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第二部 魔法少女は、ふたつの世界を天秤にかける
第7話 魔法少女と秘密の部屋 その一
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白音、いつき、リプリンの三人は、魔族の夫婦アレイセスとリビアラに案内されて魔法研究施設へと向かった。
夫婦はひとり娘のアーリエと共にそこで隠れて暮らしているらしい。
しかしふたりに導かれて連れてこられた場所は、やはり何も無いただの荒野だった。
建物や施設らしきものはまったく見当たらない。
どこもかしこも砂だらけの真っ平らな大地に、目につくものと言えば少し大きめの岩がごろごろと転がっているくらいだろうか。
ただ、いつきだけがその岩のひとつを指さして言った。
「なんか怪しいっす」
しかしそう言われても、白音にはただ岩が転がっているだけにしか見えない。
「ん、何かあるの?」
「あの岩不自然っすよ」
そんなふたりの動きを見て、夫のアレイセスは会話のおおよその内容を察したようだった。
「あの岩の下に入り口があります。上手く隠したつもりだったのですが、簡単に気づかれてしまいましたね。火浦様、さすがです」
彼はそう言って頭を垂れた。
言葉は魔族語なのでよく分からないが、いつきはそんな恭しい態度を取られたのは生まれて初めてだった。
なんだかむず痒いような微妙な気持ちになる。
白音が『ゾアヴァイル様』と呼ばれるのを嫌がる気持ちが、ほんの少しだけ理解できた気がした。
「最初に見た時には、荒野のど真ん中に穴だけが口を開けていました。半ば砂に埋もれていて、地下施設は放棄されているのだろうと思いました。そこに私たちが岩などを運んできて、人目に付かないような細工をさせていただきました」
魔族夫婦は、臨月を間近に控えた頃にここへ辿り着いたらしい。
入り口の荒れ具合とは対照的に中はきれいで、砂もほとんど吹き込んではいなかった。
おかげで落ち着いて子育てに専念できているのだと、妻のリビアラが言った。
白音は話を聞きながら前世の記憶を少し探っていた。
多分魔法研究施設はそんなむき出しの階段だけではなかったと思う。
ちゃんと地上部分にも立派な建物があったのをおぼろげに覚えている。
だが当然ながら周囲がこの状況である。
地上部分がすべて消失して、頑丈に作られていた地下部分だけが無事に残った、と考えれば筋は通りそうだった。
頑丈だったおかげで今、魔族親子を守ってくれているのだ。
戦争の道具などを開発しているよりよほどいい。
前世の近衛隊長だった頃ならどう思ったか知らないが、少なくとも今の白音はそう思う。
「いつきちゃん、リプリン、こっち来て」
白音はふたりの魔法少女の腰に手を回すと、両脇に抱き寄せた。
そして銀翼の力でふわりと浮き上がり、いつきが違和感を指摘したその岩のところまで三人でひと息に飛ぶ。
翼のある魔族が足跡を残したくない時にやる、一番手っ取り早い方法だ。
アレイセスとリビアラも白音と同じように、地に足を付けないようにして岩のところまで飛んで移動する。
「ゾアヴァイル様、お気遣い感謝いたします」
夫婦が揃って頭を下げた。
「……ゾアヴァイルは、やめて欲しいかな……。白音って呼んで? アレイセスさん。リビアラさんもね?」
「畏まりました。白音様」
魔族語なので少し発音が違う。『白音っ様』と呼ばれる心配はない。
本当は『様』も付けて欲しくはないのだが、それは諦めるしかないだろう。
ふたりが敬礼をして応えるその様は、まるで軍属の配下のそれである。
「前を失礼します、白音様」
そう言ってアレイセスが大きな岩を持ち上げると、その下に地下へと続く階段が本当に隠されていた。
入り口はかなり巧妙に隠されており、何も知らない者がそれを見つけるのはかなり難しそうだった。
やはりいつきは、そういう人の目を欺こうとするようなものを見破るセンスに秀でているのだろう。
