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月の箱庭
33 光の柱
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レギスは今まで感じたことのない空気の振動に、慌てて外に駆け出した。結界に護られていてさえ判る、はっきりとした変化が何を物語っているのか理解はしている。後ろを振り返ると大神官が空を見上げていた。
空気と大地が震動する。
四の森の木々が強い力にざわめき、森を中心に波動が生まれた。元凶の魔力に侵された生命は、その波動に触れると石のように固まり砕けていく。
大地の上にあった人工建造物は、強い力に耐えきれず、細かい粒子になって消えていく。唯一残ったのは結界陣に護られた修道院の周辺だけだった。
初代王達が魔術で造り上げた全ての物が活動を停止させ、大地に返っていく。強い風が巻き起こり砂と埃が空間を埋めた。
四の森は、更に魔力を伴う波動を起こし、大地が波立つ。太陽が放つ強い光が、砂と埃に遮られ、一時的に闇が支配した。
全てが変化を始める。今までの理が全てに於いて崩れていく。
巻き起こった風は四の森を取り巻き大きな竜巻を作り出す。竜巻は徐々に範囲を広げ、国を護るように存在し消滅した結界陣に到達する。更に強い風が大地をえぐり、急に竜巻は消滅した。
一瞬の静寂。
その静寂が破られたのは強い太陽の光が降り注いだときだった。
†††
三人は王墓に戻って来た。
両の瞳が夜の色だった筈だが今は左目だけが夜の色をしていた。
デュナミスは澄んだ青に。
アシャンティは薄い紫に。
ゼディスは深紅の色になっていた。
左右違う色の瞳は神秘的に映った。初代王レウディアは、三人を自身の柩の前で待っていた。そして、問いかけられるであろう質問も判っていた。
いくら待ってもグウェンティアは現れない。彼女は標となり、再生されるまで眠り続けなくてはならない。それは、決まり事だった。
レウディアは移動陣から現れた三人を順に見た。少しやつれたように見えるのは、奪われた魔力のせいだろう。後は今までの旅で蓄積された疲労によるものだ。
レウディアがアシャンティに視線を向けたとき、彼女は躊躇うことなく駆け寄ってきた。その表情は歪み、涙を溜めた瞳が問いかけていた。結界と封印のために記憶の封印を解いたのだ。アシャンティの中の幼い記憶は、鮮明に過去を映し出しているに違いない。それは封じられていたために風化することなく現れ、アシャンティを駆り立てていた。
過去を知った今、一番の気掛かりはグウェンティアだ。姉と慕い、だが、過去の惨劇が全てを奪い去った。
引き裂かれ、奪われていた記憶。幾重にも鍵をかけられていた真実は、アシャンティにとって掛け替えのないものだった。
「教えて下さい。お姉ちゃんは戻ってくるのですか」
切羽詰まった言葉に、デュナミスとゼディスは顔を見合わせた。お姉ちゃんとは誰なのか。
「戻ってこないのは何故」
アシャンティの声は震え、涙をはらんでいた。始まりであるレウディアは、全てを知っている筈だ。
『貴女には言いましたね。グウェンティアは標になる。標は眠り続け、世界再生のために魔力を受け続けなくてはいけない』
レウディアは冴えない表情で言い切った。
「標とは何だ」
ゼディスは首を傾げ問う。
「眠り続けるって」
デュナミスもゼディスと同じだった。
『約束を果たしましょう。始まりと終わりについて、私は語らなくてはなりません』
レウディアは三人を順に見た。アシャンティは今にも泣きそうだった。だが、我が儘を通すことは、流石にしなかった。聞かなければいけないことは判っていたし、全てを理解する必要があることも、判っていたからだ。
デュナミスとゼディスは互いに顔を見合わせた後、レウディアの元に歩み寄る。全ての謎を知ることがグウェンティアの今を知る手掛かりだと思ったからだ。
『私の兄が元凶であり、私が結果、手を貸してしまったために、この惨劇は起こりました』
千年前、元凶は生を受け、同時に魔力を封じられた。それは、仕方のないことだったのかもしれない。誕生する前から魔力が強すぎ、母体にまで影響を与えていた。母親は最終的に、隔離された状態で臨月を迎え、元凶を産み落とした。
『母は兄が誕生するまで結界の中で生活していました。それは、強すぎた魔力のせいです』
元凶は自身の中の魔力だけでは飽きたらず、母親の命と魔力を喰らい、更に強さを増していった。
『母が生きていたのは奇跡であったと言われていました』
