孤独なライオンは運命を見つける

朝顔

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本編

⑧過去から見えた希望

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「柊、スカートを摘んで持ち上げてくれよ」

 一瞬、燿一郎の言葉が理解できなくて、目をパチパチと瞬かせた。

「燿一郎…、興奮してるのか…?」

「当たり前だろ…、好きなやつが可愛い格好して、セクシーな下着付けてるんだぜ。フル勃起するわ」

「だっ……」

「責任とって、俺が暴れないように発散させてくれ」

 またその話題を持ち出すのかと、俺は燿一郎を睨んだ。こんな変態プレイみたいなこと絶対嫌だけど、せっかく燿一郎と両思いになれたのだから、触れて欲しいという気持ちはあった。

「はぁ…なんで……こんなことを……」

 俺は嫌な顔を隠さないまま、渋々両手でスカートを掴んで中が少し見えるくらいまで持ち上げた。
 恥ずかしいし、早く脱ぎたくてたまらない。

「これでいいだろう……」

「もっと持ち上げて、全然見えない」

「ううっ……」

 燿一郎が近寄ってきて間近で見てくるので、変に意識してしてしまい、俺のアソコも反応し始めてしまった。
 女の下着を履いてスカートを持ち上げて興奮するなんて、これで完全に変態の仲間入りだ。

「うわっ…エロっ…、紫のレース、柊のやつがふるふる震えて見える」

「はっ……も……やめて、見るな…」

「なんで? すげーいい眺め。最高かよ。てか、柊のちんこ、ギンギンじゃん。下着を突き破りそうだ」

「や……」

 燿一郎に見られていると思うだけで、興奮してどんどん止められなくなってきた。
 痛いくらい下半身に熱を感じて、後ろまで疼き出してしまう。

「柊、スカートの裾…口で咥えて」

「ん…っっ…」

 ここまで来たら止められない。燿一郎の声を耳元で感じるだけで腰が揺れてしまいそうだ。言われた通りに、裾を口で咥えたら、燿一郎はたまらないと言って喜んだ。

 カチャカチャとベルトを外す音がして、燿一郎もすでに反り返るように立ち上がったペニスを取り出した。

「あぁ…久々の柊…、もう我慢できない」

 俺の痴態を見ながら、燿一郎は自分のペニスを擦り出した。
 ぬちゃなちゃと卑猥な音が響いてきて、それを見ているだけで、後ろの穴がきゅうきゅうと締まってしまう。

「う…んんんっ……んーんー」

 二人でいるのに触れてくれないことが寂しくて、スカートを咥えたままだと上手く喋れないので、目で必死に訴えた。

「ああ、ごめん。興奮でヤバくてちょっと痛いかったからガス抜き。柊、そこに座って」

 スカートは咥えたまま、机に腰掛けると、近づいてきた燿一郎が自分のペニスを俺のパンツの前部分に一緒に挟んできた。
 薄い布の狭い三角のスペースに二人のペニスが窮屈そうにくっついている姿は、恐ろしく卑猥な光景だった。

「んんっ…ううっぅんん…」

「狭い? ヤバいくらい気持ちいいだろう。こうやって動かしたら、二人のチンコが擦れて……あ……やば……良すぎ」

 擦り合いなんて何度もしているが、下着の中で一緒になんて何だか背徳感があって、快感が倍増している気がする。

 俺の先っぽからは先走りが溢れていて、それが二人の間を滑らせて、激しい擦り合いになっていく。
 その度に後ろに食い込んだ細い紐が孔を刺激するので、とても大人しく咥えていられない。声を上げたくてたまらなくて、燿一郎の腕に掴まって爪を立てた。

「柊…柊……、もう、出る…一緒に…」

「ん……んっ……ぁ……んんんっっーー!」

 お互いのペニスが膨れ上がって先端から白濁が飛び散った。腹を濡らしてからぼたぼたと床に垂れていった。

「濃いのいっぱい出たな……柊、フェロモン甘すぎ…止まらないんだけど」

 一回出したぐらいじゃ収まらないと、燿一郎はギラギラした目で俺を見てきた。はーはーと肩で荒い息をしながら、すでにソコは復活していた。

 一回じゃ収まらないのは俺も同じ。早くアレを突っ込んでもらわないと体が疼いてたまらなかった。
 そのまま机に手をついて、片手でスカートをめくって尻を突き出した。自分からこんな格好をすることなんて、もう抵抗はない。

