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火曜日の放課後の習い事、水曜日の放課後の習い事
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火曜日
次の習い事は自分の住む領地の葡萄畑の手伝いに参加することにした。
意外と身近に自立のヒントがある気がして父と兄たちに、手伝いをする機会をねだったのだ。
卒業まで手伝いをやり抜くこと、勉強を疎かにしないと約束させられたけど、領地内なら許婚に会うまいよ。
上機嫌で働いてくれている人たちに初仕事への指示をもらいに行った。
許婚がいる。
「え、どうして」
「新しい葡萄の研究とブランデーの製造に手を出してみたくて、侯爵様にお願いしてみたんだよ。」
確かにブランデーが製造できれば、ワインが主流になっているこの地域では大きな成功を収められるかもしれない。新しい着眼点に感心して改めてエリオットの素晴らしさを実感した。こんなにもすごい人に最後は見限られて、捨てられるのかと思うと気が重くなる。
気持ちを切り替えて、賛辞を贈りつつ相手の反応を確認する。
「流石ですわ、着眼点が違いますわね。」
「クラリベルこそ自分の領地を大切に思っているんだね。素敵だよ」
何かこちらを調べるつもりかもしれないが、機嫌よく笑う彼からは何も読み取れなかった。素直な賛辞をお返しされて後ろめたいような、嬉しいような複雑な気持ちになった。
なんだかんだ、葡萄について語り合い、学園外で仲良くなって来ている気がする。
父に領地の手伝いがしたいとごねた結果なので、卒業まで葡萄畑の手伝いに少なくても週一で参加することが決まってしまったのにどうしよう。
「手が荒れたらいつでも言ってほしい。」
心配をよそに、彼からは気遣いを貰う。
彼の継ぐだろうグリフィス領で取れる蜂蜜から作ったボディクリームを後日プレゼントで受け取った。彼の気配りが嬉しく、くすぐったかった。
手袋をつけた作業がメインだったけど、蒸れて心配だったので有り難かったのだ。
いつのまにか両家の間で葡萄畑が暇な時は許婚の領地で養蜂の手伝いの約束がされていた。
確かに葡萄畑で迷子になっては許婚に見つけてもらっていたので、研究の邪魔をしてしまったし恩返しは必要だと思った。今後も迷子になって迷惑をかける懸念もあったのも秘密だ。
心の中にはしょうもない秘密ばかりが増えていく。
グリフィス領の蜂によってもたらされた繁栄。ボディクリームから始まり、健康食や蜜蝋によって栄えている領地の手伝いの経験は役に立つから親に文句を出せなかった。簡単な経理の仕事も任せて貰えたのもうれしかった。
もし無事に結婚できたら住む領地だから頑張りたい、なんてことを少しだけ考えてしまった。
不甲斐ない自分が悔しい。でも生き伸びる糧にしちゃうんだから!
嬉しい反面、半分は日常の接点が増えてしまったことに焦りだした。
学園では講義ごとに友人が増えていくから順調だ。ヒロインの情報は2日目だけど何も入ってこない。
水曜日
こうなったら最悪の展開に備えて、卒業で断罪を受けた際に修道院に行く為のコネと聖職者の人脈を作ろう!! と神殿巡りを週一で行うことにした。準備は1年前からしていたから抜かりはない。
簡単な掃除や受付の仕事を貰った。貴族での作法と微妙に違うところがあるから、神殿での作法が学べる良い習い事だ。
お給料も貰えるし、楽しくなりそう!
受付の仕事の最初の人はー
許婚がきた。
「あ、え、え、貴方にご加護がありますよう…? 」
「主の導きに感謝します。…クラリベルは何をきても似合うね。」
しっかりしたスーツに身を包み、慣れた挨拶を返すエリオットをみる。
私は見習い修道女の礼服に包まれている。動揺は聖なる服でも隠せなかった。
そういえばそろそろ一部の神殿の寄付について許婚が仕事を引き継ぎ出したと聞いた気がする。
「僕たち貴族と神殿はきってもきれない。ここでの経験は僕の仕事にも役立つだろうから、将来を期待しているね。」
誇らしげに私を婚約者だと周囲の人に紹介する彼を止めたら、不思議そうな顔をされた。曖昧に笑って誤魔化して、厳かな扉に消えるまで許婚を見送った。
「政略結婚だから、婚約者ってまだ紹介しないでほしかったなー。今はあってるけど…あってるけども…。」
私の呟きは次々にくる来訪者によって消えていった。
ぐったりして一日限りで逃げようと思った。
教会で仲良くなった神父様
神殿のことを知りたいと頼み込んだ修道女様
各地の神殿巡りを用意してくれた修道士様
頑張って一年前から交流した彼らとの出会いが走馬灯のように思考の中を駆け去った。
「こ、断れない。」
この習い事兼社会勉強も卒業まで組み込まれてしまっていた。
またまた余談だが、
許婚は勤勉な人らしく、私の行く先々の神殿に現れた。
運命かな?とちょっと一人で笑ってしまった。
結末はわかっているのに…
それにしても週一しかいないのに必ず会うからきっとかなりの頻度で神殿と話し合いをしているのだろう。
何がしたいかわからず漠然と将来を探す立場の私と違って、ちゃんとした将来の為に動く彼がかっこいいと感じると同時に働き過ぎではないかと心配になった。
次の習い事は自分の住む領地の葡萄畑の手伝いに参加することにした。
意外と身近に自立のヒントがある気がして父と兄たちに、手伝いをする機会をねだったのだ。
卒業まで手伝いをやり抜くこと、勉強を疎かにしないと約束させられたけど、領地内なら許婚に会うまいよ。
上機嫌で働いてくれている人たちに初仕事への指示をもらいに行った。
許婚がいる。
「え、どうして」
「新しい葡萄の研究とブランデーの製造に手を出してみたくて、侯爵様にお願いしてみたんだよ。」
確かにブランデーが製造できれば、ワインが主流になっているこの地域では大きな成功を収められるかもしれない。新しい着眼点に感心して改めてエリオットの素晴らしさを実感した。こんなにもすごい人に最後は見限られて、捨てられるのかと思うと気が重くなる。
気持ちを切り替えて、賛辞を贈りつつ相手の反応を確認する。
「流石ですわ、着眼点が違いますわね。」
「クラリベルこそ自分の領地を大切に思っているんだね。素敵だよ」
何かこちらを調べるつもりかもしれないが、機嫌よく笑う彼からは何も読み取れなかった。素直な賛辞をお返しされて後ろめたいような、嬉しいような複雑な気持ちになった。
なんだかんだ、葡萄について語り合い、学園外で仲良くなって来ている気がする。
父に領地の手伝いがしたいとごねた結果なので、卒業まで葡萄畑の手伝いに少なくても週一で参加することが決まってしまったのにどうしよう。
「手が荒れたらいつでも言ってほしい。」
心配をよそに、彼からは気遣いを貰う。
彼の継ぐだろうグリフィス領で取れる蜂蜜から作ったボディクリームを後日プレゼントで受け取った。彼の気配りが嬉しく、くすぐったかった。
手袋をつけた作業がメインだったけど、蒸れて心配だったので有り難かったのだ。
いつのまにか両家の間で葡萄畑が暇な時は許婚の領地で養蜂の手伝いの約束がされていた。
確かに葡萄畑で迷子になっては許婚に見つけてもらっていたので、研究の邪魔をしてしまったし恩返しは必要だと思った。今後も迷子になって迷惑をかける懸念もあったのも秘密だ。
心の中にはしょうもない秘密ばかりが増えていく。
グリフィス領の蜂によってもたらされた繁栄。ボディクリームから始まり、健康食や蜜蝋によって栄えている領地の手伝いの経験は役に立つから親に文句を出せなかった。簡単な経理の仕事も任せて貰えたのもうれしかった。
もし無事に結婚できたら住む領地だから頑張りたい、なんてことを少しだけ考えてしまった。
不甲斐ない自分が悔しい。でも生き伸びる糧にしちゃうんだから!
嬉しい反面、半分は日常の接点が増えてしまったことに焦りだした。
学園では講義ごとに友人が増えていくから順調だ。ヒロインの情報は2日目だけど何も入ってこない。
水曜日
こうなったら最悪の展開に備えて、卒業で断罪を受けた際に修道院に行く為のコネと聖職者の人脈を作ろう!! と神殿巡りを週一で行うことにした。準備は1年前からしていたから抜かりはない。
簡単な掃除や受付の仕事を貰った。貴族での作法と微妙に違うところがあるから、神殿での作法が学べる良い習い事だ。
お給料も貰えるし、楽しくなりそう!
受付の仕事の最初の人はー
許婚がきた。
「あ、え、え、貴方にご加護がありますよう…? 」
「主の導きに感謝します。…クラリベルは何をきても似合うね。」
しっかりしたスーツに身を包み、慣れた挨拶を返すエリオットをみる。
私は見習い修道女の礼服に包まれている。動揺は聖なる服でも隠せなかった。
そういえばそろそろ一部の神殿の寄付について許婚が仕事を引き継ぎ出したと聞いた気がする。
「僕たち貴族と神殿はきってもきれない。ここでの経験は僕の仕事にも役立つだろうから、将来を期待しているね。」
誇らしげに私を婚約者だと周囲の人に紹介する彼を止めたら、不思議そうな顔をされた。曖昧に笑って誤魔化して、厳かな扉に消えるまで許婚を見送った。
「政略結婚だから、婚約者ってまだ紹介しないでほしかったなー。今はあってるけど…あってるけども…。」
私の呟きは次々にくる来訪者によって消えていった。
ぐったりして一日限りで逃げようと思った。
教会で仲良くなった神父様
神殿のことを知りたいと頼み込んだ修道女様
各地の神殿巡りを用意してくれた修道士様
頑張って一年前から交流した彼らとの出会いが走馬灯のように思考の中を駆け去った。
「こ、断れない。」
この習い事兼社会勉強も卒業まで組み込まれてしまっていた。
またまた余談だが、
許婚は勤勉な人らしく、私の行く先々の神殿に現れた。
運命かな?とちょっと一人で笑ってしまった。
結末はわかっているのに…
それにしても週一しかいないのに必ず会うからきっとかなりの頻度で神殿と話し合いをしているのだろう。
何がしたいかわからず漠然と将来を探す立場の私と違って、ちゃんとした将来の為に動く彼がかっこいいと感じると同時に働き過ぎではないかと心配になった。
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