ。しかし、ここは箱庭の外の世界だ。少しのことで命取りになる。
「グロウ、魔術文字が乱れるのは大変な事よね」
グウェンティアは爪を噛みながら問い掛けた。グロウは彼女に視線を向けた。
「当たり前だろう。乱れれば結界の存在そのものが崩壊する」
グロウの言葉にグウェンティアは溜息を吐いた。
「どうかしたのか」
グロウは問い掛ける。グウェンティアの様子がおかしかったからだ。
「この要の石、崩壊しそうだわ。文字が乱れる時がある」
「何時もの事だ」
いきなり後ろからかけられた声に、グウェンティアは慌てて振り返った。何時もならすぐに気付く筈だ。だが、最近、感覚が鈍くなっているような気がしていた。
「いつもの事って。何故、そんなに冷静なの」
グウェンティアは驚きを隠せなかった。背後にいたのはゼディスで、何事もなかったような表情をしている。
「原因が判ってるんだ。慌てる必要などないだろう」
ゼディスは肩を竦めた。その言葉に、グウェンティアは眉を顰めた。原因を知っていて放置している。つまりは、放置せざるえないのか。
「納得できない顔をしているな。まあ、無理もない」
ゼディスは声を押し殺すように笑う。
「貴方達では無理って事かしら。それとも、根本的に手が打てないのかしら」
「後者だな。手の打ちようがない」
ゼディスは少しだが、憂いを帯びた表情になる。
「根本的な事だ。箱庭がおかしくなれば、こっちも同じだ。基本的に連動しているからな」
ゼディスの言葉は重い意味を持っているようだった。
「つまり、私達が遅かれ早かれ来ることが判っていたって事かしら」
グウェンティアは軽い調子で問い掛けた。深刻に考えたところで、何かが変わるわけではない。
「まあ、予言は絶対外れないからな。考えものだと思うが」
ゼディスは長い髪を鬱陶し気に後ろへ流した。風が要の石を取り巻いているせいだ。
「要の石は箱庭がおかしくならない限り、不安定ではあっても大丈夫なのね」
「お前の言葉とは思えないな」
グウェンティアはゼディスを鋭く睨みつけた。紅は全てを知っている。良くも悪くもだ。彼女が何を生業にしているのか、知っているのだ。
「私も人よ。好きであの仕事をしていたわけではないわ」
グウェンティアは視線を要の石に戻し、小声で呟く。ゼディスは驚きもせず、言葉を受け止めた。
「まあ、今この場にいられるのもその技術のおかげだな」
「そうよ。文句ある」
小声ではあったが棘のある口調にゼディスは苦笑する。何も咎めているわけではない。事実をありのまま言っているに過ぎない。
「お前の両親には感服する。普通なら決して教えたりはしないだろうからな。仮にも令嬢だ」
グウェンティアは要の石を凝視しながら、昔を思い出していた。
「過去は過去よ。今更どうすることもできないわ」
「確かにそうだ」
ゼディスは頷く。過去を振り返る余裕など今はないのだ。本当なら、出発し少しでも早く解決しなくてはいけないのだ。
「早く帰らないと、大変なことになるわ」
グウェンティアの呟きに、ゼディスは目を細めた。告げなくてはいけない事柄があったからだ。
グロウは目ざとくゼディスに視線を向けた。一つの不安は多くの不安に繋がる。
「もったいぶらずにさっさと言ったらどうだ」
グロウは低く唸るように言った。ゼディスは声の主に視線を向ける。黒の獣は金の瞳でゼディスをただ、見ていた。そこに、感情は感じられない。
「箱庭は大変なことになってる」
ゼディスは感情のこもらない声音で真実を告げた。紅がもたらした予言と自身が持つ力ではっきりと言い切ることが出来る内容だった。
箱庭は封印と結界の均衡が崩れ始めている。城の地下深くに封印された力が放出され始め、止めるための要を失っている。何時かは起こりうる現実がはっきりとしただけの事だ。
「つまり、時間は残りわずかだって事ね」
グウェンティアも淡々と言った。箱庭を離れる時に予測していたことだ。何時までも、現状を維持し続けるのは無理だ。
「どれくらい、保つかしら」
「そこまでは紅と言えど断言できないな」
ゼディスは肩を竦める。予言は予測にすぎない。目安にはなるが絶対の時間までを予測するのは不可能だ。
「ただ言えるのは、時間は残り僅かだと言うことだ」
ゼディスは視線をグウェンティアに戻した。グウェンティアは表情一つ変えてはいない。
無表情のまま、前方を見詰めている。眼前にある要の石は相変わらず文字が踊り、時々不安定になりながらもそこに存在している。
「明日、出発したいわ。なるべく早く目的を達するために」
グウェンティアはただ、事実を口に乗せる。必ず見せ付けられる現実を受け入れる準備をしている余裕はない。できるだけ早く、迅速に行動に移さなくてはならない。
「かまわないが、平気か。甘く見ていると、倒れるぞ」
「覚悟のうえよ。多少の無理ぐらいしなきゃ、元の場所に戻るのに大変な時間を要するわ」
彼女には自覚があった。
多大に消費された体力と魔力は簡単に回復するものではない。だからと言って、手をこまねいているつもりはない。元々、魔術は使わないのだ。不利になる材料にはなりえない。
二人は後ろを振り返った。遥か後方に二つの影がある。徐々に此方に向かっていることは判っていた。彼等にも現実を受け止める準備をしてもらわなくてはならない。
「真実は告げないのか」
ゼディスの問いにグウェンティアは頷いた。今ある現実のみでいい。
「目の前の現実だけで精一杯の筈よ。真実は重すぎるわ」
沈んだ声が、全てを語っていた。話したくとも、無理である現実。
それは、苦痛を伴う秘密だ。話してしまえば楽になる。だが、精神が神経が崩壊しかねない。それ程、強烈な事実なのだ。
「世界の崩壊、普通の人では受け入れる事は出来ないわ」
「お前は」
ゼディスの問いにグウェンティアは少し眉を上げただけだった。
「私は既に地獄を見てるし、経験もしたわ。今更、世界がどうのと言われても、何一つ感じない」
グウェンティアの心は幼い時に受けた仕打ちで麻痺している。かなり強烈な事がない限り動揺はしないだろう。
世界の崩壊すら、彼女にとっては他人ごとだ。依頼がなければ、動くことすらなかった筈なのだから。
「私の中で世界は終わっているも同然。ただ、必要だから動いているだけ」
近付いて来る影を見詰め、小声で言った。ゼディスは小さな溜息を吐く。
紫の三日月は病んでいる。そのことは千年前の紅によって予言されていた。病んでいるからこそ、対処ができる。皮肉な結果だ。
「今更だが、自分を大切にするんだな。知らずに壊れる前に」
ゼディスの言葉はグウェンティアにとって何一つ意味はなかった。一瞬、ゼディスに視線を向け、直ぐ、前方に戻す。
「始まりは終わり。終わりは始まり」
グウェンティアは呟いた。
ゼディスは怪訝な表情をする。
「終わりが始まる時、全てが終わり全てが始まる」
更に、念を押すように呟いた。紅すらも読み取れない、何かが紫にはある。知ることが出きるのは紫のみだ。
「何時か判るのか」
「全てが解決した時に」
グウェンティアは無表情なまま、答える。
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