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第二部 魔法少女は、ふたつの世界を天秤にかける
第19話 再会 その三
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白音たちは仮面を付けて正体を隠した男に導かれ、地下牢からの脱出に成功した。
抜け穴から出た先は街の外壁のさらに外側。
小麦畑の中だった。
「そろそろこの場を離れた方がよろしいでしょう。拠点はどこになりますか?」
一緒に付いてきていた大魔道がそう促す。
確かに彼の言うとおり、いつまでも留まっていては城壁の不寝番に見つかってしまうだろう。
しかし大魔道は、当たり前のように白音たちと共について来る気でいるらしかった。
「え、いや……。ん? 道士、あなた佳奈たちの……カルチェジャポネの警備隊なんじゃぁ……」
「そうでしたが、何の問題もありません。わたしは常にあなた様の味方ですから」
確かに大魔道は、初めて出遭った時からそんな感じだった。
ふらりと魔族軍の下にやってきて、一緒に戦わせてくれと言ったらしい。
人づてに聞いた話だとその時、「絶対こっちの方が天国じゃないか」と言っていたとかなんとか。
そしてその軽い言葉とは裏腹に、最後まで命懸けで魔族に味方してくれたこともまたよく覚えている。
「セクハラさん、魔法で声、変えてるみたいっすけど」
いつきが白音に耳打ちをした。セクハラが名前みたいになっている。
「ああ。うん、そうね。魔族軍にいた時から多分そうだって言われてたわ。兜に変声魔法がかかってるんでしょう。ばれてはまずい事があるのか、ただのプレイなのか、いったいどっちなのかみんなで賭けのネタにされてたわ」
クスクス笑いながら白音は、街壁の高さを見積もり始めた。
内側の壁よりもかなり高く造られているが、いつきの幻覚魔法があれば気づかれずに飛び越えられるだろう。
しかし問題がひとつある。
(セクハラ大魔道抱いて飛ぶのかぁ……。この人中身多分日本人だから翼ないだろうしなぁ。きっと大喜びするんだろうなぁ)
そんな風に白音が考えていると、大魔道が地面に魔法陣を描いた。
それは白音が前世からよく知っているものだった。
それに先程も見せてくれていた。
大魔道が転移の魔法を発動させる時に使う魔法陣だ。
大魔道はこんな高度な魔法まで使いこなすのだ。
ストーカーに転移魔法とか、一番駄目な組み合わせじゃないかと思った記憶が蘇る。
「どうぞ」
転移陣を描き終えると、大魔道は一歩下がって恭しく頭を垂れた。
白音は、先に抱きかかえて飛ぼうかと言わなくてよかったと思った。
言ってしまったらせっかく白音に抱かれるチャンスなのだ。
絶対に魔法陣を出してくれなくなるだろう。
「街の中へ向かわれるのですよね? ひとまず、壁のすぐ向こう側へ出られるようにしています」
「ありがとう」
これにはリプリンが大喜びした。
白音の胎内にいたまま一緒に転移したことはあるが、自分ひとりの体で転移されるのは初めての経験なのだ。
遊園地のアトラクションに乗るような感覚で興奮している。
一目散に魔法陣へと突っ込んでいって消えた。
さすがは黄色いファーストペンギンをパパと呼ぶだけのことはある。
続いて白音が転移陣の中に入るが、自分が初めて転移陣を使った時は結構怖かったのになと、少し思い出す。
白音が街の中へと転移を終えると、何故か目の前でリプリンが不定形のスライム状になって横たわっていた。
そして全員が転移を終え、最後に大魔道が現れると、突然ぷるぷると震え始めた。
「転送失敗でこんなんなっちゃったよう。助けて大魔道……」
それを聞いた大魔道は、これ以上ないと言うくらいに狼狽した。
「そ、そんな馬鹿な……」
自分はなんということをしてしまったのか、いったい何が悪かったのか、目の前のこの子を救うにはどうすればいいのか。
焦った様子でそんなことを口走っている。
