銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

139 事実は真実より……?

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 次の休み、宣言通りに店に行ったオレとルイ。注文しなくても出てきた料理は、店で食べるようなものじゃない。一般家庭の味って感じの、素朴な味わいのシチュー。さすがにパンはここの店のだけど、これ、飽きない味だな。ほっこりする。
 
「シロガネに聞いたんだけど」
 
 カエデさんがオレ達が食べ終わるのを見計らったかのように姿を見せた。今日のシチューはクレハさん作だったらしい。理由は去年の夏にカエデさんの料理をオレ達が食べたから。まあ、カエデさんって言うか、ルイとの合作だよな。
 
「なに?」
 
 ルイは若干、ぎこちないけど、前よりマシだよな。
 
「サクヤの実家のエッグタルト。ルイは作り方を知ってるの?」
「……一緒に作ったからね。覚えてっ……っ!」
 
 いきなりルイの両手を取ったカエデさん。かなり前のめりにルイの顔を覗き込んだ。
 
「教えて!」
「はい?」
「どうやっても、あの、素朴な感じが表現できない!」
 
 素朴って。それ、褒め言葉なのか?
 
「……どうして?」
 
 ルイは完全に困惑してる。
 
「何度試作を重ねても、再現できないんだ」
 
 シュンっとなったカエデさん。なんでも、一般家庭で作られるものの利点は、飽きないことなんだとか。確かに、母さんのエッグタルトって、毎回味は変わらないんだけどさ、飽きねぇよな。
 
 ルイは小さく溜め息。この親子。カエデさんが若干、落ち着きがないから、ルイの方が年上に感じる時があるんだよな。しかも、ここ数ヶ月でルイの幼児性も抜けてきてるから、尚更かもしんねぇけどさ。
 
「年末の休みに教えるよ。それで問題は?」
「ないよ! ありがとう。絶対、常連さんも喜んでくれると思うんだ」
 
 わあ、いつ見ても可愛いんだよな。色合いはルイと変わらねぇけど(瞳の色が違うけどさ)、雰囲気がまるで別物。
 
「それでね。シロガネさんに話があるんだけど」
「シロガネに?」
「そう。卵について」
 
 ルイはそこまで言ってから、口を噤んで、思案顔を見せた。どうしたんだ?
 
「ねぇ? 私達が卵は簡易的だって言ったの覚えてる?」
「覚えてるけど? どうかしたの?」
「そのこと、私達が口にするまで知らなかったの?」
「知らないよ。魔法省から渡される卵に疑問を持ってる魔法使いはいないと思うよ」
 
 つまり、今の今まで秘密にしてたってことだ。
 
「もう一つ。卵を作る魔法使いは特定の人だったの?」
「当たり前でしょう? 魔力の強い魔法使いは大抵、その血筋で仕事が決まってる場合が多いから。私とクレハは特殊だよ。それを言ったら、クチバとシロガネも特殊だけど」
 
 そうか。だから、狩人だったクレハさんとカエデさんは、辞めるって発想にならなかったのか。
 
「ただ、その魔法使いにあったことはない?」
「そうだけど」
「じゃあ、シロガネさんとクチバさんが仕事を辞めた理由は?」
「……あ、それは」
「知ってるのか?」
 
 オレは身を乗り出してカエデさんに問い掛けた。
 
「言ってもいいのかな?」
「何があったの?」
 
 カエデさんが少し躊躇いを見せる。なにかが、あったんだな。
 
「卵にお互いの遺伝情報を入れて、いくらも経たないうちに風が起こったって。気が付いたら卵が消えたみたいで」
 
 ……それ、どう言うことだよ?
 
「シロガネが半狂乱になって、手がつけられなくなったんだ。仕事どころじゃなくて。目の前で起こったから、クチバも気が動転したみたいなんだけど、シロガネが酷い状態になったから、逆に冷静でいられたって」
 
 オレとルイは顔を見合わせた。それで仕事を辞めたのか。いや、辞めざるえなかったんだ。じゃあ、卵はどうなったんだ?
 
 
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