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第七章 もう一度
第八十五話 不明者の行方
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「これは例の大爆発が起きた直後の話だ。牢獄内部へ、革命団の連中……かつての同志が侵入し、俺と何十人かの囚人を連れて行った。……中には、ブライヤ村の大量殺人者……ジノア・セラムもいたぜ。奇しくもテメーと同じ名字だな、騎士ジィン」
「お前はブライヤ村の連中ほどニブく無さそうで安心したよ」
出会ったのが学校同士の交流会を兼ねたイベントであったが故か、フルネームくらいは知っていたようである。
「情報弱者に革命団のリーダーは務まらねぇ。交戦するかも知れねぇ騎士のフルネームくらい調べてるに決まってんだろ」
流石にブライヤ村の連中よりかは上手のようだ。
「自覚だけはあるようで感心ね。続きを話しなさい」
「……それから俺は、ずっとこの山に監禁されていた。ジノア・セラムも同じだ。この人選の意味は分からねぇが、ひでぇモンだ。ロクな飯も与えられねぇ。一応、昔は仲間だったってのに、血も涙も無ェ奴らだよなァ」
……バグラディはその「昔は仲間だった奴ら」がブライヤ村へ侵攻しようとしていたことを漏らした訳だが、そこには触れる気が無いようである。
「そんなお前が、何故ここにいる?……とは聞いたものの、大方、私の方でも予想はついているが」
「その通りだぜ。俺は逃げ出したんだ。外で大きな音が聞こえたからなァ。アジトの奴らが混乱してた隙を突いて逃げ出してきたって訳だ」
俺達が魔物の群れを蹴散らしていた時の音だろうか。
「おいら達の音かな」
「ああ、道理で。意外とすぐ奴らには追いつかれたのに、お前らに出会したのはそういうことか」
「……以上かしら?」
「起きた事だけなら以上だ。でもよォ、一つ妙な点があんだよ」
「妙な点、か」
「何で、『お前達の仲間だった筈の魔法使い』が、革命団の残党達と仲良くやってんだ?」
「……あーあ。そういう事か?アレって」
「だからあの戦場で行方をくらませたのかしら?……でも、それにしてはタイミングが遅すぎないかしら」
「そうだとしたら、大方、邪魔な上司か厄介な部下がある程度片付いたタイミングで、トップにを気取るつもりだったのだろうな」
「最初から、おいら達のパーティは仮の居場所だったってこと?」
「何言ってんだお前ら、話が見えてこねぇぞ」
「アイツ、裏切ったんだよ。一度、俺を殺して」
「は?」
「俺、一回死んだんだ。今は諸事情で生き返ってるけど、完全に自分の力で生きることはもうできていないと言っても良い」
「……ますます何言ってんのか分かんねぇ」
「あっ、そうか。お前監禁されてたから何も知らないんだっけ」
言われてみれば、アジトに監禁され、世の中から隔離されていたバグラディが、「メイラークム男爵邸で行われた葬儀にて蘇生した人間」のニュースを知る訳が無い。
俺達もこれまでの経緯を、「俺はガラテヤ様がいないと生きることができない」というような、裏切られた場合に弱点となる部分の核心のみを省いて出来事だけをざっくりと話した。
「へェ。アイツは裏切り者だったってのか。でも、俺はアイツの顔も名前も、お前らと最初に会うまで知らなかったぜェ。だから……前々から裏切りを計画していたとしても、革命団のボスを気取ろうとしたのは、つい最近の考えなんじゃねェか?」
確かにバグラディの言う通り、革命団を乗っ取るつもりで、そういったテロ組織と戦う機会を接触のチャンスと見做した上で俺達にくっついていたのであれば、それこそバグラディがリーダーだった頃から、奴らに接触だけでもしておけば良かったものだ。
よって、仮にバグラディが嘘をついていなければの話だが、マーズさんの「自分がトップになれる機会が訪れるまで待っていた」という予想は、信憑性が低いものとなってしまう。
「そうかも知れないわね。でも、そう言われたところで、私達も何故ロディアが裏切ったのか知らないのよ」
「それに、私達を裏切ったとして、互いに顔も名前も知らない革命団の、しかもいきなりトップに躍り出ることができる保証なんてどこにも無いだろう。であれば、尚更ロディアが裏切った理由は迷宮入りという訳だ」
「とにかく、だ。ここから更に山を登ったところにある洞窟に入れば、奴らのアジトへ辿り着く。そこにはジノア・セラムも、ロディア・マルコシアスもいる。詳しい話は、奴に直接会って聞けば良いんじゃねェのか」
「それもそうね」
バグラディと、まさかここまで筋の通った会話をすることになるとは思っていなかった。
「じゃあ、私達は行くか」
「そうですね。いつまでもここに留まっていて、増援が来られても困りますし」
「ん。戦場で同じ場所に長くいるのは危ない」
俺達はバグラディを置いて、先へ向かおうと足を踏み出す。
「ま、待ってくれ!」
しかし、それをバグラディは引き止めた。
「何だよ、まだ何かあるのか」
「俺も行く。……かつての同志とはいえ……いや、だからこそ、俺をここまで痛ぶってくれた落とし前はつけさせてもらうつもりだ」
「そう。好きにしなさい」
「足は引っ張んないでね」
「当然だ、猟兵のチビ。それに……マーズ・バーン・ロックスティラ。さっき、テメーにはちょっとした借りが出来ちまった。草の上に身体を移してくれやがった分の借りがな」
「特に意識していなかったが、アレは借りに数えられるものなのか」
「当たり前だ。俺はテメーらなんざの誰一人にも貸しは作りたく無ェ。だから、それなりのことはしてやるつもりだ」
「そ、そうか……あまり自覚が無いが、加勢してくれるというのであれば力ば借りよう」
「ああ。……改めて、行こうぜ」
何故、わざわざ引き止めたバグラディがリーダー面をしているのか。
そこだけは納得がいかなかったが、とにかく俺達は新たな戦力を得て、バグラディによる案内のもと、フラッグ革命団残党のアジトへと向かうこととなった。
「お前はブライヤ村の連中ほどニブく無さそうで安心したよ」
出会ったのが学校同士の交流会を兼ねたイベントであったが故か、フルネームくらいは知っていたようである。
「情報弱者に革命団のリーダーは務まらねぇ。交戦するかも知れねぇ騎士のフルネームくらい調べてるに決まってんだろ」
流石にブライヤ村の連中よりかは上手のようだ。
「自覚だけはあるようで感心ね。続きを話しなさい」
「……それから俺は、ずっとこの山に監禁されていた。ジノア・セラムも同じだ。この人選の意味は分からねぇが、ひでぇモンだ。ロクな飯も与えられねぇ。一応、昔は仲間だったってのに、血も涙も無ェ奴らだよなァ」
……バグラディはその「昔は仲間だった奴ら」がブライヤ村へ侵攻しようとしていたことを漏らした訳だが、そこには触れる気が無いようである。
「そんなお前が、何故ここにいる?……とは聞いたものの、大方、私の方でも予想はついているが」
「その通りだぜ。俺は逃げ出したんだ。外で大きな音が聞こえたからなァ。アジトの奴らが混乱してた隙を突いて逃げ出してきたって訳だ」
俺達が魔物の群れを蹴散らしていた時の音だろうか。
「おいら達の音かな」
「ああ、道理で。意外とすぐ奴らには追いつかれたのに、お前らに出会したのはそういうことか」
「……以上かしら?」
「起きた事だけなら以上だ。でもよォ、一つ妙な点があんだよ」
「妙な点、か」
「何で、『お前達の仲間だった筈の魔法使い』が、革命団の残党達と仲良くやってんだ?」
「……あーあ。そういう事か?アレって」
「だからあの戦場で行方をくらませたのかしら?……でも、それにしてはタイミングが遅すぎないかしら」