いつきとちびそらも事態が飲み込めずに固まってしまっていたが、しかし白音だけはひとり、笑い出した。
「あははは。ありそう、ありそう。ホラー映画とかでそんなの見た気がする」
そしてあのセクハラ大魔道を慌てさせるリプリンはさすがだと思った。
「あー、道士。平気よ。この子こういう子なの。スライムなのよ」
「なんと?! 高度な知性を有し、ユーモアを解するスライム、ですと?!」
大魔道はリプリンの横にしゃがみ込み、まだ液状のままの体を興味深げに突っついてみる。
「わたし、リプリン。よろしくね」
スライムの中からリプリンの顔が形成されて自己紹介をした。
「よ、よろしく」
大魔道が日本語に切り替えてそう言った。
「いつきちゃん、幻覚ありがとうね。道士、彼女は火浦いつきちゃん。幻覚魔法のプロよ」
大魔道とリプリンが目立ちすぎて怖いので、幻想を投射していたいつきも紹介する。
「よ、よろしくっす。セク……大魔道さん」
「宜しくお願いします。かわいい戦士さん」
それを聞いていつきが一歩後ずさった。
「それからえーと……、」
白音がちびそらの姿を探し求めると、リプリンがいつきのポシェットの中から顔を出した。
左手を挙げて「よっ!」と挨拶をする。
「先程から気にはなっていたのです。この方は妖精族……ではないようですね?」
「この子はちびそらちゃん。ちょっと説明が難しいんだけど、人造生命体でいいのかしら……? ものすごく頭のいい子よ。とっても頼りになるの」
「!!」
大魔道はもう驚きすぎて、驚くことを諦めた。
「ともあれ、よろしくお願いします」
大魔道が丁寧に頭を下げると、ちびそらが「うむ」と返す。
お互い相手のことを何だと思っているのだろうか。
よく分からない存在、という点ではいい勝負だろう。
白音が頼りになる仲間たちをちょっと自慢げに紹介し終えると、今度は大魔道が地面に片膝をついた。
寒い冬の夜、凍てつく路地の冷たさにも構わず膝をつき、恭しく頭を下げる。
「お帰りなさいませ。白百合様。そしてお体を手に入れられたようで何よりです。再び相まみえることができましたこと、誠に喜ばしい限りです」
やはりデイジーと白音の間に深い繋がりがあることは、ひと目見ただけで大魔道にも感じられたらしい。
しかし大魔道は、デイジーが現世界で誰かの体を乗っ取り、復活を果たしてこちらの世界に還ってきたのだと思っているようだった。
実際リンクスや大魔道はそう目論んでいたらしいが、彼らにそんな酷いことをさせずに済んで良かったと、白音は心から思っている。
「ちょっと事情があって、人間の体を乗っ取ったとかじゃないんだけどね。事情は後で話すわね」
後で、と言うあたり、白音も既に大魔道を仲間として受け容れているように見える。
「そうですか。どのような事情があるにせよ、お待ちした甲斐がありました。殿下もさぞやお喜びのことでしょう」
大魔道がごく自然な動作で手を取ろうとしたので、白音は反射的に手を引いた。
拒絶されるのはいつものことなので、大魔道も特に気に留める様子はない。
しかしその時、白音は大魔道の兜から雫が数滴、伝い落ちるのを見てしまった。
顎の部分からこぼれ出て、ぽたりぽたりと、それは涙だった。
リンクスを命懸けで現世界へと送り出してくれた。
自らを休眠状態にしてまで、二十年近くも待っていてくれた。
そしてデイジーの復活に、白音との再会に、心からの涙を流してくれているのだ。
「…………」
白音は考え直してそっと手を差し出した。
別に自分の手ごときで、その献身に報いたことになるとは思っていない。
しかし避け続けて距離を置いたままでいるのは少し違うと感じたのだ。
鉄兜を被ったままでいるから、手の甲にキスするわけにもいくまい。
いったいどうするんだろうと思っていると、大魔道は、差し出された白音の手を両手で挟んで撫でさすり始めた。
「ぅぅ……」
「天国です」
「ぬうぅぅぅぅ……」
「すべすべです」
「ぐうぅぅぅぅ……」
「コスチュームも白百合の名にふさわしく、白がよくお似合いです」
「もうっ!!」
