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第七章 もう一度
第七十九話 捜索再開
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帰っていくロジーナ様とバネラウス司教を見送った俺達は、一週間かけてメイラークム家で体制を立て直し、再び行方不明者、及び俺を殺した犯人の捜索を開始することにした。
「皆。出発前に、捜索対象の中でも重要な人物を改めて共有しておきましょ。まずは、ジィンの父親の『ジノア・セラム』。元フラッグ革命団の『バグラディ・ガレア』。……そして」
学校も一ヶ月後には再開するとのことで、段々と日常を取り戻しつつある世界だが、俺達ばかりはそうではない。
「俺を殺した裏切り者……『ロディア・マルコシアス』。ですよね」
何せ俺は一度、同じパーティの仲間だった彼に殺されているのだから。
死の間際に見たもの。
ガラテヤ様、マーズさん、ファーリちゃんの三人が戦っていた青年は間違いなく、俺達の仲間であるハズのロディアだった。
あの山で起きた出来事については判明していないことが多すぎるが、少なくとも現時点でほぼ確実であろうと結論づけられているのが、「馬車の暴走や妙なケウキも含めて、あの山で起こった一連の騒動は、全てロディアの仕業」だということだ。
何故、ロディアが俺達を攻撃してきたのかは分からない。
しかし、奴は俺達を裏切ったのは確かだろう。
遭難から俺の死まで、その全てに「幻覚」を使われていたのであれば、ロディアは俺達が知る何倍も強く、また対策が難しい攻撃をしてくることになる。
仲間だった頃は、まだ本気を出していなかったということだ。
「……あの事件から時間は経っているのに、発見された行方不明者は未だ半数にも達していない。生存者が力尽きることも考えれば、むしろ状況は悪化していると言って良いだろうな」
「ん。野垂れ死ぬ人もいると思う。猟兵だった頃、そういう人はいっぱい見てきたから、分かる」
希望は薄く、またロディアが俺達を裏切った理由についても不安が残るが、今はとりあえず、学校が始まるまでの間にできることをやるしか無い。
誰一人として発見できず、結果として辺りを彷徨き回っていただけの人になっていたとしても、それは仕方のないことなのだ。
「あら、もう行くの?」
「はい。お世話になりました、メイラークム先生」
「ふふふっ。また、学校でね。絶対、皆で顔見せに来るのよ?」
「ええ。一人も欠けず、また顔見せに行きますね」
メイラークム先生が用意してくれた馬車に乗り、俺達は東へと向かう。
行先はブライヤ村から一日かけて北東へ向かった地点にある山、「アデューラ岳」。
正体不明の人間達が数十名確認され、彼らに妙な動きが確認されたとのことであり、その中にはバグラディと思しき人間の姿もあったのだとか。
俺達はその真相を突き止めるべく、ブライヤ村を中継し、そのアデューラ岳へと向かうことにしたのだ。
「また、山に行くのだな……」
「あんなことがあったから。流石のおいらも心配」
「大丈夫だって、俺は生き返ったんだから。きっと、もう死なない」
「ええ。私とジィンがいれば、何にだって負けないわ」
「……そうか、すまない。私としたことが、怖気づいてしまったようだ」
「……ガラテヤ様」
「どうしたの?」
「メイラークム先生から聞きました。俺の命について」
「あら、聞いたのね。後で私の口から伝えようと思ったのだけれど……それなら、話が早いわ」
「という訳で俺、滅多なことではガラテヤ様から離れられなくなっちゃいました」
新たに大きな動きを始める前に、改めて伝えておかなければならないと思った。
作戦行動中に何かあっては困る。
「構わないわよ。なんなら、お風呂も一緒に入る?」
「いや、離れたからってすぐバッテリー切れになる訳ではないので、そこまでは」
「あら、残念」
マーズさんとファーリちゃんの目を考えず、露骨にこちらへ身体を絡めるガラテヤ様。
俺が生き返ったことを喜んでくれているのは良いが、心なしか、このガラテヤ様には違和感を感じざるを得なかった。
「……大丈夫ですか、ガラテヤ様?」
「え?何が?」
「いや、今日はやけにイチャついてくるなぁ、と」
「ダメかしら?」
「ダメじゃないですけど」
どうにも、過剰なまでに心配されているような気がしてならない。
この調子では、しばらく続きそうである。
愛している人に愛されるというのは、とても嬉しいことだ。
しかし、本人の心にとって毒となる程のものであるのも、考えものである。
