銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

027 杖と杖の選択

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「久しぶりね」
 
 いきなりかかった声に辺りを見渡す。足を踏み入れた部屋は、さっきいた店内と変わらない作りだ。ただ、窓が一切ない。上を見上げると、薄っすら光る杖を確認できる。杖が照明器具なのか。
 
「何年振りでしょうか?」
「そこの子が最後だった筈よ」
 
 どこから声がしてんだよ。
 
「サクヤ、足元見てごらん」
 
 足元……。視線を向けたら毛並みが綺麗な黒猫……、これ、猫じゃねぇ。
 
「分かるのね。無知みたいだけど、勘はいいようね。ただ、鍵を開けてもらわないと杖は選んでくれないわよ」
「……制御できてないので、それは……」
「貴方なら、新たな鍵を掛けることは可能でしょう?」
 
 鍵って?
 
「それに、そちらの部屋で杖の選定をしたのではないの? 魔力がほぼ、底をついているでしょう。杖を手に入れたあと、また、鍵をかけてちょうだい」
 
 この猫、何者だよ。
 
「本当に鍵が?」
「ええ。魔法を掛けるまで分からなかったんですけどね」
 
 あのさ。鍵ってユエがリミッター外したどうのこうの言ってたやつだよな。嫌な予感がすんだけど……。
 
「仕方ないね」
 
 ルイが盛大に溜め息吐いてオレの顎に右手を持ってきた。後ろから抱きつかれてるから逃げられねぇし! 顔を無理矢理後ろに向けられて、唇を塞いだ柔らかい感触。って、やっぱりそういうことするのかよ! 抗議をしようと口を開いたのがまずかった。入り込んできた滑りを帯びた温かいもの。舌を絡めてきて、襲ってきた感覚。一気になにかが入り込んできた。違う! 溢れてきたんだ!
 
「……はっ」
「大丈夫?」
「な訳あるか! なんだよこれ?!」
「サクヤの本来の魔力だよ」
「嘘だろ?」
 
 視界はクリアなのに、体が悲鳴を上げてる。
 
「やっぱり、珍獣」
 
 ユエの奴! あとで絶対シバく! 副会長が出てきても絶対だ!
 
「ほらほら、早く終わらせた方が楽よ」
 
 黒猫擬きもあとで覚えてろよ。さっきと同じように部屋の中央に立った。もう、杖とかどうでもいい! 早く終わらせてルイに閉じてもらう!
 
「ここでも複数ですか。本当に珍しい方ですね」
 
 店主、そんな戯言はいいんだ。体が痛いんだよ! 目の前に降りてきたのは三本。
 
「どれも貴方に合う杖よ。その三本は貴方に選んで欲しいそうよ」
 
 は?! 杖が選ぶんじゃねぇの?
 
「どういう意味だよ」
「杖は主を選ぶ。けれど、ここの杖は少し特殊よ。長い時を本当の主を得るために眠りについたのだもの。その杖が目覚めたの。しかも、三本も。普通は一本なんだけどね」
 
 黒猫擬きの言葉が分からないわけじゃねぇよ。でもよ、この三本、高そんなんだって。
 
「貴方ならどれが相応しいか分かる筈よ。知識はなくても、勘だけなら誰にもまけないでしょう?」
 
 いちいちムカつくな。でも、体が痛いし、怠いし、さっさと決めてやる!
 
 目の前にある三本。それぞれに特徴は違う。
 
 一本は黒くて、持ち手の部分に細かな彫刻がなされている。三本の中で一番太い。
 
 一本は白っぽい。こっちは持ち手じゃなくて先の方が特徴的な細工がなされてる。長さは一番あると思う。
 
 もう一本。飴色をした光沢のある三本の中で一番細身。シンプルだと思ったんだけど、よく見ると細かな彫刻が全体に施されてる。
 
 三本共に共通しているのは、さっきの杖達と明らかになにかが違う。強いて言うならオレに近いのかもしれない。あっちの部屋で見たものと質も作りも違う。手にしたのは飴色の杖。なんとなく、こいつかなって思った。手にした瞬間、体が軽くなる。スッと入り込んでくる感じだ。
 
「その杖で間違いないようね」
 
 黒猫擬きがそう言った。何を根拠に? オレが杖を選んだと確認した他の二本の杖は元の場所に戻った。手の中に収まるそれを凝視する。しっくりくる感覚。合う杖の意味を、このとき本当の意味で理解した。
 
 
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