いつまでもしつこいセクハラに、とうとう白音がキレた。
ひゅっ、という風切り音と共にしゃがんでいる大魔道の頭を狙って蹴りを放つ。
しかし大魔道は少し後ろに身を反らし、それをあっさりとかわしてしまった。
いつきやちびそら、リプリンにすれば目で捉えられるような速度ではなかったのだが、完全に見切って避けている。
「しかし、白百合様、随分穏やかになられましたね」
ゆっくりと立ち上がりながら大魔道が言った言葉に、いつきが思わず「え?」と返してしまった。
今まさに白音は心中穏やかではないと思うのだが……。
「以前でしたら、そもそも手など差し出されませんでした」
大魔道はまだ頭を下げたままで礼を示している。
その言葉に、いつきはなるほど、と納得してしまった。
「もう……今度やったら許さない。それと、白百合って呼ぶのはやめて? 今のわたしは名字川白音よ。白音って呼んで。…………『白音っ』じゃないわ。いい? 『白音』、ね」
「承知しました。白音様」
「うん。じゃあみんな、ひとまず宿に向かいましょうか」
白音がそう言うと、しかしいつきがおずおずといった感じで申し出た。
「あの…………っすね。大魔道が見た目インパクト大なんでずっと魔法かけてごまかしときたいんすけど、街にいる間ずっとだと魔力切れしそうで……」
いつきはせめてもう少し目立たない格好にして欲しいと思って言ったのだが、大魔道は別の意味に解釈したようだった。
「その時は遠慮なくわたしの魔力を使ってください」
そう言って大魔道が今度はいつきの手を握ろうとしたので、いつきは思わず飛びすさってしまった。
背中がうぞぞわぞわと、まるでリプリンのように粟立っている。
「道士、魔力はお願いしたいけど、この子たちに変なことしたら許さないわよ?」
白音が今回は意図して、強烈な殺気を大魔道に対して放った。
「もちろんです。わたしにはもう、白音様しか見えていませんから」
「…………安心するべきなのか、怒るべきなのか、迷うんだけど…………」
「ご随意に」
「もう…………」
仮面と変声魔法で感情が読めないが、大魔道は白音の殺気をむしろご褒美だと思っていそうな雰囲気だった。
抜け穴から出た先は街の外壁のさらに外側。
小麦畑の中だった。
「そろそろこの場を離れた方がよろしいでしょう。拠点はどこになりますか?」
一緒に付いてきていた大魔道がそう促す。
確かに彼の言うとおり、いつまでも留まっていては城壁の不寝番に見つかってしまうだろう。
しかし大魔道は、当たり前のように白音たちと共について来る気でいるらしかった。
「え、いや……。ん? 道士、あなた佳奈たちの……カルチェジャポネの警備隊なんじゃぁ……」
「そうでしたが、何の問題もありません。わたしは常にあなた様の味方ですから」
確かに大魔道は、初めて出遭った時からそんな感じだった。
ふらりと魔族軍の下にやってきて、一緒に戦わせてくれと言ったらしい。
人づてに聞いた話だとその時、「絶対こっちの方が天国じゃないか」と言っていたとかなんとか。
そしてその軽い言葉とは裏腹に、最後まで命懸けで魔族に味方してくれたこともまたよく覚えている。
「セクハラさん、魔法で声、変えてるみたいっすけど」
いつきが白音に耳打ちをした。セクハラが名前みたいになっている。
「ああ。うん、そうね。魔族軍にいた時から多分そうだって言われてたわ。兜に変声魔法がかかってるんでしょう。ばれてはまずい事があるのか、ただのプレイなのか、いったいどっちなのかみんなで賭けのネタにされてたわ」
クスクス笑いながら白音は、街壁の高さを見積もり始めた。
内側の壁よりもかなり高く造られているが、いつきの幻覚魔法があれば気づかれずに飛び越えられるだろう。
しかし問題がひとつある。
(セクハラ大魔道抱いて飛ぶのかぁ……。この人中身多分日本人だから翼ないだろうしなぁ。きっと大喜びするんだろうなぁ)
そんな風に白音が考えていると、大魔道が地面に魔法陣を描いた。
それは白音が前世からよく知っているものだった。