「燿一郎…はやく……」

「Tバックって……俺を殺す気かよ」

 そういえば向かい合ったまま擦っていたので、後ろのデザインはよく分からなかったのだろう。
 燿一郎は荒い息を吐きながら飛びかかってきて、乱暴に指を入れてナカを広げ始めた。
 発情期ではないので、そこはきゅっと硬くなっている。
 燿一郎はさっき出したものや、舌も使って傷が付かないようにしてくれる。
 しかしお互い丁寧にほぐす時間も惜しいほど待てなかった。

「入れるぞ」

 燿一郎はパンツを脱がさず、紐をズラしてそのまま挿入してきた。
 いままで三日とあげずにヤっていたので、久しぶりの灼熱を感じて、震える声を上げた。

「柊……好きだ……柊……」

 全部収めたら、燿一郎は後ろから抱きしめながら耳元で何度も好きだと言ってきた。
 その度に後ろはきゅうきゅうと、ナカにいる燿一郎を締め付けた。

「ああ……いっ……くっ……はぁ…はぁ…」

「柊…柊……噛みた……噛みたい」

 後ろから激しく打たれながら、俺は今感じる燿一郎の愛を全身で喜びで受け止めていた。だが、考えないようにすればするほど、燿一郎に本当に噛まれたいという思いが湧き上がってくる。

 ただ俺達の家が抱える問題を考えると、本能のままそれをすることはできない。
 俺も、燿一郎も、十分すぎるほど分かっていた。
 だが今は、お互い通じ合った心を確かめるように、夢中で抱き合って果てた。

 明日に何が起ころうと今は何も考えられない。ただ燿一郎だけを感じていたかった。








 家から母がいなくなり、一人で暮らすようになったが、家に帰ることはほとんどなく、俺は燿一郎の家で寝泊まりをするようになっていた。
 何度か家に戻ったが、父が帰って来ているような形跡もなかった。このままではだめだと思いながら、子供の自分がどこまで突っ込んでいいものなのか考えあぐねていた。

 燿一郎も燿一郎で実家との関係で色々あるようで、最近の週末は家をよく空けていた。気にしないようにはしていたが、詳しくは話してはくれないので、少しずつもどかしい気持ちは溜まっていった。
 そんな週末、燿一郎が出かけた後、インターフォンが鳴った。
 燿一郎の家なので気が引けたが、宅配業者かもしれないので確認すると、モニターに映ったのは茜だった。
 ひらひらと手を振っていたので、とりあえず入ってもらうことにした。


「ごめんねぇ、急に押しかけて。これ、二人で食べて。どうせ男二人なんてロクなもの食べてないでしょう」

 玄関を開けると、茜は大量の袋を渡してきた。俺が来ていることは話してあったのか、二人分と言って大量の食材だった。

「す…すみません」

「本当はね、私と一緒に暮らせばいいじゃんって言ったのに、うちも相方がいるからさ。あいつ、気を使って来なかったのよ。まぁ一人で何でもできるし生活には問題ないでしょう。たまに食材だけ届けに来るの」

 確かに燿一郎は基本一人で何でもできる。掃除などは手伝うが、いつの間にかサッと終わらせてしまうし、料理は余り物でこれまたサッと作ってしまう。そして美味いので、焦がすことの方が得意な俺が手を出せるわけがない。

「あの、燿一郎は……」

「あー、知ってる。今日は本家でしょう。いないって分かっていて来たの。今日は柊くんと、話したくて」

 そう言って茜は、今日も頭の上にちょこんと乗っているお団子を揺らして笑った。
 明るい笑顔を向けられたが、俺は緊張で心臓が冷えていくのが分かった。




「私の母がオメガで長年愛人だった事は聞いている?」

 冷たい麦茶をごくごくと飲みながら、ソファーに座って早速茜は話を切り出してきた。
 俺が緊張しながら頷くと、茜はそう、と言って静かに笑った。

「二人で一緒に暮らしているって聞いて、やっぱりって思ったの。二人って誰も入れない空気があったから。あいつ、アルファが濃いから怖がられることが多いけど、結構モテるのよ。女にも、男にも」

「ええ…分かります。最初はとっつき難いけど、すごく優しくて。悪ぶってるけど、根は真面目ですよね。気づいてる人は結構いますよ。よく告白されてますし」

「……そこまで見ていてくれて良かった。今まで燿一郎は自分の内側に入れる人はいなかった。でも、柊くんだけは違う。大切な人見つけたんだって分かったわ」

「…………」

 茜がここに来たのは、弟の相手がどういうやつか見極めようとしているのかもしれないと思っていた。しかし、茜はとても穏やかな顔をしていたので、警戒心は徐々に薄れていった。

