43 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編
043 波
しおりを挟む
「キュ?」
頭の上のベニが小さく声を上げた。どうしたのかと、視線を上に向ける。まあ、向けたところで見えねぇんだけど。
「話したのか?」
「悠長に構えてたら、後悔するでしょう。この子にも知る権利はあるからね」
「魔法のなんたるかもよく知らないのにか?」
「だからだよ。この子は知らないじゃなく、教えてもらってないだけだからね。それに、ルイにスパルタ的に勉強させられてるから、直ぐに俺達なんて追い越されるよ。魔力はルイ並みなんだしね」
見上げた先にいたのは渋い表情をした糖蜜色の髪と瞳、白い肌のスラッと背の高い生徒。誰だ?
「誰?」
「ああ、風紀委員長のトウヤ(籐野)だよ」
風紀委員長?! 初めて見た。
「ヒュウガ(日向)は?」
「直ぐに来る。ルイはまだ、戻らないのか?」
「戻りたくても戻れないんでしょう。徹底した身体検査という名の実験をされてるんだろうしね」
は?! それなんだよ!
「懲りもせず……」
「まあ、今回で最後でしょう。今のルイの魔力に狂気めいたものはないし。仮にまた、そうなっても、この子がいるしね。あの人をなんとかできればルイは晴れて自由でしょう」
「それが難しいんだろうが」
副会長が傍に立つ風紀委員長を見上げた。
「この子を監視してるのはなんのためなの? あの人は絶対にこの好機を逃さないだろうしね。同じ質の魔力と能力を持つルイは避けて通ってるけど、離れた今、この子のことはしっかり認識してるだろうし。虎視眈々と好機を狙ってるでしょう」
狙われてるのかよ……。それに、これ、なんだ? ザワザワする。辺りを見渡してもいるのはいつものメンバーで。でも、何かが違う。教室の壁に揺らめく一つの影。細い目と闇を纏った髪。死神のような抜け目ない視線。
「あれを見たらダメだよ」
「あれ、なんだよ……」
「その道の人」
その道って……。
「誰もがあの人を捕まえたいんだよ。貴方はある意味、餌だからね。好機を逃す愚か者はいないんだよ」
「地下から出てきたんだな」
「だろうね。あの人を捕まえることができれば、当面の動力源は確保できる。ルイは魔法省のトップが守ってるから、使えないんだろうしね」
ん? 動力源って?
「あのさ、動力源って?」
「魔力をね、魔法省内のありとあらゆるものの動力源にしてるんだよ。地下にいるのは罪人でね」
「ルイは!」
「罪人じゃないよ。でもね、もし、貴方が離れたらルイは罪人達がいる魔法省地下に幽閉されるんだよ。ルイ自身も覚悟はしてる」
そんなこと知らない……。オレが俯いて難しい顔をしたからだろうな。副会長がオレの頭を撫でた。
「選択権はいつでも貴方が持ってるんだよ」
「でも!」
「だから、ルイは自分のことを言わなかったでしょう。言えば縛ってしまうからね」
ルイは対等の立場がいいって。そんなに切迫した状態だったなんて知らなかったんだ!
「キュウ!」
ベニがいきなり激しく鳴き出した。
「キュウキュウ!」
「ベニ?」
副会長が眉間に皺を寄せる。傍にいる風紀委員長も同様にだ。
「……来たね」
「教師達は?」
「動くでしょう。学校側としても魔法省側としても、あの人を捕縛したいのは変わらないんだし」
なんだよ。ザワザワする。神経に何かが触れる。
『ミツケタ』
背中に纏わり付く冷たい汗。ベニが激しく警戒の鳴き声をあげてる。脳裏に浮かんだ顔がルイと酷似していた。色も魔力も。
慌ただしい足音が響いて、教室に教師が飛び込んで来た。オレを取り囲み、皆が皆、手には杖を持ち構えていた。
頭の上のベニが小さく声を上げた。どうしたのかと、視線を上に向ける。まあ、向けたところで見えねぇんだけど。
「話したのか?」
「悠長に構えてたら、後悔するでしょう。この子にも知る権利はあるからね」
「魔法のなんたるかもよく知らないのにか?」
「だからだよ。この子は知らないじゃなく、教えてもらってないだけだからね。それに、ルイにスパルタ的に勉強させられてるから、直ぐに俺達なんて追い越されるよ。魔力はルイ並みなんだしね」
見上げた先にいたのは渋い表情をした糖蜜色の髪と瞳、白い肌のスラッと背の高い生徒。誰だ?
