銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
107 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

107 アンバランス

しおりを挟む
「サクヤ?」
 
 ルイも呆然としてっし!
 
「大穴、どこに開いてたんだよ?!」
「……森の中」
「誰かの敷地か?!」
「魔法省の管轄の敷地」
「じゃあ、ルイの実家の屋敷、そこに移してくれよ!」
「はあ?!」
「?!」
 
 ルイ、はあ?! じゃねぇって! ルイの言動一つでカエデさんは涙目になんだぞ。それに、この流れで行くとさ、オレとルイの血筋って、大穴管理人にされそうじゃねぇか。だったら! あの、大量にルイの部屋がある実家の屋敷、移してそこで生活した方が良いだろうよ。
 
「待ってよ、サクヤ。両親が許さないよ」
「そんなわけあるか! クレハさんとカエデさんだったら、喜んで許可くれるって」
「どうして、その発想になるの?!」
「そんなもん、二人が大穴の話ししたときに、カエデさんの表情でこの発想だ!」
 
 あの二人、基本的にあんまり屋敷にいなさそうだしさ。で、ルイが大穴の屋敷に住むとなると、実家の屋敷、最終的には無人になるんじゃねぇの?
 
 オレとルイの掛け合いに、篭ったような笑い声が入り込んできた。ルイと二人で声の出所に視線を向ける。口に右手を当てて、腹を抱えて笑ってるのはカイトさん。なんでだ?
 
「おかしい要素なんてありましたか?」
 
 ルイが若干、不機嫌になる。
 
「いや、彼はルイに必要な人なんだと、改めて思ったよ」
 
 そんなに涙目になるくらいおかしいか?
 
「彼の言い分もわかるし、掛け合ってみるよ。要は、大穴の近くで生活をしてもらって、門の狼達を監視役にしてもらいたいってだけだからね」
「……」
 
 ルイは不満顔だ。
 
「短い期間で感情豊かになった。あいつらには私から打診した方が良いか?」
「オレからする。ルイは不貞腐れたみてぇだし」
「不貞腐れてないけど」
「その態度、不貞腐れた以外の言葉があるかよ」
 
 ルイのやつ、プイッとそっぽ向いて、腕に抱きかかえていたギンをギュッと抱き締めた。かなり力が強かったんだろうな。ギンが目を覚まして暴れてっし。うん。まだ、感情的に初等部高学年あたりだな。仕方ねぇけど。
 
 魔法省の入り口までカイトさんに送ってもらう。当然、その間、ルイは完全にオレ達を無視だ。へそ曲げたな。
 
「正確に決まったら連絡しよう」
「お願いします」
 
 オレはカイトさんに頭を下げた。
 
「ほら、ルイも!」
 
 オレを見下ろして、ルイは少し躊躇う。感情は子供でも、体は大人だからな。バランスがまだまだだ。
 
「無理はしなくていい。今度は大人になったルイに会いたいもんだな」
「私は大人のつもりですが」
 
 ルイ、それが大人じゃない態度なんだって。
 
「体はな。まだ、学生なんだし、たくさん学ぶといい。勉強じゃなくて、他のことだ。ルイに知識の勉強は必要ないからな。彼にちゃんと教わるんだ。そうすれば、両親の心情が本当に理解できる」
 
 カイトさんはルイを理解してるんだな。だから、こんな態度を取られても不快感を表してねぇし。それどころか、完全に親の顔してる。伊達に育てたわけじゃねぇんだな。こうなるって分かってたんだろうけど。
 
「気を付けて帰るだよ。まあ、魔法で飛んでいくんだろうし、間違いが起こるはずもないが」
 
 改めて頭を下げた。そのとき、ルイもオレに倣うように頭を下げる。ルイはちゃんと分かってる。まだ、チグハグだけどさ。オレは指を鳴らして杖を出した。ルイも出そうとしたけど、それを制して、手を握る。呪文を唱えて、杖を振った。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...