しかしそのセンスが魔法によるものなのかどうか、いつき自身にもよく分からないのだそうだ。
とにかく直感で、何かありそうだと感じるらしかった
石造りのその階段には砂や石が積もっていた。
できるだけ人工物が露出しないように、自分たちでやったのだとアレイセスが教えてくれた。
よく見ればそれらの砂礫は、歩く際の邪魔にはならないように巧妙にばら撒かれている。
比較的緩やかな勾配を10メートルほど降りただろうか。
長い石階段の先に頑丈そうな内開きの扉があり、さらにその向こうにはかなりの広さの空間があった。
天井がゆったりと高く取られ、室内は地下とは思えないほどに明るい。
おそらくは閉塞感を感じないようにするための工夫なのだろう。
明かりも魔法の明かりではなさそうで、どこかから上手く自然光を取り入れているように感じられた。
快適そうなその空間は、研究施設というよりは寝泊まりをする生活の場のような雰囲気だった。
魔道具によって水が使えるようになっており、かなり本格的な調理設備まで揃えられている。
中でも目立っていたのが、人間の背丈よりも大きな金属製の箱だった。
それが三つも置かれており、広いキッチンのかなりの部分を占拠している。
アレイセスによれば、その箱に魔力を注ぎ込んでおけば中が冷たく凍り付くらしい。
なるほど冷凍庫のようなものだろうと白音は判断した。
サイズからすれば、まるでレストランの厨房にあるような巨大な業務用だ。
そんなものまで魔法で作れるとは驚きだった。
「それで、どのくらいここで粘れればいいのかしら?」
キッチンの設備を検分しながら白音が尋ねた。
まるで不動産物件の内見に来た客のように見える。
「せめてあと半年、アーリエが成長してくれればもう少し安全な土地を目指して旅に出られると考えているのですが」
リビアラが恐縮してそう言った。
本当はもう少し時間が欲しいのだろう。限界まで急いで半年というところか。
ただ、この隠れ家は思ったよりも快適な暮らしができそうで、その点に関して白音は少し安心していた。
「魔物は討伐しましたってことにして、ここに半年隠れていられればいいのよね。でも大人しくしていてもらわないと困るから、食料の問題があるわね」
「またキャラバンが襲われたらまずいっすからね」
白音が作戦を練りながら日本語で呟くと、いつきが応じた。
彼女もまた、魔族夫婦の今後について頭を悩ませてくれているみたいだった。
「入り口は僕の魔法でカモフラージュすれば、もっとばれにくくなるっす。姐さんにリーパーしてもらえれば、普通の召喚英雄には看破できないレベルで一年以上はもつと思うっす」
『召喚英雄』な時点で『普通』ではないような気もするが、要は魔力強度の問題だろう。
それならばリーパーで、どこのどんな英雄様にだってばれないようにしてしまえる自信がある。
「お?」
白音といつきが相談をしていると、リプリンが突然そんな声を出した。
そして、すすすっと音も無く部屋の奥の方へと向かう。
それを見た白音は一瞬、莉美のことを想い出した。
間違いなくそれは、莉美が『何か面白いもの』を見つけた時の行動パターンだった。
「白音ちゃん、いつきちゃん」
リプリンが満面の笑顔で手招きをして、しかし囁くような声でふたりを呼ぶ。
見ればリプリンの側に、小さなベッドが置かれていた。
あり合わせのもので手作りされた感じだが、ちゃんとベッド柵も備え付けられている。
なるほどそういうことかと思いながらも、白音は一応リプリンを咎める。
「もう、だめでしょ、リプリン」
だが白音の顔も、既に満面の笑みになってしまっている。
「すみません、勝手に。…………でも、あの……、アーリエちゃんですよね。わたしたちも一緒に、いいですか?」
「是非、見てやって下さい」
アレイセスもリビアラも笑顔でそう言ってくれた。
少しは白音たちに心を許してくれたのかもしれない。
白音といつきはアーリエに触れる気満々なので、まずは手を洗わせてもらう。
「リプリンも手、洗いなさいよね」
「んー…………、表面を入れ替えたらキレイになる?」