それに先程も見せてくれていた。
大魔道が転移の魔法を発動させる時に使う魔法陣だ。
大魔道はこんな高度な魔法まで使いこなすのだ。
ストーカーに転移魔法とか、一番駄目な組み合わせじゃないかと思った記憶が蘇る。
「どうぞ」
転移陣を描き終えると、大魔道は一歩下がって恭しく頭を垂れた。
白音は、先に抱きかかえて飛ぼうかと言わなくてよかったと思った。
言ってしまったらせっかく白音に抱かれるチャンスなのだ。
絶対に魔法陣を出してくれなくなるだろう。
「街の中へ向かわれるのですよね? ひとまず、壁のすぐ向こう側へ出られるようにしています」
「ありがとう」
これにはリプリンが大喜びした。
白音の胎内にいたまま一緒に転移したことはあるが、自分ひとりの体で転移されるのは初めての経験なのだ。
遊園地のアトラクションに乗るような感覚で興奮している。
一目散に魔法陣へと突っ込んでいって消えた。
さすがは黄色いファーストペンギンをパパと呼ぶだけのことはある。
続いて白音が転移陣の中に入るが、自分が初めて転移陣を使った時は結構怖かったのになと、少し思い出す。
白音が街の中へと転移を終えると、何故か目の前でリプリンが不定形のスライム状になって横たわっていた。
そして全員が転移を終え、最後に大魔道が現れると、突然ぷるぷると震え始めた。
「転送失敗でこんなんなっちゃったよう。助けて大魔道……」
それを聞いた大魔道は、これ以上ないと言うくらいに狼狽した。
「そ、そんな馬鹿な……」
自分はなんということをしてしまったのか、いったい何が悪かったのか、目の前のこの子を救うにはどうすればいいのか。
焦った様子でそんなことを口走っている。
いつきとちびそらも事態が飲み込めずに固まってしまっていたが、しかし白音だけはひとり、笑い出した。
「あははは。ありそう、ありそう。ホラー映画とかでそんなの見た気がする」
そしてあのセクハラ大魔道を慌てさせるリプリンはさすがだと思った。
「あー、道士。平気よ。この子こういう子なの。スライムなのよ」
「なんと?! 高度な知性を有し、ユーモアを解するスライム、ですと?!」
大魔道はリプリンの横にしゃがみ込み、まだ液状のままの体を興味深げに突っついてみる。
「わたし、リプリン。よろしくね」
スライムの中からリプリンの顔が形成されて自己紹介をした。
「よ、よろしく」
大魔道が日本語に切り替えてそう言った。
「いつきちゃん、幻覚ありがとうね。道士、彼女は火浦いつきちゃん。幻覚魔法のプロよ」
大魔道とリプリンが目立ちすぎて怖いので、幻想を投射していたいつきも紹介する。
「よ、よろしくっす。セク……大魔道さん」
「宜しくお願いします。かわいい戦士さん」
それを聞いていつきが一歩後ずさった。
「それからえーと……、」
白音がちびそらの姿を探し求めると、リプリンがいつきのポシェットの中から顔を出した。
左手を挙げて「よっ!」と挨拶をする。
「先程から気にはなっていたのです。この方は妖精族……ではないようですね?」
「この子はちびそらちゃん。ちょっと説明が難しいんだけど、人造生命体でいいのかしら……? ものすごく頭のいい子よ。とっても頼りになるの」
「!!」
大魔道はもう驚きすぎて、驚くことを諦めた。
「ともあれ、よろしくお願いします」
大魔道が丁寧に頭を下げると、ちびそらが「うむ」と返す。
お互い相手のことを何だと思っているのだろうか。
よく分からない存在、という点ではいい勝負だろう。
白音が頼りになる仲間たちをちょっと自慢げに紹介し終えると、今度は大魔道が地面に片膝をついた。
寒い冬の夜、凍てつく路地の冷たさにも構わず膝をつき、恭しく頭を下げる。
「お帰りなさいませ。白百合様。そしてお体を手に入れられたようで何よりです。再び相まみえることができましたこと、誠に喜ばしい限りです」
やはりデイジーと白音の間に深い繋がりがあることは、ひと目見ただけで大魔道にも感じられたらしい。
しかし大魔道は、デイジーが現世界で誰かの体を乗っ取り、復活を果たしてこちらの世界に還ってきたのだと思っているようだった。
