四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

文字の大きさ
88 / 177
第七章 もう一度

第七十九話 捜索再開

しおりを挟む
 帰っていくロジーナ様とバネラウス司教を見送った俺達は、一週間かけてメイラークム家で体制を立て直し、再び行方不明者、及び俺を殺した犯人の捜索を開始することにした。

「皆。出発前に、捜索対象の中でも重要な人物を改めて共有しておきましょ。まずは、ジィンの父親の『ジノア・セラム』。元フラッグ革命団の『バグラディ・ガレア』。……そして」

 学校も一ヶ月後には再開するとのことで、段々と日常を取り戻しつつある世界だが、俺達ばかりはそうではない。

「俺を殺した裏切り者……『ロディア・マルコシアス』。ですよね」

 何せ俺は一度、同じパーティの仲間だった彼に殺されているのだから。

 死の間際に見たもの。

 ガラテヤ様、マーズさん、ファーリちゃんの三人が戦っていた青年は間違いなく、俺達の仲間であるハズのロディアだった。

 あの山で起きた出来事については判明していないことが多すぎるが、少なくとも現時点でほぼ確実であろうと結論づけられているのが、「馬車の暴走や妙なケウキも含めて、あの山で起こった一連の騒動は、全てロディアの仕業」だということだ。

 何故、ロディアが俺達を攻撃してきたのかは分からない。
 しかし、奴は俺達を裏切ったのは確かだろう。

 遭難から俺の死まで、その全てに「幻覚」を使われていたのであれば、ロディアは俺達が知る何倍も強く、また対策が難しい攻撃をしてくることになる。
 仲間だった頃は、まだ本気を出していなかったということだ。

「……あの事件から時間は経っているのに、発見された行方不明者は未だ半数にも達していない。生存者が力尽きることも考えれば、むしろ状況は悪化していると言って良いだろうな」

「ん。野垂れ死ぬ人もいると思う。猟兵だった頃、そういう人はいっぱい見てきたから、分かる」

 希望は薄く、またロディアが俺達を裏切った理由についても不安が残るが、今はとりあえず、学校が始まるまでの間にできることをやるしか無い。

 誰一人として発見できず、結果として辺りを彷徨き回っていただけの人になっていたとしても、それは仕方のないことなのだ。

「あら、もう行くの?」

「はい。お世話になりました、メイラークム先生」

「ふふふっ。また、学校でね。絶対、皆で顔見せに来るのよ?」

「ええ。一人も欠けず、また顔見せに行きますね」

 メイラークム先生が用意してくれた馬車に乗り、俺達は東へと向かう。

 行先はブライヤ村から一日かけて北東へ向かった地点にある山、「アデューラ岳」。

 正体不明の人間達が数十名確認され、彼らに妙な動きが確認されたとのことであり、その中にはバグラディと思しき人間の姿もあったのだとか。

 俺達はその真相を突き止めるべく、ブライヤ村を中継し、そのアデューラ岳へと向かうことにしたのだ。

「また、山に行くのだな……」

「あんなことがあったから。流石のおいらも心配」

「大丈夫だって、俺は生き返ったんだから。きっと、もう死なない」

「ええ。私とジィンがいれば、何にだって負けないわ」

「……そうか、すまない。私としたことが、怖気づいてしまったようだ」

「……ガラテヤ様」

「どうしたの?」

「メイラークム先生から聞きました。俺の命について」

「あら、聞いたのね。後で私の口から伝えようと思ったのだけれど……それなら、話が早いわ」

「という訳で俺、滅多なことではガラテヤ様から離れられなくなっちゃいました」

 新たに大きな動きを始める前に、改めて伝えておかなければならないと思った。

 作戦行動中に何かあっては困る。

「構わないわよ。なんなら、お風呂も一緒に入る?」

「いや、離れたからってすぐバッテリー切れになる訳ではないので、そこまでは」

「あら、残念」

 マーズさんとファーリちゃんの目を考えず、露骨にこちらへ身体を絡めるガラテヤ様。

 俺が生き返ったことを喜んでくれているのは良いが、心なしか、このガラテヤ様には違和感を感じざるを得なかった。

「……大丈夫ですか、ガラテヤ様?」

「え?何が?」 

「いや、今日はやけにイチャついてくるなぁ、と」

「ダメかしら?」

「ダメじゃないですけど」

 どうにも、過剰なまでに心配されているような気がしてならない。
 この調子では、しばらく続きそうである。

 愛している人に愛されるというのは、とても嬉しいことだ。
 しかし、本人の心にとって毒となる程のものであるのも、考えものである。

 贅沢な悩みなのだろうが……いずれ、向き合わなければならない日が来るだろう、その時まで。
 今はただ、ガラテヤ様に寄り添うことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...