本来、魔力が強い者は虹の帝になる運命であるのだが、元凶は違った。強すぎる魔力がどこから生まれ、溢れだしているのか、全く判らなかったのだ。得体の知れない力ほど、危ないものはない。
月の民は誕生と同時に、半分の魔力を封印する。だが、元凶は封印された魔力を補充し、元よりも更に強い魔力を身に付けてしまう。
『苦肉の策だったようです。すべて魔力を封印してしまうのは』
紫の三日月で有りながら、魔力を知らず成長したために、制御方法を全く知らずにいた元凶に、大人達は考えなく魔力を戻してしまった。
魔力に慣れていなかった体は悲鳴を上げ、体と精神を護るために魔力を放出する。ただ、徐々にその行為は破壊を求めるようになり、黙認するには度を越えてしまった。
『自分達を守るため、兄を拘束することに決めたのですが、そのときには手遅れでした』
月の民が束になっても、元凶には遠く及ばなかった。それどころか、元凶の名を口にしただけで支配されるようになった。
本来なら名を知られている方が支配を受けるが、元凶は全く逆のことをやってのけたのだ。勿論、名を支配することも可能であったため、最終的には抵抗するだけで精一杯だった。
「疑問なのですけど」
アシャンティは首を傾げた。何故なら、月の民は魔力を持つ種族だ。強さに違いはあるだろうが、少なくとも、彼等の住人より抵抗出来る筈である。何故、こちらの世界に渡ってから、拘束することが出来たのか。裏と言われる世界で出来たのではないか。
「何故、こちらに来てからなのですか」
レウディアはアシャンティの問いに顔を歪めた。月の民が犯した過ちは、全く関係のない世界を飲み込んだ。それは予定外であり、想定外だったのだ。だが、その誤算が結果、元凶を窮地に陥れる唯一の方法であった。
『私達の世界では絶対的に無理だったのです』
レウディアは架空に視線を走らせ、きつく目を閉じた。目を閉じれば、瞼の裏に鮮烈な映像が蘇る。
緑豊かな世界ではない。月の光のみの世界に、豊かな森や草原は存在しなかったが、静寂と涼やかな空気に包まれた穏やかな世界だった。
魔力のおかげか寿命が限りなく長い月の民は、あくせく働くことをしない。命が長いために、生き急ぐこともない。
そこに誕生した元凶を結果、捕らえることが出来たのは表の世界にあり、裏の世界に存在しないもののおかげだった。
『太陽が全ての鍵だったのです』
「太陽」
ゼディスは呟き二人を見た。デュナミスとアシャンティも互いを見、怪訝な表情をした。
『私達に太陽の魔力は使えない。それは兄も同じです』
太陽の魔力を無意識に感じることが出来るのは、そこで生活している者だけだ。だが、元凶により破壊と殺戮が実行され、世界は壊滅的に痛めつけられていた。
元凶の凶事を回避しつつ、生きている者を捜すことはかなりの苦痛をもたらした。やっと見つけても額にある三日月が彼等を警戒させ、心を開いてもらうために費やした時間は計りしれなかった。
全ての準備が整い、何もかもがうまくいくと誰もが思っていた。
『私達は重大な過ちを犯していました』
すべての準備が整い、いざ元凶を捕らえる段になり、足りないものがあることに気が付いた。
『紫が足りなかったのです。私は要となる必要がありました。そのために、魔力を失うわけにはいかない』
その言葉にいち早く眉を顰めたのはゼディスだった。レウディアが言った言葉に間違いがなければ、大変な事態になっていることになる。
「待てよ。今の言葉をそのまま素直に解釈したら、恐ろしいことにならないか」
レウディアは頷くしかなかった。ゼディスの瞳は確実に鋭さを増し、射るようにレウディアを見詰めた。
「風の森は結界も封印も存在しない。そうなんだな」
きつい口調でゼディスは問い質した。
『そうです。風の森の二つの水晶は何も宿していません。本来なら、紫の月の魔力が籠められていなくてはならない。けれど、紫はいなかった』
レウディアは肩を震わせ、吐き捨てるように言い切った。
「そんな。じゃあ、お姉ちゃんは」
アシャンティは呆然と呟いた。頬を一粒の涙が伝う。
「グウェンは帰らない」
デュナミスも意外な言葉を聞いたように言った。
「グウェンティアが消えると言った理由はこれかよ」
ゼディスは嫌なものを聞いたように顔を歪めた。
レウディアは小さく息を吐き出した。
『誤解がないように言いますが、グウェンティアは死にませんよ。否、死なれては困ります』
三人は弾かれたようにレウディアを見た。
「どういうことだ」
『忘れたのですか。グウェンティアは標になる。要とは違い魔力そのものは必要なくとも命がなければ意味がないのです』
