銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
250 / 281
銀の鳥籠SS

008 モダモダ?

しおりを挟む
■読んでくださっていた方からのリクエスト。サクヤの家に出入りするようになった後のユエ。仲良くするふたりを眺めて妬く攻め様二人。その心境は?
 
 
 
「面白くないね」
 
 そう呟いたのはライカ。全く、私も同感なんだけど。なにが面白くないかといえば、目の前の光景。今年、孵化させた卵は五つ。五年毎に同じ数の卵を孵化させて、育てていくことが魔法省で決定し、移動させた館で育て始めたんだけど。そうなると、禁書庫勤務は私の仕事で、子供を育てる方の仕事はサクヤが担当することになる。そのことに対する不満はないんだけど。
 
「うん。面白くない」
 
 ライカの言葉に同意した。とは言え、この二人が仲が良いのは今に始まったことじゃない。問題は、コウガとリッカが今日は休みだということ。その関係で、禁書庫の方を休みにして私もこっちに来たんだけど。なぜか今日はライカもユエと一緒に来たんだ。
 
「仕事は?」
「区切りがついたんだよ。ああ、水晶は他の採集をしている時に見付けたら持ってくるから。足りないでしょう?」
「できれば外にも置きたいからね」
 
 話している内容は実に穏やか。でも内心はかなり複雑。
 
「赤子をあやしているユエは最高に可愛いけどね。そこでどうしてサクヤとはにかみながら笑ってるの?」
 
  これは嫉妬だね。そういう私も大差ないけど。一部屋に用意された五つのベビーベッド。甲斐甲斐しく世話を焼く二人。合間に楽しそうに会話をしていて、その様子が私達を嫉妬させてるって本人達に自覚がないんだと思う。
 
「まあ、赤ちゃんの話をしてると思うけど」
「そんなのは分かってるよ。まず、仲が良すぎる」
 
 唸るように言い切ったライカ。私もだけどライカの独占欲の強さにも、心配性なのも困ったもんだよね。ユエが引きこもりのようになった理由は確実にライカが原因。とは言っても、そんなに顔近づけてなに話してるの?! 顔近い!  顔近いから!
 
「これは神経が擦り切れるね」
 
 溜め息吐くしかない。そこにひょこひょこ現れた妖精数人。魔法省側から派遣されたこの屋敷の手入れから、赤子の食事、世話一般を任された存在。サクヤはツバキを実質育てた経験があるから、手付きに危な気がない。逆にユエはまだ、おっかなびっくり。赤子って寝てる時はクタッとしてかなりの重さ。起きてると体に力が入ってるから軽くは感じても動き回る。元気なのは良いんだけどね。やっぱり、二人の距離が近過ぎる!
 
「同感だね。二人がどうこうなるとは考えてないし、考えたくもないけど。視覚的にやられるね」
「まあ、ユエに関しては、ライカが過保護にしすぎて引きこもり気味だったでしょう? 反動もあると思うよ」
 
 それに慣れてたユエにも問題があるけどね。
 
「当たり前でしょう?! あんなに可愛いのに、一人で外に出して攫われたらどうしてくれるの?!」
 
 どうしてくれるの?! って言われてもね。
 
「サクヤはあの人を封印した関係で、逆に誰も寄ってこなくなったでしょう?! 安全安心を確保したルイに言われたくないね」
 
 確かに、サクヤに手を出そうとする不埒者はいなくなったけど、心配は心配なんだよ。サクヤは無鉄砲が服着て歩いてるんだし。
 
「俺に言わせたら、ここで二人でモダモダしてる暇があるなら、手伝ったらどうだ? ほら、一斉に泣き始めたぞ。ああなると、互いに刺激しあってなかなか泣き止まない」
 
 背後から掛かった声に顔を向ければ、なぜか父さんの姿。あれ? 仕事は?
 
「仕事は今日は休みだ。後でカエデも来るし、クチバとシロガネも来る。猫の手も借りたいんだ。さっさと動け」
 
 あ、顔色読まれた。言ってることは分かるけど、二人を愛でてたのにね。まあ、愛でて神経すり減らしてたら意味ないけど。
 
「動こうか」
「そうだね。逆らうと怖そうだし」
「ああ、魔法省に給料請求しようか?」
「俺の分のこと? 必要ないよ。他でたんまり貰ってるから」
 
 そうだろうね。水晶代、せいぜいふんだくってよね。半分、腹いせだけど。
 
 
終わり。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...