そう言って彼女の体の表面が、僅かにうねうねと揺らいだのが見えた。
それまで外界と接触していた部分が強力な消化能力を持つスライムの体内へと陥入し、代わって真新しい界面が形成される。
確かにそうすれば簡単に清潔な状態が保てそうだった。
スライムずるい、と思いながら白音はいつきと一緒に慌てて手を洗う。
三人が行儀よく並んで膝をつき、そして小さな、本当に小さなベッドを目を輝かせて覗き込む。
生後半年の女の子、アーリエは目を覚ましていた。
角はもう少し大きくならないと生えないのでまだ無いが、小さな翼と短い尻尾はもう生えている。
その翼を時折パタパタと動かしているのが、まるで飛ぶ練習をしているように見える。
「わあ、かわいいー」
三人の口から、思わず同時に声が漏れた。
アーリエの方はどうやらリプリンに興味を持ったようで、ずっと彼女の動きを熱心に目で追っている。
「あー、あー」
アーリエが何かを求めるようにリプリンの方へ手を伸ばした。
するとリプリンが身を乗り出して、アーリエを抱きしめて頬ずりをした。
「なに味なのよー?」
「う、ちょ、リプリン? 切り取り方!! わたしの言ったこと、変なとこで切り取らないでよ!!」
白音は焦ってアレイセスとリビアラの方を見たが、ふたりは「どうぞどうぞ、抱いてやって下さい」と身振りで示してくれる。
日本語が通じなくて本当に良かったと思う。
リプリンはスライムと同じくらいプニプニとした、アーリエの頬の感触を堪能している。
「食べちゃダメ!」
「うん。もちろん」
白音は即答して順番を待つことにした。
「いやでも姐さん、魔族はみんな美形って一恵姐さんが言ってたんすけど、ほんとっすねぇ。この三人が親子っていうのが、絵になりすぎてて感動っす」
いつきがベッドのアーリエと、アレイセス、リビアラ夫婦を見比べながら言った。
「うんうん」
リプリンがなかなか代わってくれないので、白音はせめてアーリエの頭を撫でている。
「ゾア………、白音様に撫でていただいて、この子も無病息災、きっと強い子に育ってくれると思います」
夫婦揃って、なんだか神妙な面持ちで白音に頭を下げる。
「いやいや……、わたしをそんな魔除けの獅子舞みたいに言われても…………」
夫婦はひとり娘のアーリエと共にそこで隠れて暮らしているらしい。
しかしふたりに導かれて連れてこられた場所は、やはり何も無いただの荒野だった。
建物や施設らしきものはまったく見当たらない。
どこもかしこも砂だらけの真っ平らな大地に、目につくものと言えば少し大きめの岩がごろごろと転がっているくらいだろうか。
ただ、いつきだけがその岩のひとつを指さして言った。
「なんか怪しいっす」
しかしそう言われても、白音にはただ岩が転がっているだけにしか見えない。
「ん、何かあるの?」
「あの岩不自然っすよ」
そんなふたりの動きを見て、夫のアレイセスは会話のおおよその内容を察したようだった。
「あの岩の下に入り口があります。上手く隠したつもりだったのですが、簡単に気づかれてしまいましたね。火浦様、さすがです」
彼はそう言って頭を垂れた。
言葉は魔族語なのでよく分からないが、いつきはそんな恭しい態度を取られたのは生まれて初めてだった。
なんだかむず痒いような微妙な気持ちになる。
白音が『ゾアヴァイル様』と呼ばれるのを嫌がる気持ちが、ほんの少しだけ理解できた気がした。
「最初に見た時には、荒野のど真ん中に穴だけが口を開けていました。半ば砂に埋もれていて、地下施設は放棄されているのだろうと思いました。そこに私たちが岩などを運んできて、人目に付かないような細工をさせていただきました」
魔族夫婦は、臨月を間近に控えた頃にここへ辿り着いたらしい。
入り口の荒れ具合とは対照的に中はきれいで、砂もほとんど吹き込んではいなかった。
おかげで落ち着いて子育てに専念できているのだと、妻のリビアラが言った。
白音は話を聞きながら前世の記憶を少し探っていた。
多分魔法研究施設はそんなむき出しの階段だけではなかったと思う。
ちゃんと地上部分にも立派な建物があったのをおぼろげに覚えている。