贅沢な悩みなのだろうが……いずれ、向き合わなければならない日が来るだろう、その時まで。
今はただ、ガラテヤ様に寄り添うことにした。
「皆。出発前に、捜索対象の中でも重要な人物を改めて共有しておきましょ。まずは、ジィンの父親の『ジノア・セラム』。元フラッグ革命団の『バグラディ・ガレア』。……そして」
学校も一ヶ月後には再開するとのことで、段々と日常を取り戻しつつある世界だが、俺達ばかりはそうではない。
「俺を殺した裏切り者……『ロディア・マルコシアス』。ですよね」
何せ俺は一度、同じパーティの仲間だった彼に殺されているのだから。
死の間際に見たもの。
ガラテヤ様、マーズさん、ファーリちゃんの三人が戦っていた青年は間違いなく、俺達の仲間であるハズのロディアだった。
あの山で起きた出来事については判明していないことが多すぎるが、少なくとも現時点でほぼ確実であろうと結論づけられているのが、「馬車の暴走や妙なケウキも含めて、あの山で起こった一連の騒動は、全てロディアの仕業」だということだ。
何故、ロディアが俺達を攻撃してきたのかは分からない。
しかし、奴は俺達を裏切ったのは確かだろう。
遭難から俺の死まで、その全てに「幻覚」を使われていたのであれば、ロディアは俺達が知る何倍も強く、また対策が難しい攻撃をしてくることになる。
仲間だった頃は、まだ本気を出していなかったということだ。
「……あの事件から時間は経っているのに、発見された行方不明者は未だ半数にも達していない。生存者が力尽きることも考えれば、むしろ状況は悪化していると言って良いだろうな」
「ん。野垂れ死ぬ人もいると思う。猟兵だった頃、そういう人はいっぱい見てきたから、分かる」
希望は薄く、またロディアが俺達を裏切った理由についても不安が残るが、今はとりあえず、学校が始まるまでの間にできることをやるしか無い。
誰一人として発見できず、結果として辺りを彷徨き回っていただけの人になっていたとしても、それは仕方のないことなのだ。
「あら、もう行くの?」
「はい。お世話になりました、メイラークム先生」
「ふふふっ。また、学校でね。絶対、皆で顔見せに来るのよ?」
「ええ。一人も欠けず、また顔見せに行きますね」
メイラークム先生が用意してくれた馬車に乗り、俺達は東へと向かう。
行先はブライヤ村から一日かけて北東へ向かった地点にある山、「アデューラ岳」。
正体不明の人間達が数十名確認され、彼らに妙な動きが確認されたとのことであり、その中にはバグラディと思しき人間の姿もあったのだとか。
俺達はその真相を突き止めるべく、ブライヤ村を中継し、そのアデューラ岳へと向かうことにしたのだ。
「また、山に行くのだな……」
「あんなことがあったから。流石のおいらも心配」
「大丈夫だって、俺は生き返ったんだから。きっと、もう死なない」
「ええ。私とジィンがいれば、何にだって負けないわ」
「……そうか、すまない。私としたことが、怖気づいてしまったようだ」
「……ガラテヤ様」
「どうしたの?」
「メイラークム先生から聞きました。俺の命について」
「あら、聞いたのね。後で私の口から伝えようと思ったのだけれど……それなら、話が早いわ」
「という訳で俺、滅多なことではガラテヤ様から離れられなくなっちゃいました」
新たに大きな動きを始める前に、改めて伝えておかなければならないと思った。
作戦行動中に何かあっては困る。
「構わないわよ。なんなら、お風呂も一緒に入る?」
「いや、離れたからってすぐバッテリー切れになる訳ではないので、そこまでは」
「あら、残念」
マーズさんとファーリちゃんの目を考えず、露骨にこちらへ身体を絡めるガラテヤ様。
俺が生き返ったことを喜んでくれているのは良いが、心なしか、このガラテヤ様には違和感を感じざるを得なかった。
「……大丈夫ですか、ガラテヤ様?」
「え?何が?」
「いや、今日はやけにイチャついてくるなぁ、と」
「ダメかしら?」
「ダメじゃないですけど」
どうにも、過剰なまでに心配されているような気がしてならない。
この調子では、しばらく続きそうである。
愛している人に愛されるというのは、とても嬉しいことだ。
しかし、本人の心にとって毒となる程のものであるのも、考えものである。
贅沢な悩みなのだろうが……いずれ、向き合わなければならない日が来るだろう、その時まで。
今はただ、ガラテヤ様に寄り添うことにした。
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