異世界農家のスローライフ

asahi

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新しい命の準備

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朝靄が晴れ、柔らかな陽射しが森に差し込む。春の訪れが大地に命を与え、木々の葉は鮮やかに芽吹き始めていた。

そんな穏やかな朝、悠馬はいつもより早く目を覚ました。
隣ではリリーナが静かに寝息を立てており、そのお腹は日に日にふっくらとしてきている。

(もう少しで……この家に、新しい命が加わるんだな)

そう思いながら、そっと彼女の髪を撫でると、リリーナが目を覚ました。

「……ん、おはよう、悠馬」

「おはよう。ごめん、起こしちゃった?」

「ううん、大丈夫。ちょっと最近、寝付きも浅いのよね。赤ちゃん、活発になってきたみたい」

そう言ってリリーナは優しくお腹を撫でる。
その表情はどこまでも柔らかく、母になるという実感が日々増しているようだった。

朝食の支度は、ユキの新鮮なミルク、焼きたてのパン、そしてゼムから分けてもらった月兎草を加えた野菜スープ。

「この香り……すごく落ち着くわ」

「うん。月兎草って妊婦さんにもいいらしいし、しばらくは常備しておこう」

「ゼムさん、ほんとに頼りになるわね」

「最近はもう、あのおじさんが来るのが楽しみになってるよ」

そんな会話をしながら食卓を囲む。
ピコとポコはすでに外で遊んでおり、チュンもその周りを飛び回っていた。ルナとミリィはリリーナの足元で丸まって、のんびりと朝日を浴びている。

すると、外からガタンという音が聞こえた。

「ん? 誰か来た?」

悠馬が玄関を開けると、そこには木の箱を抱えたゼムの姿があった。

「ほっほっほ、朝からすまんのう。ちと贈り物を持ってきたのじゃよ」

「ゼムさん! また何か見つけたんですか?」

「むろんじゃ。おぬしらにピッタリのものよ」

ゼムが置いた箱の中には、細かく削られた木材と麻布、そして羊毛が詰められていた。

「これ、もしかして……」

「ふむ、産まれてくる赤ん坊のためのゆりかごの材料じゃよ。森の精霊に祝福された木を使ってな。手先の器用なあんたになら、きっと立派なものが作れるじゃろうて」

「ゼムさん……本当に、ありがとうございます!」

リリーナも感極まったように目を潤ませ、ゼムに深く頭を下げた。

「ほっほっほ。礼には及ばんよ。わしもおぬしらの暮らしを見るのが楽しみでのう」

その日から、悠馬は毎日の作業の合間に、ゆりかご作りに取り掛かった。

森の奥から切り出してきた精霊木は、優しい香りを放ち、削っているだけで心が落ち着いてくる。

シエルが傍らで見守り、ルーファスが時折木材を運ぶのを手伝ってくれる。
ルナとミリィも、まるで子育てに関わるように近くで寄り添っていた。

(これが家族なんだな……魔物も人も関係なく、支え合って生きていく)

完成したゆりかごは、木の温もりが感じられる素朴で優しい形だった。
中にはルナの毛から分けてもらったふわふわの詰め物が敷かれ、ピコが運んできた香草の小束が添えられている。

「……これで、準備は整ったね」

「ええ、ありがとう、悠馬。きっと赤ちゃんも喜ぶわ」

リリーナは満面の笑みでゆりかごを撫でる。
その瞳は希望に満ち、まるで未来を見つめているようだった。

ある日の夕方。
リリーナが少しだけ体調を崩した。

「うっ……ちょっと、立ちくらみが……」

「大丈夫!? 無理しないで、すぐ横になって」

慌てて支えた悠馬は、彼女を寝台に運び、ユキのミルクとハーブティーを淹れてくる。ルナとミリィが彼女の足元にぴたりと寄り添い、チュンが静かに鳴く。

「ふぅ……ありがとう、ちょっと疲れてただけみたい」

「……出産も近いのかもしれないな。しばらくは作業も家事も、俺に任せて」

「悠馬……うん、ありがとう。赤ちゃんと、悠馬のためにも、頑張るね」

彼女の手を握りしめる悠馬。その温もりに、リリーナは目を閉じて小さく微笑んだ。

その夜――

焚き火の前で、二人は並んで座っていた。
空には満月が浮かび、静かに森を照らしている。

「あと少しで、会えるんだね」

「うん。きっと、かわいい子だよ」

「悠馬に似て、優しくて、しっかり者で……ふふ、私が負けちゃうかも」

「俺はリリーナに似て、頑張り屋さんで、ちょっと甘えん坊な子だと思うけどな」

そんな何気ない会話が、たまらなく愛おしい。
二人が見つめる先には、未来が広がっていた。

そして数日後――

「……悠馬、なんだか……お腹が、痛い……かも」

「えっ!? まさか……!」

夜の静けさを破って、出産の兆しが訪れる――。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

一響(にのまえ ひびき)

とても読みやすい文章でスラスラ読めます。
描写も分かりやすく、情景が手に取るように浮かんできました。

内容も、「牧場物語」を彷彿とさせるような、ゆっくりとした時間を疑似体験できる作品だと感じました。

まだ4話目に差し掛かったところなので、引き続き楽しませて頂きます。

2025.05.21 asahi

感想ありがとうございます!

解除

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