銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
29 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

029 杖と猫

しおりを挟む
 店主に導かれて行った部屋は少し奥まった場所だった。暗さは全然なくてさ、静かな場所だ。
 
「ここです。部屋に入れると良いのですが」
 
 どういうことだ?!
 
「この部屋の主が認めないと入れないの?」
 
 ルイは普通に答えてるし。でも、主って、さっきの黒猫擬きの杖だよな。
 
「そうですね。私も数回しか入室していませんから」
 
 どんだけ自我が強いんだよ。店主がノブに手を掛けて静かに回した。扉を開くときの軽い音がして、抵抗なく外側に開いた。恐る恐る室内を見渡すと、部屋の中央の台の上に杖があった。
 
 綺麗な杖だよな。黒猫だったのは杖が黒いからだ。艶があって、しなやかな感じが確かに猫なのかもしんねぇ。
 
「入れましたね。歓迎されてるんでしょう。多分、サクヤ様でしょうが」
 
 は?! 俺かよ!
 
「妬けるね。杖にまでモテるなんて」
「苦労するね」
 
 ルイと副会長、好き勝手言ってんじゃねぇぞ。
 
「ずっと、ここに?」
「主が没する少し前に預けられたと伝えられております。あの部屋の選定に必ず現れるというわけではないのですよ。あくまで主が製作した杖が目覚めるときだけです」
 
 それまでは眠ってんのかな?
 
「そう」
  
 ルイはそう言うと指を鳴らした。なんで、杖なんか出してんだ。
 
「サクヤ、その杖を見せて」
 
 なに言ってんだよ。ルイの杖の横に手に持ってる杖を並べた。色は多少違う。でもよ。これ、彫刻が同じモチーフだ。
 
「ふふ。気が付いた?」
 
 いきなり真横から声、って、この女の人誰だよ?! 長い黒髪に独特の色合いの黒い瞳。でもって、副会長ばりの真っ黒な服……。魔女みてぇだし。
 
「さっきの黒猫ですね」
「そうよ。本体が近くにあるから人の姿になれるのよ」
「この杖は対ですか?」
「そうね。主は意識はしてないわよ。あの人、感じたままに作っていたから」
 
 対って。
 
「中に石が込められてるのだけどね。確か変わった石よ。覚えてはいないんだけど。癖が強くてね。扱える人も限られてる。そう言う意味では、二人は変わってるわね。だって、対の存在で相手なんでしょう?」
 
 どういう意味だよ?
 
「この子は魔力を制御できてない。でも、開放すれば貴方と同じ強さの魔力でしょう。陽と陰。まさに対よね」
 
 言ったあと、面白そうに笑いやがった。グッタリだ。まだ、恋人未満なんだよ。外堀から確定するのやめてくんねぇ?
 
「同じ?」
 
 ルイは驚いたように目を見開く。
 
「同じね。貴方は破壊の力がとてつもなく強いけど、この子は逆に修復する力が強いわよ。それに貴方は溜め込みタイプだけど、この子は放出タイプよね。本当に二人共珍しいわ」
 
 そして、更に高笑い。杖って、こんなに感情が豊かなのかよ。って、オレが手にしてるのも人型になるのか?!
 
「ならないわよ」
 
 オレを見詰めて、そんなことを言った。
 
「私みたいに歩き回るのは稀よ。だから、一緒に連れて行ってもらえなかったのだから」
 
 寂しそう、に見えんだけど。
 
「そうそう。わざわざこの部屋に招いたのは言いたいことがあったからよ。その杖、貴方達が亡くなるとき、一緒に連れて行ってあげてね。新たな主は絶対に見付けることはないから」
 
 へ?! なに言い出すんだよ!
 
「なんとなく、貴方が杖に選ばれたとき、もう一人いるような気がしたのよ。だから、そのときには伝えなかったんだけど」
 
 ルイに視線を向けて微笑む。
 
「不安定だったし。何かが足りない感じだったし。一人でいるのは不自然な感じだったしね」
 
 そう言うと、大きく体を伸ばした。
 
「店主。私は当分目覚めないわ。だから、近付かないでね」
「分かりました」
「じゃあね」
 
 軽く手を振ると、思いっきり部屋から追い出された! しかも、容赦なく全員! 勢いよく扉が閉まって、しかも、カチャリって鍵が掛かる音がすっし! 今のなんだったんだよ?!
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...