レウディアは記憶を呼び覚ます。自身の深い場所に位置し、忘れることを許されない真実。元凶を捕らえると決定した時から準備されていた。
「標って、何処にそんな場所があるの」
デュナミスは疑問を口にした。
この世界に正常に機能している場所は少なく、限られている。標が必要なのは百歩譲って認めるとして、その場所が思い当たらない。
『紅の村ですよ』
あっさりと言い切ったレウディアに三人は目を見開いた。紅の村にそんな場所はない。そのことを一番知っているゼディスは、否定しようと口を開きかけた。
だが、何かが引っ掛かる。
「村の要と関係があるのですか」
確信に満ちたようにアシャンティが口にする。ゼディスはアシャンティを凝視した。要も結界も作り出したのは漆黒の三日月だ。
紅の村の要は常時不安定なままでありながら、正常に機能し続けていた。
『何故そう思うのですか』
レウディアはあえて問うた。
「村の要を見たとき思ったんです。不自然だと」
アシャンティは不安定でありながら、正常に機能していた不自然さに疑問を持っていた。普通なら場が崩れてもおかしくない。しかも、村は荒野の魔物が徘徊している場所にあり、不安定では侵入を防ぐのは無理な筈だ。
だが、魔物の侵入を許さず、更に結界内は正常に機能し、生活するのに不便な状態ではなかった。要が別の意味で不安定であったのなら納得出来る。
「場を安定させるためだけではなくて、別の意味も含んでいたのなら、不安定である理由は判ります」
「どういうことだ」
ゼディスは困惑気に問う。アシャンティは視線を向けると口を開いた。
「要に二つの機能があったということです。つまり、結界として何の不備もなかったんです。ただ、もう一つの機能に欠陥があって不安定だったんです」
レウディアはアシャンティの言葉に小さく頷いた。
『その通りです』
レウディアは同意する。そして、語り始めた。
『本来、グウェンティアが担うべき重責ではありません。けれど、頼らざる得なかった』
苦痛に満ちた言葉と表情で、心情を察することは出来た。
「不安定であった理由は」
ゼディスは苛立ちを抑えつつ疑問を口にする。
『大切なものが欠けていたのです』
レウディアは眉間に皺を寄せる。大切な、欠けているもの。それは容易に想像出来た。
「紫が欠けているということ」
感情のこもらない声でデュナミスは言った。
『そうです。本来であれば私の役目でした。けれど、それが出来ない。紫を連れてくればよかった話ですが、気付くのが遅すぎました』
「つまり、グウェンティアはこの世界で唯一の犠牲者ということか」
ゼディスの言葉にレウディアは首を振る。
『犠牲者は数え切れません。貴方方とて犠牲者です。ただ彼女は私達が償うべき責務を押し付けられたのです。そして、もう一つ』
レウディアは言葉を濁した。
「教えて下さい。お姉ちゃんはどうなるんですか」
再三、グウェンティアを姉と呼ぶアシャンティに、デュナミスとゼディスは顔を見合わせ頷いた。
「アシャン」
デュナミスはアシャンティを呼んだ。彼女はその声に反応するように顔を向けた。
「さっきから気になっていたんだけど、姉ってグウェンのことなの」
デュナミスの問いにアシャンティは小さく頷く。グウェンティアはアシャンティにとって掛け替えのない存在だった。
「記憶を封印」
二人は声を揃えて口にした。
アシャンティはレウディアによって解かれた記憶を二人に語った。
男爵家が襲撃されたとき、その場に彼女はいたのだ。グウェンティアの魔力で記憶は封印され、紫の魔力で解くことが可能だった。そのために、アシャンティは記憶が封じられている事実を認識せずに、今に至っていたのである。
グウェンティアが施した魔術は余りに完璧すぎた。本人を見てさえ思い出せないほどに。十歳の少女がそのとき既に、魔術を完璧に近い状態で修得していた事実に二人は驚愕した。
「つまり、初代王が解かなければ、思い出せなかったってことか」
ゼディスはある意味納得していた。グウェンティアが直接、封印を解かなかった理由も理解出来た。もし、不用意に記憶の蓋を開けたなら、混乱を招く結果になる。
アシャンティだけでなく、デュナミスも混乱した筈だ。グウェンティアは全てを見抜いていたに違いない。二人は外界を殆ど知らずに成長した。
「グウェンはどうして自分で……」
「判らないのか」
デュナミスが何を言おうとしているのか、ゼディスには判っていた。
「どういうこと」
デュナミスは首を傾げゼディスを見た。その表情は何も判っていない者のそれだった。