だが当然ながら周囲がこの状況である。
地上部分がすべて消失して、頑丈に作られていた地下部分だけが無事に残った、と考えれば筋は通りそうだった。
頑丈だったおかげで今、魔族親子を守ってくれているのだ。
戦争の道具などを開発しているよりよほどいい。
前世の近衛隊長だった頃ならどう思ったか知らないが、少なくとも今の白音はそう思う。
「いつきちゃん、リプリン、こっち来て」
白音はふたりの魔法少女の腰に手を回すと、両脇に抱き寄せた。
そして銀翼の力でふわりと浮き上がり、いつきが違和感を指摘したその岩のところまで三人でひと息に飛ぶ。
翼のある魔族が足跡を残したくない時にやる、一番手っ取り早い方法だ。
アレイセスとリビアラも白音と同じように、地に足を付けないようにして岩のところまで飛んで移動する。
「ゾアヴァイル様、お気遣い感謝いたします」
夫婦が揃って頭を下げた。
「……ゾアヴァイルは、やめて欲しいかな……。白音って呼んで? アレイセスさん。リビアラさんもね?」
「畏まりました。白音様」
魔族語なので少し発音が違う。『白音っ様』と呼ばれる心配はない。
本当は『様』も付けて欲しくはないのだが、それは諦めるしかないだろう。
ふたりが敬礼をして応えるその様は、まるで軍属の配下のそれである。
「前を失礼します、白音様」
そう言ってアレイセスが大きな岩を持ち上げると、その下に地下へと続く階段が本当に隠されていた。
入り口はかなり巧妙に隠されており、何も知らない者がそれを見つけるのはかなり難しそうだった。
やはりいつきは、そういう人の目を欺こうとするようなものを見破るセンスに秀でているのだろう。
しかしそのセンスが魔法によるものなのかどうか、いつき自身にもよく分からないのだそうだ。
とにかく直感で、何かありそうだと感じるらしかった
石造りのその階段には砂や石が積もっていた。
できるだけ人工物が露出しないように、自分たちでやったのだとアレイセスが教えてくれた。
よく見ればそれらの砂礫は、歩く際の邪魔にはならないように巧妙にばら撒かれている。
比較的緩やかな勾配を10メートルほど降りただろうか。
長い石階段の先に頑丈そうな内開きの扉があり、さらにその向こうにはかなりの広さの空間があった。
天井がゆったりと高く取られ、室内は地下とは思えないほどに明るい。
おそらくは閉塞感を感じないようにするための工夫なのだろう。
明かりも魔法の明かりではなさそうで、どこかから上手く自然光を取り入れているように感じられた。
快適そうなその空間は、研究施設というよりは寝泊まりをする生活の場のような雰囲気だった。
魔道具によって水が使えるようになっており、かなり本格的な調理設備まで揃えられている。
中でも目立っていたのが、人間の背丈よりも大きな金属製の箱だった。
それが三つも置かれており、広いキッチンのかなりの部分を占拠している。
アレイセスによれば、その箱に魔力を注ぎ込んでおけば中が冷たく凍り付くらしい。
なるほど冷凍庫のようなものだろうと白音は判断した。
サイズからすれば、まるでレストランの厨房にあるような巨大な業務用だ。
そんなものまで魔法で作れるとは驚きだった。
「それで、どのくらいここで粘れればいいのかしら?」
キッチンの設備を検分しながら白音が尋ねた。
まるで不動産物件の内見に来た客のように見える。
「せめてあと半年、アーリエが成長してくれればもう少し安全な土地を目指して旅に出られると考えているのですが」
リビアラが恐縮してそう言った。
本当はもう少し時間が欲しいのだろう。限界まで急いで半年というところか。
ただ、この隠れ家は思ったよりも快適な暮らしができそうで、その点に関して白音は少し安心していた。
「魔物は討伐しましたってことにして、ここに半年隠れていられればいいのよね。でも大人しくしていてもらわないと困るから、食料の問題があるわね」
「またキャラバンが襲われたらまずいっすからね」
白音が作戦を練りながら日本語で呟くと、いつきが応じた。