「誰?」
「ああ、風紀委員長のトウヤ(籐野)だよ」
風紀委員長?! 初めて見た。
「ヒュウガ(日向)は?」
「直ぐに来る。ルイはまだ、戻らないのか?」
「戻りたくても戻れないんでしょう。徹底した身体検査という名の実験をされてるんだろうしね」
は?! それなんだよ!
「懲りもせず……」
「まあ、今回で最後でしょう。今のルイの魔力に狂気めいたものはないし。仮にまた、そうなっても、この子がいるしね。あの人をなんとかできればルイは晴れて自由でしょう」
「それが難しいんだろうが」
副会長が傍に立つ風紀委員長を見上げた。
「この子を監視してるのはなんのためなの? あの人は絶対にこの好機を逃さないだろうしね。同じ質の魔力と能力を持つルイは避けて通ってるけど、離れた今、この子のことはしっかり認識してるだろうし。虎視眈々と好機を狙ってるでしょう」
狙われてるのかよ……。それに、これ、なんだ? ザワザワする。辺りを見渡してもいるのはいつものメンバーで。でも、何かが違う。教室の壁に揺らめく一つの影。細い目と闇を纏った髪。死神のような抜け目ない視線。
「あれを見たらダメだよ」
「あれ、なんだよ……」
「その道の人」
その道って……。
「誰もがあの人を捕まえたいんだよ。貴方はある意味、餌だからね。好機を逃す愚か者はいないんだよ」
「地下から出てきたんだな」
「だろうね。あの人を捕まえることができれば、当面の動力源は確保できる。ルイは魔法省のトップが守ってるから、使えないんだろうしね」
ん? 動力源って?
「あのさ、動力源って?」
「魔力をね、魔法省内のありとあらゆるものの動力源にしてるんだよ。地下にいるのは罪人でね」
「ルイは!」
「罪人じゃないよ。でもね、もし、貴方が離れたらルイは罪人達がいる魔法省地下に幽閉されるんだよ。ルイ自身も覚悟はしてる」
そんなこと知らない……。オレが俯いて難しい顔をしたからだろうな。副会長がオレの頭を撫でた。
「選択権はいつでも貴方が持ってるんだよ」
「でも!」
「だから、ルイは自分のことを言わなかったでしょう。言えば縛ってしまうからね」
ルイは対等の立場がいいって。そんなに切迫した状態だったなんて知らなかったんだ!
「キュウ!」
ベニがいきなり激しく鳴き出した。
「キュウキュウ!」
「ベニ?」
副会長が眉間に皺を寄せる。傍にいる風紀委員長も同様にだ。
「……来たね」
「教師達は?」
「動くでしょう。学校側としても魔法省側としても、あの人を捕縛したいのは変わらないんだし」
なんだよ。ザワザワする。神経に何かが触れる。
『ミツケタ』
背中に纏わり付く冷たい汗。ベニが激しく警戒の鳴き声をあげてる。脳裏に浮かんだ顔がルイと酷似していた。色も魔力も。
慌ただしい足音が響いて、教室に教師が飛び込んで来た。オレを取り囲み、皆が皆、手には杖を持ち構えていた。
10
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
神官姫と最強最弱の王
深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。
隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。
※週一回 マイペース更新
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる