銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

194 デザートローズ

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 副会長の治療をして、体を清めてから、本来の寮の部屋の寝室のベッドの上に寝かせた。セイト曰く、傷口を魔法で癒しても、完全に癒したわけではないらしい。出血が止まって、見た目はなんともなくても、体を傷つけたことに変わりはない。数日安静にしてねぇと駄目だって、副会長は釘を刺されてた。
 
 一時間してオレとルイの部屋にトウヤに伴われてユエが来た。なんとか床に広がっていた血は妖精二人で片付けてはくれたけど、臭いまではどうすることもできない。
 
「……この臭い……」
 
 ユエの顔から血の気が引いていくのがはっきりと分かる。ルイは小さく息を吐き出した。
 
「落ち着いて聞いてくれる?」
「会長……」
 
 ユエが何かを察したように顔を歪めた。
 
「そんなに悲観的に考えないで。ライカが戻って来たよ。怪我と疲れで今は休んでるだけだから」
 
 怪我、の言葉に瞳に浮かんだのは涙。泣き出しそうなその顔にオレは駆け寄る。
 
「怪我はオレと委員長で治したからさ。本当に疲れで休んでるだけだって。ルイもユエが泣き出すの分かってっから、処置してから会わせようとしたんだって」
「……本当に大丈夫なの?」
「循環の魔法は生きているでしょう? もし儚くなっていたなら、私達よりユエの方が分かるはずだよ」
 
 ルイの言葉にユエは、はっ、となったように見えた。
 
「命の炎が消えれば、魔法も消えるんだよ。おいで」
 
 ルイはユエを促して隣の部屋に移動した。ユエと共にオレ、セイトと風紀委員長もついて行く。副会長とユエの部屋に移動し、寝室に足を踏み入れる。ベッドに沈んでいる体に、更に顔を歪めたユエだったけど、息をしていることに気がつくと、副会長の元に駆け出してた。
 
「ライカ……。息して……。よかっ……」
 
 ボロボロと泣きだしたユエは、声を上げることはなかった。最近のユエを見ていたら大泣きすると思ってた。スッと差し出された手がユエの頬を撫でる。あ……、寝てなかったのかよ。
 
「なに泣いてるの? ユエを一人残して逝くわけがないでしょう?」
「だって、凄い血の臭い」
「無傷じゃなかったからね……。でも、みんなが助けてくれた。治療も受けたし、大丈夫だよ」
 
 ゆっくり近付いたルイが副会長を見下ろす。
 
「絶対安静だけど、一つ訊いていい? 心臓はどうしたの?」
 
 副会長がルイを見上げ、小さく頷くと指を鳴らし杖を出した。何かを呟き、杖を振ると副会長の足元に人の頭程もある大きな物体が現れる。布に包まれたそれが、大きな力を持ってるってすぐに分かった。
 
「開けても?」
「いいよ。依頼主は魔法大臣だけど、本当に必要なのはルイとサクヤでしょう?」
 
 ルイは慎重に布を解いた。現れたのは綺麗な紅色の石? ドラゴンの心臓だろう?!
 
「見たことはないけど、本当に石化するんだね」
「俺も取り出して本当に石化したときは驚いたよ。知識として知ってはいたけどね」
 
 花のような形に見えるそれは、例えるなら薔薇の花に近い。微かな光すら反射するそれは、命の色を映し綺麗だった。
 
「あれ?」
 
 ルイはドラゴンの心臓とは違う場所に視線を向ける。
 
「布に包んできたのは心臓だけ?」
「当たり前でしょう? ドラゴンに説明したときに、心臓だけだと説明したし、約束を違えるつもりはないよ」
 
 副会長がきっぱりと言い切る。
 
「そのドラゴンは本当にライカを気に入ってたんだね」
 
 ルイが何かを拾い上げ、副会長に見えるように掲げた。持っていたのは人の掌ほどもある半透明の鱗。副会長は驚いたように体を起こした。
 
「ドラゴンの鱗、それも、これは大切な場所にある鱗だよ。これは持つ者に護りを与えるんだ。ドラゴンが本当に認めた者に譲り渡すっていうのは聞いてたけどね」
 
 ルイはドラゴンの鱗を副会長に手渡した。それを受け取った副会長の頬を一筋の涙が伝った。
 
 
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