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プロローグ
平凡な命の終焉と、新たな世界の幕開け
しおりを挟む俺の名前は織田悠真(おだ ゆうま)。ごくごく普通の、どこにでもいる27歳のサラリーマンだ。
今日も残業で疲れ果て、夜空に煌めく星も見えない都会の喧騒の中、一人とぼとぼと家路を辿っていた。
疲労困憊の頭で、ふと高校時代の淡い恋を思い出す。クラスのマドンナに告白して、あっさりフラれた苦い思い出。そんな昔話を思い出し、自嘲気味に笑みを浮かべた、その時だった。
「キキーッ!」
けたたましいブレーキ音が背後から響き渡り、反射的に振り返った俺の視界を、強烈なヘッドライトの光が貫いた。
その瞬間、体は宙に浮き、激しい衝撃が全身を襲う。何が起きたのか理解する間もなく、視界は真っ白に染まり、俺の意識は深い闇の中へと沈んでいった。
次に意識が浮上した時、俺は柔らかなベッドの上にいた。
「ん……?」
ぼやける視界の中、天井を見上げると、そこには見慣れない豪華なシャンデリアが輝いている。
まるで中世ヨーロッパの城のような、荘厳な部屋。一体、ここはどこだ? そして、俺はなぜこんな場所にいる?
混乱しながら体を起こすと、その場にいた女性が驚いた表情で俺を見つめた。彼女の顔には見覚えがない。薄桃色の髪に、湖のように澄んだ青い瞳。まるで、物語に出てくるお姫様みたいだ。
「ユウマ様、お目覚めになられましたか! ああ、神よ、感謝いたします……!」
ユウマ? 誰のことだ? 彼女がそう呼びかけた時、自分の声帯から漏れた声に違和感を覚えた。
「――っ!?」
それは、聞き慣れた俺の声ではなく、もっと幼く、澄んだ声。思わず自分の手を見て、さらに驚愕する。そこにあったのは、大人の男のゴツゴツとした手ではなく、まだ幼い、すらりと細い、白い手だった。
恐る恐る近くにあった鏡を覗き込むと、そこに映っていたのは、見慣れない少年。
金色の髪に、透き通るようなサファイアの瞳。幼さを残しながらも整った顔立ちで、まるで天使のようだ。
「……え? 嘘だろ……」
この時、俺は理解した。俺は死んで、そしてこの少年の体に転生したのだと。
女性が泣きながら「ユウマ様」と何度も俺を呼ぶ。どうやら、この少年――ユウマは、病弱でずっと寝たきりだったらしい。俺が転生したことで、奇跡的に目を覚ました、ということなのだろう。
混乱した頭で状況を整理するうちに、この世界がどうやら剣と魔法のファンタジー世界であること、そして俺が男爵家の三男であること、そして何よりも衝撃的な事実を知る。
「創造魔法」という、俺だけが使える特別な力。
それは、ありとあらゆるものを無から創り出せる、究極のチート能力だった。水、食料、武器、建物……。想像できるものなら、何でも創り出せる。
しかし、その能力には大きな欠点があった。創造魔法を使うたび、俺の体からは、魔力に引き寄せられやすい特殊なフェロモンが放出されるのだ。
そのフェロモンは、男たちを狂おしいほどに惹きつけ、俺に強烈な独占欲や庇護欲を抱かせるらしい。
「え、ちょっと待って……それは、つまり……」
俺の周りに、イケメンたちが集まってくるってことか? しかも、俺を溺愛してくるって……!?
そう考えた途端、頭が真っ白になった。
そんなある日、俺は庭で創造魔法の練習をしていた。無から小さな花を生み出し、その美しさに感動していると、背後から声がかけられた。
「おや、ユウマ。随分と元気になったな」
振り返ると、そこに立っていたのは、俺の兄たちだった。
長兄のアルフレッドは、俺と同じ金色の髪に、意志の強さを感じさせる青い瞳を持つ、次期当主。厳格で、いつも俺を気遣ってくれた。
次兄のアベルは、柔和な笑みを浮かべた、優しそうな青年。ユウマが病弱だった頃、いつもそばにいてくれた。
そして、末弟のセレスは、愛らしい緑の瞳を持つ、少しわがままな少年。俺たち兄にいつも甘えている。
「アル、アベル、セレス……」
俺が彼らの名前を呼ぶと、彼らは一瞬、驚いたような表情を見せた。
「ユウマ、お前、まさか……俺たちのことを、覚えていたのか?」
「はい……兄さんたち、それに、セレス……」
俺がそう言うと、セレスはパッと顔を輝かせ、俺に駆け寄ってきた。
「ユウマ兄ちゃん! よかった、覚えててくれたんだね!」
そう言って、セレスは俺に抱きついてきた。俺は思わず、その小さな体を抱きしめ返した。
その時だった。俺の体から、甘く、誘うような香りが漂っていることに気づく。創造魔法を使った後だ。
「なんだ、この匂いは……?」
アルフレッドが怪訝な表情で鼻をヒクヒクと動かす。
「うん、すごくいい匂いがする……ユウマ兄ちゃん、香水でもつけたの?」
セレスが俺の首元に顔を埋めて、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「いや、俺は何も……」
俺が否定するが、彼らの表情はどんどん熱を帯びていく。まるで、獲物を見つけた獣のように。
「ユウマ……お前、一体……」
アルフレッドの瞳が、青く、深く光り出す。彼の顔が、俺の顔にゆっくりと近づいてくる。
「兄さん、何を……?」
俺がそう問うと、アルフレッドは俺の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
「ああ……なんて、いい香りだ……。ユウマ……お前は、俺だけのものだ」
そう言って、彼は俺の首筋に甘いキスを落とした。
その瞬間、俺は確信した。この世界は、俺をめぐるハーレムの世界だと。そして、俺は、そのハーレムの中心に立っているのだと。
転生したチート能力に加えて、男たちを惹きつけるフェロモン。
俺の新たな人生は、想像を遥かに超える波乱に満ちたものになりそうだ。
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