267 / 281
銀の鳥籠Ⅱ マシロ&アサギ編
002 先手を……。
しおりを挟む
俺は淀みない足取りである部屋を目指した。広い魔法学校の中にある教師の部屋だ。高等部の特Aクラスの担任だけど、両親の関係で他の中等部の奴等よりは面識があると思う。俺の後ろをアサギが必死で付いてきた。
「本当に話すの?!」
「当たり前。少し、気になる事もある」
ただ単にアサギを俺から引き離す事を目的にしているなら問題ない。いや、問題はありまくりだけど。もし、あの場所関係での牽制なら大問題だ。
長い廊下を歩き、階段を三階分登り、更に廊下を歩いて、階段を四階分降りる。正に面倒な道程。更に廊下を歩いて見えて来た扉。
「今回はどうしてこんなに複雑なの」
アサギは完全に根を上げていた。つまり、誰にも来てもらいたくなかった。だからの遠さだ。時々、魔法使いの面倒さに辟易する。でも、俺の方が魔力が上だから、時間はかかっても絶対に目的地につける。
いきなり開いた扉に、不機嫌を顔に貼り付けた男が一人。高等部特Aクラスの担任で、実践系の魔法を教えてるアサイ先生だ。茶の髪と茶の瞳。象牙色の肌。何でも、両親に振り回された一人らしい。
「諦めないのはなんでだ?」
「用事があるからに決まってんでしょう」
「……俺は高等部の教師だ」
「それもしっかり分かってます」
淀みなく答える俺に、アサイ先生は肩を落とした。
「まあ、いい。入れ。お前もだ」
アサイ先生はしっかりアサギにも声を掛けてくれた。そうしないとこの部屋入れないからな。
「いつ来ても閑散としてる部屋」
この部屋、本当に物が少ない。備え付けの家具と、授業をする時に生徒が使う机と椅子。奥には教師が使う大きな机と椅子、黒板がある。物が殆どない。凄い部屋は物で溢れて、席に辿り着くまで大変な場合もあるから。この部屋のスッキリさには吃驚だ。
「そんな事を言いに来たのか?」
「そんな訳ないでしょうに。揶揄う為だけに、面倒な道程、歩く訳ないでしょう」
「……はあ、で?」
「まだ中等部だけど、アサギに求愛するんで」
淀みなく言った俺に、アサイ先生は不思議な顔はしなかった。何、当たり前の事を言ってんだ、って顔だ。
「それと、ちょっと問題が」
「問題?」
「アサギに良からぬ事を吹き込んだ奴が、あの場所に興味を持ってるんじゃないかって」
俺の言葉に、アサイ先生の眉間に皺が寄る。
「どうして、その結論に達した?」
「まず、俺の魔力に合う奴なんてそうそういない。にも関わらず、囲ってる俺からアサギを引き離そうとした。まあ、母さんとユエさんみたいに、隠れの魔力持ちならまた、話は変わるけど。そんな魔法使い、ホイホイいる訳ないし」
そして、生徒会役員の中で、俺の魔力に合うのはアサギだけだ。それは初等部、高等部合わせて。予備軍にもいないし、今、あの場所で育てられてる子達にもいない。
「あの場所は色んなものを引き込む性質があるし。万が一、変な輩が入り込んで変な能力を発現させでもしたら大変な事態だ」
一応、両親の血筋はあの場所はスルーで入れる。だから、俺も簡単に入り込める。逆にあの場所で育っても、血筋に刻まれていなければ特殊なパスを持つか、パスを持った者に引き入れてもらわないと駄目だ。祖父母もあの結界が張られた時にその場に居たから入れるけど、叔母のツバキは入れない。それだけ、厳重だ。厳重だけど、入れない訳ではない。
「あの場所は特殊な結界が張られてる。鍵の魔法使いが囲ってる場所だぞ」
「だって。多分、両親と俺なら血の中に鍵が無くても入り込めるよ。簡単にね」
「それはお前の一族だけだ」
「そうなんだけど。やろうと思えばどんな手を使ったって目的を遂げるよね。魔法使いなんだから」
アサイ先生は目を見開く。問題は、俺が中等部に入って、後数年で高等部に上がる。俺とアサギは誕生日が一緒だから、すぐ求愛して手篭めにする予定だ。だから、このタイミングでアサギに良からぬ事を吹き込んだんだ。
「両親には?」
「これから知らせるよ。結界を強化してもらわないと」
今まで平和だったのに。嫌な予感がするし、絶対に何かが起こる。確信に近いのが嫌なんだけどね。
「本当に話すの?!」
「当たり前。少し、気になる事もある」
ただ単にアサギを俺から引き離す事を目的にしているなら問題ない。いや、問題はありまくりだけど。もし、あの場所関係での牽制なら大問題だ。
長い廊下を歩き、階段を三階分登り、更に廊下を歩いて、階段を四階分降りる。正に面倒な道程。更に廊下を歩いて見えて来た扉。
「今回はどうしてこんなに複雑なの」
アサギは完全に根を上げていた。つまり、誰にも来てもらいたくなかった。だからの遠さだ。時々、魔法使いの面倒さに辟易する。でも、俺の方が魔力が上だから、時間はかかっても絶対に目的地につける。
いきなり開いた扉に、不機嫌を顔に貼り付けた男が一人。高等部特Aクラスの担任で、実践系の魔法を教えてるアサイ先生だ。茶の髪と茶の瞳。象牙色の肌。何でも、両親に振り回された一人らしい。
「諦めないのはなんでだ?」
「用事があるからに決まってんでしょう」
「……俺は高等部の教師だ」
「それもしっかり分かってます」
淀みなく答える俺に、アサイ先生は肩を落とした。
「まあ、いい。入れ。お前もだ」
アサイ先生はしっかりアサギにも声を掛けてくれた。そうしないとこの部屋入れないからな。
「いつ来ても閑散としてる部屋」
この部屋、本当に物が少ない。備え付けの家具と、授業をする時に生徒が使う机と椅子。奥には教師が使う大きな机と椅子、黒板がある。物が殆どない。凄い部屋は物で溢れて、席に辿り着くまで大変な場合もあるから。この部屋のスッキリさには吃驚だ。
「そんな事を言いに来たのか?」
「そんな訳ないでしょうに。揶揄う為だけに、面倒な道程、歩く訳ないでしょう」
「……はあ、で?」
「まだ中等部だけど、アサギに求愛するんで」
淀みなく言った俺に、アサイ先生は不思議な顔はしなかった。何、当たり前の事を言ってんだ、って顔だ。
「それと、ちょっと問題が」
「問題?」
「アサギに良からぬ事を吹き込んだ奴が、あの場所に興味を持ってるんじゃないかって」
俺の言葉に、アサイ先生の眉間に皺が寄る。
「どうして、その結論に達した?」
「まず、俺の魔力に合う奴なんてそうそういない。にも関わらず、囲ってる俺からアサギを引き離そうとした。まあ、母さんとユエさんみたいに、隠れの魔力持ちならまた、話は変わるけど。そんな魔法使い、ホイホイいる訳ないし」
そして、生徒会役員の中で、俺の魔力に合うのはアサギだけだ。それは初等部、高等部合わせて。予備軍にもいないし、今、あの場所で育てられてる子達にもいない。
「あの場所は色んなものを引き込む性質があるし。万が一、変な輩が入り込んで変な能力を発現させでもしたら大変な事態だ」
一応、両親の血筋はあの場所はスルーで入れる。だから、俺も簡単に入り込める。逆にあの場所で育っても、血筋に刻まれていなければ特殊なパスを持つか、パスを持った者に引き入れてもらわないと駄目だ。祖父母もあの結界が張られた時にその場に居たから入れるけど、叔母のツバキは入れない。それだけ、厳重だ。厳重だけど、入れない訳ではない。
「あの場所は特殊な結界が張られてる。鍵の魔法使いが囲ってる場所だぞ」
「だって。多分、両親と俺なら血の中に鍵が無くても入り込めるよ。簡単にね」
「それはお前の一族だけだ」
「そうなんだけど。やろうと思えばどんな手を使ったって目的を遂げるよね。魔法使いなんだから」
アサイ先生は目を見開く。問題は、俺が中等部に入って、後数年で高等部に上がる。俺とアサギは誕生日が一緒だから、すぐ求愛して手篭めにする予定だ。だから、このタイミングでアサギに良からぬ事を吹き込んだんだ。
「両親には?」
「これから知らせるよ。結界を強化してもらわないと」
今まで平和だったのに。嫌な予感がするし、絶対に何かが起こる。確信に近いのが嫌なんだけどね。
10
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
神官姫と最強最弱の王
深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。
隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。
※週一回 マイペース更新
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる