銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
225 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

225 卵は危険物

しおりを挟む
 三つの卵の中で一番最後に卵に遺伝情報を入れたクレハさんとカエデさんの卵。クチバさんとシロガネさんの卵は予兆はあるものの、二日経っても卵が割れる気配がない。
 
「名前は決めたの?」
 
 ルイが生まれた妹の頬を突きながら問い掛ける。
 
「ツバキ(椿)にしようかと誕生前から二人で話していた」
 
 クレハさんの言葉にルイが顔を上げた。今の季節は冬だ。椿は冬に咲く。
 
「いいと思うよ」
 
 ルイはそう言うと、ツバキと名付けられた妹を抱き上げた。実は両親より兄の方が妹にメロメロだとオレは思う。
 
「だだね。問題があるんだけど」
 
 カエデさんが小さく溜め息を吐いた。困ったこと?
 
「私の一族も、クレハの一族も、女児を育てたことがないんだ。もしかしたら、正常だった時は孵化していたのかもしれないけど」
 
 そうか。母さんに訊いてみようか。少なくとも、母さんは女性なんだし。魔法使いだろうが、魔力を持たない人だろうが、赤ちゃんの育て方なんて違いはないんだろうし。
 
「私とクチバもそうよ。もし、女の子だったらお手上げね」
 
 まだ、孵化していない二人の卵。もし、女児だったらって心配をしてる。
 
「母さんに訊いてみようか?」
「サクヤの?」
「そう。少なくとも母さんは性別が女だし。それに、両親の婆ちゃんはまだ健在だし。赤ちゃんなんて魔力持ってようが持ってなかろうが変わらねぇだろう?」
 
 それに、オレを育てた強者だから、魔力の回避方法も知ってんだろうし。
 
「頼めるの?」
「喜んで乗り込んでくると思うけど」
 
 ベニに手紙を託した。育て方は変わらないと思う。ただ、問題がここにいる二組の夫婦はまともに子育てをしていないってことだ。ルイを実質育てたのはカイトさんだしさ。
 
 ツバキをあやしながら、そんな話をしていると耳に入った何かが割れるような音。慌ててもう一つの卵に視線を向ければ、盛大に卵が割れた。……、待てよ。卵ってみんなこんなに思いっきり割れるものなのか? シロガネさんが慌てて卵の側に駆け寄る。程なくして上がった泣き声。抱き上げた赤ちゃんにシロガネさんが固まる。どうしたんだ?
 
「この子、女の子だわ」
 
 はあ?! カエデさんが慌ててお包みで赤ちゃんを包んだ。
 
「どう言うことだ?」
 
 クレハさんがオレとルイに視線を向けて、問い掛けてきた。
 
「分からねぇ」
 
 担任のところの卵から孵化する子の性別がもし女の子だったら、何か関係があるとは思う。でも、もし男の子だったら、それは偶然、同じ性別だったってことだ。それと、コウガの祖先の遺伝子を持つ卵。その二つを確認しねぇとな。
 
 あとは、徐々に渡し始めてる卵から孵化する子の性別もだ。女の魔法使いの夫婦にも渡したから、そっちの確認もしてみねぇと。
 
「偶然だと思うけどね」
『当たり前よ。偶然その性別だったってことよ』
 
 火の精霊が笑いながら言い切る。
 
『不完全ではないからな。孵化も高性能の卵のおかげで、親が手を貸さなくても割れるだろう』
 
 待てよ。つまりだ。どの卵も魔力の強さ関係なく、盛大に割れるのか。それ、注意事項として伝えておかねぇと危険だろう?! 高い場所から落としても割れない卵の殻が、内側から爆発したように割れるんだぞ?!
 
「これ、卵を渡す時に、孵化の兆しがあったら、結界を張っておかないと怪我するね」
 
 ルイが困ったように呟く。そうだよ。子供が孵化すると同時に、親が怪我を負いかねない。きちんと通達しないと別の問題が浮上するじゃねぇか。
 
「魔法大臣に知らせるよ。大切なことだし」
 
 ルイの言葉に、みんなが頷いた。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

苗床になった元騎士

鵜飼かいゆ
BL
引退した元騎士の老人が触手に寄生されて若返って苗床になるラブラブハッピーエンド話です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...