「グウェンティアは危惧したんだ。知識は書庫の本から得たものだけ。外界から隔絶され、人との接触が極端に少ない。そんな中でアシャンティの記憶が戻ったとしよう。お前は冷静でいられるのか」
ゼディスの言葉に、デュナミスは言葉に詰まった。今でさえ混乱している。そんな中で、目の前で兄の変わり果てた姿を見、更に現実を突きつけられて平静でいられたかは疑問だ。
デュナミスはきつく拳を握り締めた。ゼディスの言っていることは間違っていない。だが、心の奥底で何かがくすぶっていた。
それは、憤り。
誰に対してではなく自分自身に対して。
「お姉ちゃんはどうなるの」
アシャンティは縋りつくようにレウディアに詰め寄る。その声に二人は我に返った。今聞かなくてはいけないのは、グウェンティアのことだ。レウディアはグウェンティアが辿る運命が重いと言っているように聞こえた。
『彼女は死なない。否、死ねない。永い時の中で何時までも生き続ける。それは、この世界の言葉で言うなら神に近い』
三人は目を見開いた。そして、息をのむ。
「本人は知ってるのか」
ゼディスの問いに、レウディアはゆっくりと首を振った。グウェンティアが知っているのは標になる事実だけだ。
『彼女は知らない。まだ、確実に成功しているか判らない中で、不確かな情報は与えられなかった』
レウディアの言葉に、三人は顔を見合わせた。
「今のはどう言うこと。成功しているか判らないって」
レウディアは顔を歪ませた。確かに結界と封印は無事に成功した。だが、グウェンティアが標となり所定の位置で眠りにつくまで、真に成功しているかは判らなかった。
「教えてくれないか」
ゼディスは涙目になり、必死に耐えているアシャンティの頭を抱いた。まだ、幼いと言っていい彼女には酷な話しだ。記憶が戻ったとき、グウェンティアはそこにはいなかった。
戻ってきたとき、突きつけられた現実が、心を傷つけている筈だ。その、叫び出したいほどの感情を押し殺しているに違いない。
『グウェンティアの資質が全ての魔力を受け入れるだけの器でなかった場合、場が崩壊します』
「そんな……っ」
アシャンティは咄嗟に叫んだ。
「博打かよっ」
吐き捨てるようにゼディスは地に言葉を吐いた。
「そんな手しかなかったの」
デュナミスもあまりの適当さに眉を顰めた。
『ありませんでした。考えに考え、紅の予知を信じ、こうすることにしたのです』
それは苦渋の選択だった。
『何度も何度も、別の方法はないか探りました』
「見つからなかったのか」
ゼディスは食い入るようにレウディアを見た。苦渋の選択しかなかった当時の彼等に同情はしない。全てはたった一つの過ちから起こったことだ。
「成功したかどうかは、判別可能なのか」
レウディアはゼディスの質問に頷いた。
『判別方法は』
レウディアが口を開いたとき、いきなり大地が震えた。彼女は架空に視線を走らせ、静かに瞳を閉じた。
『確認方法は』
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
『光の柱が立つこと』
三人に視線を戻し、微かに揺れ続けている大地に安堵の溜め息を漏らす。
『今、全てが整いました。グウェンティアは器となり、標となり、永い時の流れの中に身をおきました』
アシャンティはゼディスの服の裾をきつく握り締めた。強く握り締めたために、白く冷たくなった手は小刻みに震えていた。
『私も眠りにつきます。全てが終わるその日まで』
レウディアは溜め息のように言った。
『貴方達は私の名を知っていますね。何かがあればその名を使いなさい。私は目覚め、必ず手をかすと約束します』
レウディアは少し悲しげな笑みを貼り付けた。
「光の柱は立ったのか」
ゼディスはレウディアを凝視し、目を細めた。
『自分の目で確認した方が、納得するのではないですか』
そう切り替えしたレウディアに、ゼディスは軽く首を振った。
『これから、貴方達は自分達で考え進んでいかなくてはいけません。判りますね』
三人は頷くしかなかった。
「訊きたいことがあるんだけど」
デュナミスは小さく喉を鳴らした。レウディアは目を細め、先を続けるよう促した。
「兄上は……」
眉を顰め、デュナミスは絞り出すように、それだけ言った。
レウディアは忘れていた、という表情を見せた。一度、しっかりとデュナミスを見た後、彼等の後ろに視線を投げた。レウディアの視線の先にあったのは細かな粒子の砂の山だった。
デュナミスはそれを確認すると、慌ててレウディアに視線を戻した。しかし、レウディアの姿は既にそこにはなかった。
