銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
164 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

164 呼び出し

しおりを挟む
 寮に帰ると部屋の中で喚いている声が一つ。まあ、考えなくても分かるんだけどさ。で、ウィルの爺ちゃんはリッカについてった。リッカは嫌そうに眉を顰めたけど、コウガが楽しそうに許可してたんだよな。
 
 リッカは鍵の一族で、精霊や妖精の加護が得られると、何かと便利なんだとか。まあ、リッカとウィルの爺ちゃんは噛み合ってねぇからなぁ。大丈夫かな?
 
 ルイは喚き声の場所まで無言で歩き、指を鳴らして杖を出すと無言で振った。待て、声出さなくても魔法が使えるのかよ? しかも、使った魔法がかなりえげつなくないか? 霊体にぐるぐる縄のようなものが巻き付いてる。しかも口にはガムテープのようなもの。容赦なく目も隠してやがる。怒りは収まってねぇのか……。
 
「なに?」
「ここまでしなくてもいいんじゃね?」
「緩いよ。サクヤを狙うなんてとんでもない」
 
 オレ、人の恨みを買うような行動は絶対とらねぇ。そんなことして窮地に立ったら、ルイがなにするか分からねえ!
 
 学年末のテストが終わって(なんとか一般教養はギリギリでクリアした!)、冷たい空気が緩んでいく。卵の魔法使いが閉じ込められていた場所は季節感が全くなかったんだけど、冬なんだよな。おそらく、あいつの魔力で季節そのものが固定されてたんだろうな。春は目の前で、でも、標高が高い位置に学校があるから、なかなか寒さが抜けねぇ。
 
 同じベッドで眠るのにも慣れたから、寒いと人肌ってあったかいんだよな。逆に夏は辛いんだけど、ここはあまり暑くならないから助かってる。
 
 朝目が覚めて、ベッドの上でボーッと座っていたら、ルイが慌てたようにオレに服を着るように言ってきた。なんでだよ。逆らうと怖いから素直に着るけどさ。
 
「着替えた?」
「着替えたけど?」
 
 どうして、卵の魔法使いの一族の魂の入った瓶と、あの煩い霊体の入ってる籠を持ってんだよ? よく見るとルイの右肩に小鳥の姿。左肩にクレナイ。ルイはいつものようにオレの頭にベニを乗せる。そして、キンとギンを抱きかかえるように言ってきた。
 
「連絡が来たんだ。要求していたものを捕獲できたのかって」
「それって」
「前と違って急には召喚されなかったんだよ」
 
 確かに急に召喚されて、折角、捕らえた魂を持っていかないのは間抜けだ。
 
「今回はさすがに行方不明になるわけにはいかないし、学校側と私の両親には連絡したよ。魔法省の方には両親から話してもらうから」
「前は一週間だもんな」
「そう、今回はそれだけじゃ済まないだろうし」
 
 一般教養、どうしてくれんだよ。なんとか進級はできたけどさ。また、ついていけなくなったらどうすんだよ?
 
「勉強は私が遅れた分を教えてあげるから」
「……お願いします」
 
 本当に泣きたくなる。オレは学生で社会人じゃねぇんだけど。生徒らしい生活から、遠去かってってるだろう!
 
 キンとギンを持ち上げて、きちんと抱えた。
 
「二匹もこのサイズは見納めかもね」
 
 ルイはそう言うとギンの頭を軽く撫でた。キンはジッとルイを見上げたけど、主じゃないからか主張はしなかった。でも、撫でて欲しかったんだろうな。ルイもそれが分かったのか苦笑い。少し乱暴にルイがキンの頭を撫でる。驚いたように耳をパシパシと動かすし。
 
「ガウ」
 
 抗議してるんじゃないところが笑える。
 
「どうやって移動すんだよ。あの場所、分らねぇだろう?」
『安心しろ。私が運んでやる』
 
 この、なんとも偉そうな物言いは、何処から聞こえてくるんだ?
 
『ユグドラシルの庭に』
 
 ルイの右肩の小鳥が喋ってる、そう気が付いたときには、視界は白色に染まっていた。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...