銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

043 波

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「キュ?」
 
 頭の上のベニが小さく声を上げた。どうしたのかと、視線を上に向ける。まあ、向けたところで見えねぇんだけど。
 
「話したのか?」
「悠長に構えてたら、後悔するでしょう。この子にも知る権利はあるからね」
「魔法のなんたるかもよく知らないのにか?」
「だからだよ。この子は知らないじゃなく、教えてもらってないだけだからね。それに、ルイにスパルタ的に勉強させられてるから、直ぐに俺達なんて追い越されるよ。魔力はルイ並みなんだしね」
 
 見上げた先にいたのは渋い表情をした糖蜜色の髪と瞳、白い肌のスラッと背の高い生徒。誰だ?
 
「誰?」
「ああ、風紀委員長のトウヤ(籐野)だよ」
 
 風紀委員長?! 初めて見た。
 
「ヒュウガ(日向)は?」
「直ぐに来る。ルイはまだ、戻らないのか?」
「戻りたくても戻れないんでしょう。徹底した身体検査という名の実験をされてるんだろうしね」
 
 は?! それなんだよ!
 
「懲りもせず……」
「まあ、今回で最後でしょう。今のルイの魔力に狂気めいたものはないし。仮にまた、そうなっても、この子がいるしね。あの人をなんとかできればルイは晴れて自由でしょう」
「それが難しいんだろうが」
 
 副会長が傍に立つ風紀委員長を見上げた。
 
「この子を監視してるのはなんのためなの? あの人は絶対にこの好機を逃さないだろうしね。同じ質の魔力と能力を持つルイは避けて通ってるけど、離れた今、この子のことはしっかり認識してるだろうし。虎視眈々と好機を狙ってるでしょう」
 
 狙われてるのかよ……。それに、これ、なんだ? ザワザワする。辺りを見渡してもいるのはいつものメンバーで。でも、何かが違う。教室の壁に揺らめく一つの影。細い目と闇を纏った髪。死神のような抜け目ない視線。
 
「あれを見たらダメだよ」
「あれ、なんだよ……」
「その道の人」
 
 その道って……。
 
「誰もがあの人を捕まえたいんだよ。貴方はある意味、餌だからね。好機を逃す愚か者はいないんだよ」
「地下から出てきたんだな」
「だろうね。あの人を捕まえることができれば、当面の動力源は確保できる。ルイは魔法省のトップが守ってるから、使えないんだろうしね」
 
 ん? 動力源って?
 
「あのさ、動力源って?」
「魔力をね、魔法省内のありとあらゆるものの動力源にしてるんだよ。地下にいるのは罪人でね」
「ルイは!」
「罪人じゃないよ。でもね、もし、貴方が離れたらルイは罪人達がいる魔法省地下に幽閉されるんだよ。ルイ自身も覚悟はしてる」
 
 そんなこと知らない……。オレが俯いて難しい顔をしたからだろうな。副会長がオレの頭を撫でた。
 
「選択権はいつでも貴方が持ってるんだよ」
「でも!」
「だから、ルイは自分のことを言わなかったでしょう。言えば縛ってしまうからね」
 
 ルイは対等の立場がいいって。そんなに切迫した状態だったなんて知らなかったんだ!
 
「キュウ!」
 
 ベニがいきなり激しく鳴き出した。
 
「キュウキュウ!」
「ベニ?」
 
 副会長が眉間に皺を寄せる。傍にいる風紀委員長も同様にだ。
 
「……来たね」
「教師達は?」
「動くでしょう。学校側としても魔法省側としても、あの人を捕縛したいのは変わらないんだし」
 
 なんだよ。ザワザワする。神経に何かが触れる。
 
『ミツケタ』
 
 背中に纏わり付く冷たい汗。ベニが激しく警戒の鳴き声をあげてる。脳裏に浮かんだ顔がルイと酷似していた。色も魔力も。
 
 慌ただしい足音が響いて、教室に教師が飛び込んで来た。オレを取り囲み、皆が皆、手には杖を持ち構えていた。
 
 
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