デュナミスは覚束ない足取りで砂の山に足を運び、手で砂をすくい上げた。それは既に形を持たず、意志もないただの粒子でしかなかった。デュナミスはその場に崩れ落ち、声を出さずに泣いた。
二人はただ、その姿を見詰めることしか出来なかった。
空気と大地が震動する。
四の森の木々が強い力にざわめき、森を中心に波動が生まれた。元凶の魔力に侵された生命は、その波動に触れると石のように固まり砕けていく。
大地の上にあった人工建造物は、強い力に耐えきれず、細かい粒子になって消えていく。唯一残ったのは結界陣に護られた修道院の周辺だけだった。
初代王達が魔術で造り上げた全ての物が活動を停止させ、大地に返っていく。強い風が巻き起こり砂と埃が空間を埋めた。
四の森は、更に魔力を伴う波動を起こし、大地が波立つ。太陽が放つ強い光が、砂と埃に遮られ、一時的に闇が支配した。
全てが変化を始める。今までの理が全てに於いて崩れていく。
巻き起こった風は四の森を取り巻き大きな竜巻を作り出す。竜巻は徐々に範囲を広げ、国を護るように存在し消滅した結界陣に到達する。更に強い風が大地をえぐり、急に竜巻は消滅した。
一瞬の静寂。
その静寂が破られたのは強い太陽の光が降り注いだときだった。
†††
三人は王墓に戻って来た。
両の瞳が夜の色だった筈だが今は左目だけが夜の色をしていた。
デュナミスは澄んだ青に。
アシャンティは薄い紫に。
ゼディスは深紅の色になっていた。
左右違う色の瞳は神秘的に映った。初代王レウディアは、三人を自身の柩の前で待っていた。そして、問いかけられるであろう質問も判っていた。
いくら待ってもグウェンティアは現れない。彼女は標となり、再生されるまで眠り続けなくてはならない。それは、決まり事だった。
レウディアは移動陣から現れた三人を順に見た。少しやつれたように見えるのは、奪われた魔力のせいだろう。後は今までの旅で蓄積された疲労によるものだ。
レウディアがアシャンティに視線を向けたとき、彼女は躊躇うことなく駆け寄ってきた。その表情は歪み、涙を溜めた瞳が問いかけていた。結界と封印のために記憶の封印を解いたのだ。アシャンティの中の幼い記憶は、鮮明に過去を映し出しているに違いない。それは封じられていたために風化することなく現れ、アシャンティを駆り立てていた。
過去を知った今、一番の気掛かりはグウェンティアだ。姉と慕い、だが、過去の惨劇が全てを奪い去った。
引き裂かれ、奪われていた記憶。幾重にも鍵をかけられていた真実は、アシャンティにとって掛け替えのないものだった。
「教えて下さい。お姉ちゃんは戻ってくるのですか」
切羽詰まった言葉に、デュナミスとゼディスは顔を見合わせた。お姉ちゃんとは誰なのか。
「戻ってこないのは何故」
アシャンティの声は震え、涙をはらんでいた。始まりであるレウディアは、全てを知っている筈だ。
『貴女には言いましたね。グウェンティアは標になる。標は眠り続け、世界再生のために魔力を受け続けなくてはいけない』
レウディアは冴えない表情で言い切った。
「標とは何だ」
ゼディスは首を傾げ問う。
「眠り続けるって」
デュナミスもゼディスと同じだった。
『約束を果たしましょう。始まりと終わりについて、私は語らなくてはなりません』
レウディアは三人を順に見た。アシャンティは今にも泣きそうだった。だが、我が儘を通すことは、流石にしなかった。聞かなければいけないことは判っていたし、全てを理解する必要があることも、判っていたからだ。
デュナミスとゼディスは互いに顔を見合わせた後、レウディアの元に歩み寄る。全ての謎を知ることがグウェンティアの今を知る手掛かりだと思ったからだ。
『私の兄が元凶であり、私が結果、手を貸してしまったために、この惨劇は起こりました』
千年前、元凶は生を受け、同時に魔力を封じられた。それは、仕方のないことだったのかもしれない。誕生する前から魔力が強すぎ、母体にまで影響を与えていた。母親は最終的に、隔離された状態で臨月を迎え、元凶を産み落とした。
『母は兄が誕生するまで結界の中で生活していました。それは、強すぎた魔力のせいです』
元凶は自身の中の魔力だけでは飽きたらず、母親の命と魔力を喰らい、更に強さを増していった。
『母が生きていたのは奇跡であったと言われていました』
本来、魔力が強い者は虹の帝になる運命であるのだが、元凶は違った。強すぎる魔力がどこから生まれ、溢れだしているのか、全く判らなかったのだ。得体の知れない力ほど、危ないものはない。
月の民は誕生と同時に、半分の魔力を封印する。だが、元凶は封印された魔力を補充し、元よりも更に強い魔力を身に付けてしまう。
『苦肉の策だったようです。すべて魔力を封印してしまうのは』
紫の三日月で有りながら、魔力を知らず成長したために、制御方法を全く知らずにいた元凶に、大人達は考えなく魔力を戻してしまった。
魔力に慣れていなかった体は悲鳴を上げ、体と精神を護るために魔力を放出する。ただ、徐々にその行為は破壊を求めるようになり、黙認するには度を越えてしまった。
『自分達を守るため、兄を拘束することに決めたのですが、そのときには手遅れでした』
月の民が束になっても、元凶には遠く及ばなかった。それどころか、元凶の名を口にしただけで支配されるようになった。
本来なら名を知られている方が支配を受けるが、元凶は全く逆のことをやってのけたのだ。勿論、名を支配することも可能であったため、最終的には抵抗するだけで精一杯だった。
「疑問なのですけど」
アシャンティは首を傾げた。何故なら、月の民は魔力を持つ種族だ。強さに違いはあるだろうが、少なくとも、彼等の住人より抵抗出来る筈である。何故、こちらの世界に渡ってから、拘束することが出来たのか。裏と言われる世界で出来たのではないか。
「何故、こちらに来てからなのですか」
レウディアはアシャンティの問いに顔を歪めた。月の民が犯した過ちは、全く関係のない世界を飲み込んだ。それは予定外であり、想定外だったのだ。だが、その誤算が結果、元凶を窮地に陥れる唯一の方法であった。
『私達の世界では絶対的に無理だったのです』
レウディアは架空に視線を走らせ、きつく目を閉じた。目を閉じれば、瞼の裏に鮮烈な映像が蘇る。
緑豊かな世界ではない。月の光のみの世界に、豊かな森や草原は存在しなかったが、静寂と涼やかな空気に包まれた穏やかな世界だった。
魔力のおかげか寿命が限りなく長い月の民は、あくせく働くことをしない。命が長いために、生き急ぐこともない。
そこに誕生した元凶を結果、捕らえることが出来たのは表の世界にあり、裏の世界に存在しないもののおかげだった。
『太陽が全ての鍵だったのです』
「太陽」
ゼディスは呟き二人を見た。デュナミスとアシャンティも互いを見、怪訝な表情をした。
『私達に太陽の魔力は使えない。それは兄も同じです』
太陽の魔力を無意識に感じることが出来るのは、そこで生活している者だけだ。だが、元凶により破壊と殺戮が実行され、世界は壊滅的に痛めつけられていた。
元凶の凶事を回避しつつ、生きている者を捜すことはかなりの苦痛をもたらした。やっと見つけても額にある三日月が彼等を警戒させ、心を開いてもらうために費やした時間は計りしれなかった。
全ての準備が整い、何もかもがうまくいくと誰もが思っていた。
『私達は重大な過ちを犯していました』
すべての準備が整い、いざ元凶を捕らえる段になり、足りないものがあることに気が付いた。
『紫が足りなかったのです。私は要となる必要がありました。そのために、魔力を失うわけにはいかない』
その言葉にいち早く眉を顰めたのはゼディスだった。レウディアが言った言葉に間違いがなければ、大変な事態になっていることになる。
「待てよ。今の言葉をそのまま素直に解釈したら、恐ろしいことにならないか」
レウディアは頷くしかなかった。ゼディスの瞳は確実に鋭さを増し、射るようにレウディアを見詰めた。
「風の森は結界も封印も存在しない。そうなんだな」
きつい口調でゼディスは問い質した。
『そうです。風の森の二つの水晶は何も宿していません。本来なら、紫の月の魔力が籠められていなくてはならない。けれど、紫はいなかった』
レウディアは肩を震わせ、吐き捨てるように言い切った。
「そんな。じゃあ、お姉ちゃんは」
アシャンティは呆然と呟いた。頬を一粒の涙が伝う。
「グウェンは帰らない」
デュナミスも意外な言葉を聞いたように言った。
「グウェンティアが消えると言った理由はこれかよ」
ゼディスは嫌なものを聞いたように顔を歪めた。
レウディアは小さく息を吐き出した。
『誤解がないように言いますが、グウェンティアは死にませんよ。否、死なれては困ります』
三人は弾かれたようにレウディアを見た。
「どういうことだ」
『忘れたのですか。グウェンティアは標になる。要とは違い魔力そのものは必要なくとも命がなければ意味がないのです』
レウディアは記憶を呼び覚ます。自身の深い場所に位置し、忘れることを許されない真実。元凶を捕らえると決定した時から準備されていた。
「標って、何処にそんな場所があるの」
デュナミスは疑問を口にした。
この世界に正常に機能している場所は少なく、限られている。標が必要なのは百歩譲って認めるとして、その場所が思い当たらない。
