銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
272 / 281
銀の鳥籠Ⅱ マシロ&アサギ編

007 囲いと卵

しおりを挟む
 精霊王を見送って、自宅に戻る。この時間、本来なら母さんは子供を育てる為にある場所にいる。敷地内ではあるんだけど。
 
 母さんは俺を見ると少し目を見開いて、駆け寄って来た。そして、傷付いている頰に触れる。その時にスッと何かが頰から消えた。あれか。まさか……。
 
「全く。少しは気を付けろ」
 
 やっぱり、あの傷。ただの傷じゃなかったのか。母さんの浄化力は魔法使い一だからな。母さんは黒髪黒瞳、象牙色の肌。今は若干育った感じだけど、見た目が本当に若い。本人は否定してるけど、叔母のツバキより確実に見た目は若い。でもって、言葉使いが悪い。俺の言葉が微妙なのは確実に母さんのせいだ。でも、教師にはそこそこ、敬語は使える。母さんは出来ないけど。
 
「ベニを貸してくれる?」
「ベニが納得すれば問題ねえ」
「 二人に卵を作って貰うから。その後の作業もね」
 
 それを聞いた母さんの頭の上を陣取ってた火の鳥。見た目は雛なんだけど。ぽってり感は雛とはかなり違う。そのベニが一鳴きすると元のサイズに戻りアサギの左肩に鎮座。ベニは伸縮自在なんだ。つまり、俺がクレナイか。クレナイはベニの母親で、サイズは変わらない。
 
 何処からともなくやってきた魔狼のキンとギン。キンは体毛が金色で瞳が水色。ギンは体毛が銀色で瞳が薄い紫。元冥界の門の番人の眷属。今は妖魔界との穴の上にある門の番人をしてる。何でも母さんの魔力の影響で冥界に帰れなかったんだとか。母さんの持つ浄化力は半端じゃないから。
 
 父さんに促されて、卵を作る建物内に移動する。移動する時に外は通らない。魔法省にあるエレベーターと同じ原理で繋がってる。唯一違うのは、生活している屋敷と、子供達を育てている建物の地下が、繋がっていることだ。
 
「クレナイはマシロだよ。ベニはアサギに呪文を教えて」
「キュウ!」
 
 いきなりの事態に、アサギが若干、挙動不審だ。本来使い魔は、主人でない魔法使いに意思疎通は出来ない。呪文もだ。でも、クレナイとベニは聖獣だ。だから、それも可能だと父さんと母さんは俺で知ることになったんだ。
 
「本当に僕がするの?」
「当たり前だろう。実は父さんと母さんは仕事が多くて。俺がどちらかの代わりをしてたんだけど」
 
 そうなんだよな。二人は無理してたんだよな。役職が多すぎなんだ。兄弟もいるけど。まだまだ幼い。でも俺は、父さんの魔力の変な能力は引き継いでる。つまりは、一族の家業にする為の能力だよな。禁書を読めて、尚且つ、間違った箇所を訂正する。大変な仕事だ。母さんも時々してる。
 
「魔法省の方でアサギの銀行口座をうちの銀行口座に変える手続きがされたよ。これが新しい鍵」
 
 アサギは驚いたように父さんを見上げる。それは、今日で一族を離れるという事だ。アサギは小さく息を呑み、元々持っていた銀行の鍵である指輪を外して父さんに渡した。そして、新しい鍵を元の場所に嵌ると魔法で隠した。
 
「早いと思うかもしれないけど、種を宿した以上、仕方ないんだ」
「はい」
「勿論、今まで通り向こうの実家に帰るのは問題ないよ。ライカとも話してるからね」
 
 アサギは納得したように頷く。精霊王に会ってるし。後には引けないと分かってるんだろうけど。
 
「採集の仕事だけど、今まで通りしてもらって構わないから。ただ、此方の仕事で魔法省から給料が支払われる。それは認識しておいて」
「はい」
「それと、おそらくだけど、マシロと循環の魔法を使うと種の影響で知識を共有すると思う。卒業後は禁書庫の勤務と卵の魔法使いとしての仕事があると思って。他の時間を採集の仕事に当ててもらえたら問題ないから」
 
 うわ。もう囲った形になるんだ。
 
「マシロは少し過激な行動は……」
「父さんに言われたくない。入学した後、どれだけ聞かされたと思ってるの?」
 
 俺が反撃すると父さんが肩を落とした。自分を棚上げするのは問題だと思うよ。
 
「それで今日は何個?」
「三つだよ。その後、魔法省の方で遺伝子投入の儀式。魔法省の方には連絡済みだから」
「分かった」
 
 俺はアサギの腕を取って、建物の中心に足を向ける。視線をベニに向けると、分かっていると一鳴きした。俺の左肩に鎮座したクレナイも一鳴き。そして、キンはアサギに、ギンは俺の足元に落ち着く。
 
「杖出して」
「うん」
 
 俺とアサギは深呼吸すると魔法の詠唱を開始する。父さんと母さんと作る時と感覚が若干違う。でも、馴染んだ感じだ。不思議だけど。
 
 展開される魔法陣。二つの魔法陣に重なるように中央に小さい魔法陣が現れる。体の中にある種が干渉を開始する。何時もと同じだ。
 
 中央の魔法陣に三つの力の塊。二人で杖を振ると鶏の卵に似た姿が現れる。それを、籐の籠で受け止めた。アサギはそれを驚いたように見詰める。そして、ベニは父さんの頭の上で、ポンっと音がしそうな勢いで、いつものサイズに変わった。クレナイも父さんの左肩に移動する。
 
 ベニは母さんがいないと父さんの頭の上に鎮座するようになったんだよ。多分、母さんの近くに行くとそっちに移動するんだろうけど。
 
「こんな風に作られてるんだ」
 
 アサギは俺に近付いて来て感動してる。
 
「これで終わりじゃない。父さん、魔法省に行ってくる」
「頼んだよ。今日は三組だけど、アサギが慣れ始めたら、二人に完全に頼むから」
「分かった」
 
 父さんはそう言うと、二羽の火の鳥と二匹の魔獣を連れて出て行った。禁書庫の仕事に戻ったんだ。父さんのその姿を二人で見送った。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...