彼女もまた、魔族夫婦の今後について頭を悩ませてくれているみたいだった。
「入り口は僕の魔法でカモフラージュすれば、もっとばれにくくなるっす。姐さんにリーパーしてもらえれば、普通の召喚英雄には看破できないレベルで一年以上はもつと思うっす」
『召喚英雄』な時点で『普通』ではないような気もするが、要は魔力強度の問題だろう。
それならばリーパーで、どこのどんな英雄様にだってばれないようにしてしまえる自信がある。
「お?」
白音といつきが相談をしていると、リプリンが突然そんな声を出した。
そして、すすすっと音も無く部屋の奥の方へと向かう。
それを見た白音は一瞬、莉美のことを想い出した。
間違いなくそれは、莉美が『何か面白いもの』を見つけた時の行動パターンだった。
「白音ちゃん、いつきちゃん」
リプリンが満面の笑顔で手招きをして、しかし囁くような声でふたりを呼ぶ。
見ればリプリンの側に、小さなベッドが置かれていた。
あり合わせのもので手作りされた感じだが、ちゃんとベッド柵も備え付けられている。
なるほどそういうことかと思いながらも、白音は一応リプリンを咎める。
「もう、だめでしょ、リプリン」
だが白音の顔も、既に満面の笑みになってしまっている。
「すみません、勝手に。…………でも、あの……、アーリエちゃんですよね。わたしたちも一緒に、いいですか?」
「是非、見てやって下さい」
アレイセスもリビアラも笑顔でそう言ってくれた。
少しは白音たちに心を許してくれたのかもしれない。
白音といつきはアーリエに触れる気満々なので、まずは手を洗わせてもらう。
「リプリンも手、洗いなさいよね」
「んー…………、表面を入れ替えたらキレイになる?」
そう言って彼女の体の表面が、僅かにうねうねと揺らいだのが見えた。
それまで外界と接触していた部分が強力な消化能力を持つスライムの体内へと陥入し、代わって真新しい界面が形成される。
確かにそうすれば簡単に清潔な状態が保てそうだった。
スライムずるい、と思いながら白音はいつきと一緒に慌てて手を洗う。
三人が行儀よく並んで膝をつき、そして小さな、本当に小さなベッドを目を輝かせて覗き込む。
生後半年の女の子、アーリエは目を覚ましていた。
角はもう少し大きくならないと生えないのでまだ無いが、小さな翼と短い尻尾はもう生えている。
その翼を時折パタパタと動かしているのが、まるで飛ぶ練習をしているように見える。
「わあ、かわいいー」
三人の口から、思わず同時に声が漏れた。
アーリエの方はどうやらリプリンに興味を持ったようで、ずっと彼女の動きを熱心に目で追っている。
「あー、あー」
アーリエが何かを求めるようにリプリンの方へ手を伸ばした。
するとリプリンが身を乗り出して、アーリエを抱きしめて頬ずりをした。
「なに味なのよー?」
「う、ちょ、リプリン? 切り取り方!! わたしの言ったこと、変なとこで切り取らないでよ!!」
白音は焦ってアレイセスとリビアラの方を見たが、ふたりは「どうぞどうぞ、抱いてやって下さい」と身振りで示してくれる。
日本語が通じなくて本当に良かったと思う。
リプリンはスライムと同じくらいプニプニとした、アーリエの頬の感触を堪能している。
「食べちゃダメ!」
「うん。もちろん」
白音は即答して順番を待つことにした。
「いやでも姐さん、魔族はみんな美形って一恵姐さんが言ってたんすけど、ほんとっすねぇ。この三人が親子っていうのが、絵になりすぎてて感動っす」
いつきがベッドのアーリエと、アレイセス、リビアラ夫婦を見比べながら言った。
「うんうん」
リプリンがなかなか代わってくれないので、白音はせめてアーリエの頭を撫でている。
「ゾア………、白音様に撫でていただいて、この子も無病息災、きっと強い子に育ってくれると思います」
夫婦揃って、なんだか神妙な面持ちで白音に頭を下げる。
「いやいや……、わたしをそんな魔除けの獅子舞みたいに言われても…………」
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