実際リンクスや大魔道はそう目論んでいたらしいが、彼らにそんな酷いことをさせずに済んで良かったと、白音は心から思っている。
「ちょっと事情があって、人間の体を乗っ取ったとかじゃないんだけどね。事情は後で話すわね」
後で、と言うあたり、白音も既に大魔道を仲間として受け容れているように見える。
「そうですか。どのような事情があるにせよ、お待ちした甲斐がありました。殿下もさぞやお喜びのことでしょう」
大魔道がごく自然な動作で手を取ろうとしたので、白音は反射的に手を引いた。
拒絶されるのはいつものことなので、大魔道も特に気に留める様子はない。
しかしその時、白音は大魔道の兜から雫が数滴、伝い落ちるのを見てしまった。
顎の部分からこぼれ出て、ぽたりぽたりと、それは涙だった。
リンクスを命懸けで現世界へと送り出してくれた。
自らを休眠状態にしてまで、二十年近くも待っていてくれた。
そしてデイジーの復活に、白音との再会に、心からの涙を流してくれているのだ。
「…………」
白音は考え直してそっと手を差し出した。
別に自分の手ごときで、その献身に報いたことになるとは思っていない。
しかし避け続けて距離を置いたままでいるのは少し違うと感じたのだ。
鉄兜を被ったままでいるから、手の甲にキスするわけにもいくまい。
いったいどうするんだろうと思っていると、大魔道は、差し出された白音の手を両手で挟んで撫でさすり始めた。
「ぅぅ……」
「天国です」
「ぬうぅぅぅぅ……」
「すべすべです」
「ぐうぅぅぅぅ……」
「コスチュームも白百合の名にふさわしく、白がよくお似合いです」
「もうっ!!」
いつまでもしつこいセクハラに、とうとう白音がキレた。
ひゅっ、という風切り音と共にしゃがんでいる大魔道の頭を狙って蹴りを放つ。
しかし大魔道は少し後ろに身を反らし、それをあっさりとかわしてしまった。
いつきやちびそら、リプリンにすれば目で捉えられるような速度ではなかったのだが、完全に見切って避けている。
「しかし、白百合様、随分穏やかになられましたね」
ゆっくりと立ち上がりながら大魔道が言った言葉に、いつきが思わず「え?」と返してしまった。
今まさに白音は心中穏やかではないと思うのだが……。
「以前でしたら、そもそも手など差し出されませんでした」
大魔道はまだ頭を下げたままで礼を示している。
その言葉に、いつきはなるほど、と納得してしまった。
「もう……今度やったら許さない。それと、白百合って呼ぶのはやめて? 今のわたしは名字川白音よ。白音って呼んで。…………『白音っ』じゃないわ。いい? 『白音』、ね」
「承知しました。白音様」
「うん。じゃあみんな、ひとまず宿に向かいましょうか」
白音がそう言うと、しかしいつきがおずおずといった感じで申し出た。
「あの…………っすね。大魔道が見た目インパクト大なんでずっと魔法かけてごまかしときたいんすけど、街にいる間ずっとだと魔力切れしそうで……」
いつきはせめてもう少し目立たない格好にして欲しいと思って言ったのだが、大魔道は別の意味に解釈したようだった。
「その時は遠慮なくわたしの魔力を使ってください」
そう言って大魔道が今度はいつきの手を握ろうとしたので、いつきは思わず飛びすさってしまった。
背中がうぞぞわぞわと、まるでリプリンのように粟立っている。
「道士、魔力はお願いしたいけど、この子たちに変なことしたら許さないわよ?」
白音が今回は意図して、強烈な殺気を大魔道に対して放った。
「もちろんです。わたしにはもう、白音様しか見えていませんから」
「…………安心するべきなのか、怒るべきなのか、迷うんだけど…………」
「ご随意に」
「もう…………」
仮面と変声魔法で感情が読めないが、大魔道は白音の殺気をむしろご褒美だと思っていそうな雰囲気だった。
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