『紅の村ですよ』
あっさりと言い切ったレウディアに三人は目を見開いた。紅の村にそんな場所はない。そのことを一番知っているゼディスは、否定しようと口を開きかけた。
だが、何かが引っ掛かる。
「村の要と関係があるのですか」
確信に満ちたようにアシャンティが口にする。ゼディスはアシャンティを凝視した。要も結界も作り出したのは漆黒の三日月だ。
紅の村の要は常時不安定なままでありながら、正常に機能し続けていた。
『何故そう思うのですか』
レウディアはあえて問うた。
「村の要を見たとき思ったんです。不自然だと」
アシャンティは不安定でありながら、正常に機能していた不自然さに疑問を持っていた。普通なら場が崩れてもおかしくない。しかも、村は荒野の魔物が徘徊している場所にあり、不安定では侵入を防ぐのは無理な筈だ。
だが、魔物の侵入を許さず、更に結界内は正常に機能し、生活するのに不便な状態ではなかった。要が別の意味で不安定であったのなら納得出来る。
「場を安定させるためだけではなくて、別の意味も含んでいたのなら、不安定である理由は判ります」
「どういうことだ」
ゼディスは困惑気に問う。アシャンティは視線を向けると口を開いた。
「要に二つの機能があったということです。つまり、結界として何の不備もなかったんです。ただ、もう一つの機能に欠陥があって不安定だったんです」
レウディアはアシャンティの言葉に小さく頷いた。
『その通りです』
レウディアは同意する。そして、語り始めた。
『本来、グウェンティアが担うべき重責ではありません。けれど、頼らざる得なかった』
苦痛に満ちた言葉と表情で、心情を察することは出来た。
「不安定であった理由は」
ゼディスは苛立ちを抑えつつ疑問を口にする。
『大切なものが欠けていたのです』
レウディアは眉間に皺を寄せる。大切な、欠けているもの。それは容易に想像出来た。
「紫が欠けているということ」
感情のこもらない声でデュナミスは言った。
『そうです。本来であれば私の役目でした。けれど、それが出来ない。紫を連れてくればよかった話ですが、気付くのが遅すぎました』
「つまり、グウェンティアはこの世界で唯一の犠牲者ということか」
ゼディスの言葉にレウディアは首を振る。
『犠牲者は数え切れません。貴方方とて犠牲者です。ただ彼女は私達が償うべき責務を押し付けられたのです。そして、もう一つ』
レウディアは言葉を濁した。
「教えて下さい。お姉ちゃんはどうなるんですか」
再三、グウェンティアを姉と呼ぶアシャンティに、デュナミスとゼディスは顔を見合わせ頷いた。
「アシャン」
デュナミスはアシャンティを呼んだ。彼女はその声に反応するように顔を向けた。
「さっきから気になっていたんだけど、姉ってグウェンのことなの」
デュナミスの問いにアシャンティは小さく頷く。グウェンティアはアシャンティにとって掛け替えのない存在だった。
「記憶を封印」
二人は声を揃えて口にした。
アシャンティはレウディアによって解かれた記憶を二人に語った。
男爵家が襲撃されたとき、その場に彼女はいたのだ。グウェンティアの魔力で記憶は封印され、紫の魔力で解くことが可能だった。そのために、アシャンティは記憶が封じられている事実を認識せずに、今に至っていたのである。
グウェンティアが施した魔術は余りに完璧すぎた。本人を見てさえ思い出せないほどに。十歳の少女がそのとき既に、魔術を完璧に近い状態で修得していた事実に二人は驚愕した。
「つまり、初代王が解かなければ、思い出せなかったってことか」
ゼディスはある意味納得していた。グウェンティアが直接、封印を解かなかった理由も理解出来た。もし、不用意に記憶の蓋を開けたなら、混乱を招く結果になる。
アシャンティだけでなく、デュナミスも混乱した筈だ。グウェンティアは全てを見抜いていたに違いない。二人は外界を殆ど知らずに成長した。
「グウェンはどうして自分で……」
「判らないのか」
デュナミスが何を言おうとしているのか、ゼディスには判っていた。
「どういうこと」
デュナミスは首を傾げゼディスを見た。その表情は何も判っていない者のそれだった。
「グウェンティアは危惧したんだ。知識は書庫の本から得たものだけ。外界から隔絶され、人との接触が極端に少ない。そんな中でアシャンティの記憶が戻ったとしよう。お前は冷静でいられるのか」
ゼディスの言葉に、デュナミスは言葉に詰まった。今でさえ混乱している。そんな中で、目の前で兄の変わり果てた姿を見、更に現実を突きつけられて平静でいられたかは疑問だ。