「私も母と同じオメガなのよ」

「えっ……」

「小学生の時、簡易検査で判明して、その時は愕然とした。母の苦労を側で見てきたから」

 茜の言葉に、過去の記憶が波打つように俺の中でざわざわと騒ぎ出した。

「みんなからも可哀想だって言われて、もう人生お先真っ暗。母を支えたいと思っていたのに、まともな仕事には就けないし、発情期に悩まされて、まともな恋愛もできないって……」

 同級生に検査用紙を見られて、全員から可哀想と言われていた女の子。忘れたくても忘れられなかったその光景が浮かんできた。

「でも、今のパートナーと出会って、人生が変わったの。もちろん、努力して自分の店持って、今の地位を築いたけど、精神的に支えてくれるのは彼のおかげ」

 あの同級生の女の子と茜は違う。けれど、その後の人生が見えたみたいに、目の前が少し明るくなって、俺は顔を上げた。

「柊くんもオメガでしょう。分かるのよ、あの頃の私と同じ目をしていたから…。でも、今はだいぶ明るくなったわね。燿一郎が迷惑かけていない?」

「そ…そんな、俺は…助けられてばっかりで……」

「燿一郎が柊くんを明るくしたなら、それはすごく嬉しい……。二人が幸せなれるように、私も姉として応援するから」

 茜の言葉に、近頃めっきり緩くなった俺の涙腺は簡単に崩れて、ポロポロとこぼれた。そんな風に誰かが応援してくれるなんて思わなかった。
 あの頃の孤独な寒さに囚われていた気持ちがじんわりと温められて、薄れていくような気がした。

「オメガだからって悲観しないで。多少の生きづらさはあるけど、そんなのはみんな同じよ。どう生きていくか、それはオメガであってもなくても、大事なことでしょう。きっと燿一郎はそのままの柊くんを好きになったと思うから」

「あ…あり…がとう、ございます」

 涙を堪えて下を向いていた俺に近づいてきた茜は、励ますように抱きしめてくれた。
 しばらく背中を撫でてくれたが、燿一郎臭いと言って鼻をつまんでいたので、おかしくなって笑ってしまった。



「当面の問題は本家よ。燿一郎は説得するために、父に会いに何度も顔を出しているの」

「えっ……」

「このまま行くと、燿一郎は跡取りになって、決められた相手と結婚しないといけない」

 ドクンと心臓が揺れて激しく鳴り出した。分かっていたはずだ。そういう家だという事は……。

「燿一郎が外国へ行かされたのは、ただの暴力事件だって言われているけど…。本当は、私がオメガだってことで、ひどく言われているところに燿一郎が遭遇して…、その時のやつらを全員倒したのよ。でもその事で、父は怒って自分の言う通りにならないからって……。九鬼の血を一番濃く受け継いでるから離したくないのよ。だから燿一郎は今、必死に戦っている」

「俺……俺は……何か力になれますか?」

「あの子を信じて、側にいてあげて」

「はい……」

 その後は他愛のない話をして、茜はまたねと言って帰っていった。





 夕方帰ってきて、大量の食材を見つけた燿一郎は、嫌そうな顔をしてから頭をかいた。

「姉貴、来たのかよ。なんか変なこと言ってなかった?」

「いや、ちょっと話して帰った」

 皿洗いをしている俺の後ろに立った燿一郎は、首元の匂いをスンスンと嗅いできた。

「柊…柊の匂い、落ち着く…」

「……何か、あったのか?」

 燿一郎は手を回してきてぎゅっと抱きしめて、肩口に顔を埋めてきた。くすぐったさと同時に胸が苦しくなった。

「ん……もう少したら…話す」

「……うん。分かった」

 待ってると言いながら、皿洗いを続ける俺の尻に、硬いものが当たった。

「おい……」

「ん?」

「そこ…、落ち着いてる状態じゃないぞ」

 前に回された手が動いて、さわさわと俺のモノを弄り出した。

「柊……欲しい……」

「洗い中」

 後でいいからと、強引に顎を取られて唇を奪われた。
 唇を閉じていたが、シャツの中に手を入れられて乳首をつねられたら、口が開いてしまった。そして、すぐに入ってきた舌に捕らわれた。

「んっ………ぁ……」

 泡だらけの手を燿一郎の首に回したら、後は熱い息を吐いて二人の時間に溶けてしまう。


 何も考えず、ずっと、こうしていられたら良かった。

 だけど俺達はまだ若くて力がなかった。

 大きな力に抗えるほどの力が。

 次の週、また本家に行った燿一郎はそのまま夜になっても帰って来なかった。





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