「そうだとしたら、大方、邪魔な上司か厄介な部下がある程度片付いたタイミングで、トップにを気取るつもりだったのだろうな」
「最初から、おいら達のパーティは仮の居場所だったってこと?」
「何言ってんだお前ら、話が見えてこねぇぞ」
「アイツ、裏切ったんだよ。一度、俺を殺して」
「は?」
「俺、一回死んだんだ。今は諸事情で生き返ってるけど、完全に自分の力で生きることはもうできていないと言っても良い」
「……ますます何言ってんのか分かんねぇ」
「あっ、そうか。お前監禁されてたから何も知らないんだっけ」
言われてみれば、アジトに監禁され、世の中から隔離されていたバグラディが、「メイラークム男爵邸で行われた葬儀にて蘇生した人間」のニュースを知る訳が無い。
俺達もこれまでの経緯を、「俺はガラテヤ様がいないと生きることができない」というような、裏切られた場合に弱点となる部分の核心のみを省いて出来事だけをざっくりと話した。
「へェ。アイツは裏切り者だったってのか。でも、俺はアイツの顔も名前も、お前らと最初に会うまで知らなかったぜェ。だから……前々から裏切りを計画していたとしても、革命団のボスを気取ろうとしたのは、つい最近の考えなんじゃねェか?」
確かにバグラディの言う通り、革命団を乗っ取るつもりで、そういったテロ組織と戦う機会を接触のチャンスと見做した上で俺達にくっついていたのであれば、それこそバグラディがリーダーだった頃から、奴らに接触だけでもしておけば良かったものだ。
よって、仮にバグラディが嘘をついていなければの話だが、マーズさんの「自分がトップになれる機会が訪れるまで待っていた」という予想は、信憑性が低いものとなってしまう。
「そうかも知れないわね。でも、そう言われたところで、私達も何故ロディアが裏切ったのか知らないのよ」
「それに、私達を裏切ったとして、互いに顔も名前も知らない革命団の、しかもいきなりトップに躍り出ることができる保証なんてどこにも無いだろう。であれば、尚更ロディアが裏切った理由は迷宮入りという訳だ」
「とにかく、だ。ここから更に山を登ったところにある洞窟に入れば、奴らのアジトへ辿り着く。そこにはジノア・セラムも、ロディア・マルコシアスもいる。詳しい話は、奴に直接会って聞けば良いんじゃねェのか」
「それもそうね」
バグラディと、まさかここまで筋の通った会話をすることになるとは思っていなかった。
「じゃあ、私達は行くか」
「そうですね。いつまでもここに留まっていて、増援が来られても困りますし」
「ん。戦場で同じ場所に長くいるのは危ない」
俺達はバグラディを置いて、先へ向かおうと足を踏み出す。
「ま、待ってくれ!」
しかし、それをバグラディは引き止めた。
「何だよ、まだ何かあるのか」
「俺も行く。……かつての同志とはいえ……いや、だからこそ、俺をここまで痛ぶってくれた落とし前はつけさせてもらうつもりだ」
「そう。好きにしなさい」
「足は引っ張んないでね」
「当然だ、猟兵のチビ。それに……マーズ・バーン・ロックスティラ。さっき、テメーにはちょっとした借りが出来ちまった。草の上に身体を移してくれやがった分の借りがな」
「特に意識していなかったが、アレは借りに数えられるものなのか」
「当たり前だ。俺はテメーらなんざの誰一人にも貸しは作りたく無ェ。だから、それなりのことはしてやるつもりだ」
「そ、そうか……あまり自覚が無いが、加勢してくれるというのであれば力ば借りよう」
「ああ。……改めて、行こうぜ」
何故、わざわざ引き止めたバグラディがリーダー面をしているのか。
そこだけは納得がいかなかったが、とにかく俺達は新たな戦力を得て、バグラディによる案内のもと、フラッグ革命団残党のアジトへと向かうこととなった。
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