デュナミスはきつく拳を握り締めた。ゼディスの言っていることは間違っていない。だが、心の奥底で何かがくすぶっていた。
それは、憤り。
誰に対してではなく自分自身に対して。
「お姉ちゃんはどうなるの」
アシャンティは縋りつくようにレウディアに詰め寄る。その声に二人は我に返った。今聞かなくてはいけないのは、グウェンティアのことだ。レウディアはグウェンティアが辿る運命が重いと言っているように聞こえた。
『彼女は死なない。否、死ねない。永い時の中で何時までも生き続ける。それは、この世界の言葉で言うなら神に近い』
三人は目を見開いた。そして、息をのむ。
「本人は知ってるのか」
ゼディスの問いに、レウディアはゆっくりと首を振った。グウェンティアが知っているのは標になる事実だけだ。
『彼女は知らない。まだ、確実に成功しているか判らない中で、不確かな情報は与えられなかった』
レウディアの言葉に、三人は顔を見合わせた。
「今のはどう言うこと。成功しているか判らないって」
レウディアは顔を歪ませた。確かに結界と封印は無事に成功した。だが、グウェンティアが標となり所定の位置で眠りにつくまで、真に成功しているかは判らなかった。
「教えてくれないか」
ゼディスは涙目になり、必死に耐えているアシャンティの頭を抱いた。まだ、幼いと言っていい彼女には酷な話しだ。記憶が戻ったとき、グウェンティアはそこにはいなかった。
戻ってきたとき、突きつけられた現実が、心を傷つけている筈だ。その、叫び出したいほどの感情を押し殺しているに違いない。
『グウェンティアの資質が全ての魔力を受け入れるだけの器でなかった場合、場が崩壊します』
「そんな……っ」
アシャンティは咄嗟に叫んだ。
「博打かよっ」
吐き捨てるようにゼディスは地に言葉を吐いた。
「そんな手しかなかったの」
デュナミスもあまりの適当さに眉を顰めた。
『ありませんでした。考えに考え、紅の予知を信じ、こうすることにしたのです』
それは苦渋の選択だった。
『何度も何度も、別の方法はないか探りました』
「見つからなかったのか」
ゼディスは食い入るようにレウディアを見た。苦渋の選択しかなかった当時の彼等に同情はしない。全てはたった一つの過ちから起こったことだ。
「成功したかどうかは、判別可能なのか」
レウディアはゼディスの質問に頷いた。
『判別方法は』
レウディアが口を開いたとき、いきなり大地が震えた。彼女は架空に視線を走らせ、静かに瞳を閉じた。
『確認方法は』
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
『光の柱が立つこと』
三人に視線を戻し、微かに揺れ続けている大地に安堵の溜め息を漏らす。
『今、全てが整いました。グウェンティアは器となり、標となり、永い時の流れの中に身をおきました』
アシャンティはゼディスの服の裾をきつく握り締めた。強く握り締めたために、白く冷たくなった手は小刻みに震えていた。
『私も眠りにつきます。全てが終わるその日まで』
レウディアは溜め息のように言った。
『貴方達は私の名を知っていますね。何かがあればその名を使いなさい。私は目覚め、必ず手をかすと約束します』
レウディアは少し悲しげな笑みを貼り付けた。
「光の柱は立ったのか」
ゼディスはレウディアを凝視し、目を細めた。
『自分の目で確認した方が、納得するのではないですか』
そう切り替えしたレウディアに、ゼディスは軽く首を振った。
『これから、貴方達は自分達で考え進んでいかなくてはいけません。判りますね』
三人は頷くしかなかった。
「訊きたいことがあるんだけど」
デュナミスは小さく喉を鳴らした。レウディアは目を細め、先を続けるよう促した。
「兄上は……」
眉を顰め、デュナミスは絞り出すように、それだけ言った。
レウディアは忘れていた、という表情を見せた。一度、しっかりとデュナミスを見た後、彼等の後ろに視線を投げた。レウディアの視線の先にあったのは細かな粒子の砂の山だった。
デュナミスはそれを確認すると、慌ててレウディアに視線を戻した。しかし、レウディアの姿は既にそこにはなかった。
デュナミスは覚束ない足取りで砂の山に足を運び、手で砂をすくい上げた。それは既に形を持たず、意志もないただの粒子でしかなかった。デュナミスはその場に崩れ落ち、声を出さずに泣いた。
二人はただ、その姿を見詰めることしか出来なかった。
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