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第八章 終末のようなものについて
第百五話 悩める射手 後編
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何がどうなっているのだろうか。
アクションゲームのオリジナルステージを作るモードで、全ての部品を取っ払った後のように、物や壁どころか柱も無い。
今、こうして崩れずに建物の形を保っているのが不思議なくらいである。
「……不思議なとこ」
「どういう原理でこうなっているの?」
「さあ……。でも、少なくとも自然な状態では無さそうですわね……あっ」
ガラテヤ様が研究所の奥を指差す。
「どうしたんですか?」
「あれ、何かしら」
どうやら、真っ新になった研究所の壁に、何かが引っかかっているようだった。
おそるおそる近づいてみると、そこには一体どこから湧いたのか……パワードスーツのようなものがフックに引っかかっていた。
かつて栄えた錬金術の遺物だろうか、部屋の中身が消えたタイミングで、何らかの理由があって消え損ねた結果、吹き飛ばされてフックに引っかかった……と考えれば、説明はつく。
それにしても、あんなものを作ることができる技術があったとは。
放置された失敗作である可能性の方が高いが。
しかし失敗作であっても、その失敗とされた要因が俺達にとっては失敗ではないかもされない。
例えるならば、「性能は良いものの、リソースを大量に消費するロボットは、戦時中こそ重宝されるものの、戦争が終われば維持費がかかるが故に雑な扱いを受ける」というようなものであろうか。
少なくとも、何が何だか分からないものではあるが、持って帰ってテストを行えば、何か用途はあるかもしれない。
特に、ケーリッジ先生の左腕と左足の失われた機能を補うには、うってつけの装備だろう。
……などと考えている内に。
「どれどれ……よいしょ。これで良いの?」
ケーリッジ先生は、あろうことかパワードスーツらしきものを装着し、スイッチのようなものを押してしまった。
「「ストップ、ストーップ!!!」」
俺とガラテヤ様は思わずタメ口で止めにかかってしまったが、もう遅い。
現役時代からブッ飛んでいたと聞いている部分は直っていないのだろうとは、左腕と左脚の障害を錬金術研究所の遺物で補うなり治すなりしようとしている時点で分かっていたことではあったが。
まさか、迂闊で残念なお姉さんになってしまっていたとは。
しかし、俺とガラテヤ様の焦りは杞憂だったようであり。
「この感覚……そうそう、この感覚よ……!おっと、バランスが悪いわね」
パワードスーツは無事に起動したらしく、外見こそ小汚いものの、ケーリッジ先生は無事に全身が強化された感覚を十全に味わっているようだ。
「「あ、焦ったー……」」
「二人とも、汗びっしょり」
しれっと後退していたファーリちゃんが、袋に入れていたタオルを持ってきてくれた。
「凄い、凄いわ!腕も、脚も……ちゃんと動いてる!こんな感覚、久しぶりよ!」
「そ、そっすか」
「良かったわねです」
ガラテヤ様の口調がまたしても壊れてしまわれた。
「……不用意」
俺達の心配と焦りを他所に、ケーリッジ先生はパワードスーツの力を借りて大はしゃぎである。
爆発でもしたらどうするつもりだったのだろうか。
このパワードスーツだけが、いかにもなフックに引っかかっていたのは気がかりではあるが……何はともあれ、ひとまず遠征の成果はあったということで良いのだろう。
近くの丘に刺さった風車が揺れている。
そして、ケーリッジ先生はその丘をジャンプして飛び越え、すっかりパワードスーツを使いこなした風で辺りを走り回っていた。
めでたしめでたし、ではあるが……帰りの馬車で、ケーリッジ先生には危機管理というものについて一言二言言っておく必要がありそうだ。
俺達はただ、それだけが気がかりなのであった。
アクションゲームのオリジナルステージを作るモードで、全ての部品を取っ払った後のように、物や壁どころか柱も無い。
今、こうして崩れずに建物の形を保っているのが不思議なくらいである。
「……不思議なとこ」
「どういう原理でこうなっているの?」
「さあ……。でも、少なくとも自然な状態では無さそうですわね……あっ」
ガラテヤ様が研究所の奥を指差す。
「どうしたんですか?」
「あれ、何かしら」
どうやら、真っ新になった研究所の壁に、何かが引っかかっているようだった。
おそるおそる近づいてみると、そこには一体どこから湧いたのか……パワードスーツのようなものがフックに引っかかっていた。
かつて栄えた錬金術の遺物だろうか、部屋の中身が消えたタイミングで、何らかの理由があって消え損ねた結果、吹き飛ばされてフックに引っかかった……と考えれば、説明はつく。
それにしても、あんなものを作ることができる技術があったとは。
放置された失敗作である可能性の方が高いが。
しかし失敗作であっても、その失敗とされた要因が俺達にとっては失敗ではないかもされない。
例えるならば、「性能は良いものの、リソースを大量に消費するロボットは、戦時中こそ重宝されるものの、戦争が終われば維持費がかかるが故に雑な扱いを受ける」というようなものであろうか。
少なくとも、何が何だか分からないものではあるが、持って帰ってテストを行えば、何か用途はあるかもしれない。
特に、ケーリッジ先生の左腕と左足の失われた機能を補うには、うってつけの装備だろう。
……などと考えている内に。
「どれどれ……よいしょ。これで良いの?」
ケーリッジ先生は、あろうことかパワードスーツらしきものを装着し、スイッチのようなものを押してしまった。
「「ストップ、ストーップ!!!」」
俺とガラテヤ様は思わずタメ口で止めにかかってしまったが、もう遅い。
現役時代からブッ飛んでいたと聞いている部分は直っていないのだろうとは、左腕と左脚の障害を錬金術研究所の遺物で補うなり治すなりしようとしている時点で分かっていたことではあったが。
まさか、迂闊で残念なお姉さんになってしまっていたとは。
しかし、俺とガラテヤ様の焦りは杞憂だったようであり。
「この感覚……そうそう、この感覚よ……!おっと、バランスが悪いわね」
パワードスーツは無事に起動したらしく、外見こそ小汚いものの、ケーリッジ先生は無事に全身が強化された感覚を十全に味わっているようだ。
「「あ、焦ったー……」」
「二人とも、汗びっしょり」
しれっと後退していたファーリちゃんが、袋に入れていたタオルを持ってきてくれた。
「凄い、凄いわ!腕も、脚も……ちゃんと動いてる!こんな感覚、久しぶりよ!」
「そ、そっすか」
「良かったわねです」
ガラテヤ様の口調がまたしても壊れてしまわれた。
「……不用意」
俺達の心配と焦りを他所に、ケーリッジ先生はパワードスーツの力を借りて大はしゃぎである。
爆発でもしたらどうするつもりだったのだろうか。
このパワードスーツだけが、いかにもなフックに引っかかっていたのは気がかりではあるが……何はともあれ、ひとまず遠征の成果はあったということで良いのだろう。
近くの丘に刺さった風車が揺れている。
そして、ケーリッジ先生はその丘をジャンプして飛び越え、すっかりパワードスーツを使いこなした風で辺りを走り回っていた。
めでたしめでたし、ではあるが……帰りの馬車で、ケーリッジ先生には危機管理というものについて一言二言言っておく必要がありそうだ。
俺達はただ、それだけが気がかりなのであった。
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