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魔法使いの女の子
しおりを挟む日記、六日目。
この世界での生活も六日目。
昨日はマリアさんとの料理対決で勝って、村での居場所がしっかりした気がする。
リナとキラ(フェザーモル!)のおかげで、毎日が楽しくなってきた。
でも、今日、ついに王都ルミエールへの旅の準備が始まった。
新しい食材や、魔法を使った料理の話も聞いて、ワクワクが止まらない。
この世界の料理、もっと深く知りたいな。
---
朝、宿屋「オークの休息」の食堂は、いつも通り賑やかだった。
村人たちが朝食を食べながら、昨日の料理対決の話をまだしてる。
キラは僕の足元でピピッと鳴きながら、クラグポテトの欠片をつついてる。
リナはいつものようにパンとスープをガツガツ食べて、目を輝かせてた。
「優、昨日のグリルとチーズケーキ、ほんとやばかったよ! 村の子供たちが、キラのキラキラトッピングの話で盛り上がってるんだから!」
「はは、キラの羽、めっちゃ効果的だったよね。キラはいい仕事してくれたね。」
キラがピピッと嬉しそうに鳴いて、僕の膝にすり寄ってきた。
この子、ほんと可愛いな。
でも食材として使うか、仲間として連れてくか、まだちょっと悩む。
その時、カールさんがカウンターから声をかけてきた。
「おい、優。お前の料理のおかげで、宿屋が繁盛してんだが食材がもう底をつきそうなんだよ。市場も品薄になってきたし、これからどうする?」
「うーん、確かに、昨日でクラグポテトとか結構使っちゃったし……。リナ、森でまた食材集めに行く?」
リナが、ニヤッと笑った。
「いいね! でもさ、優、そろそろ村の外に出てみるってのもアリじゃない? 王都ルミエールに行くなら、途中の森や町で、もっと面白い食材見つかるよ!」
「王都、か……。でも、すぐに行くのはちょっと早いかな? 旅の準備とか、どうすればいいんだろう?」
リナが、目をキラキラさせて言った。
「大丈夫! 私は冒険者だから、旅の準備はお任せあれ!馬車の手配とか、道中のモンスター対策とか、私がバッチリやってあげるよ!それに、優の料理があれば、道中も美味しいもの食べられるし!」
「はは、頼もしいな。じゃあ、まずはどんな食材が必要か考えてみるか。」
その時、食堂のドアがガチャッと開いた。
入ってきたのは、黒いローブをまとった女の子。
長い銀色の髪と、青い目が印象的だ。
手に持ってるのは、木の杖。
なんか、魔法使いっぽい雰囲気。
村人たちが、チラチラと彼女を見て、ヒソヒソ話してる。
「ね、リナ、あの子、誰?」
リナが、ちょっと驚いた顔で答えた。
「あ、カイラだ! 村にたまに来る魔法使いだよ。冒険者ギルドに所属してるんだけど、普段は王都にいるんだ。食材の魔法的な効果を研究してる、ちょっと変わった子だよ。」
カイラが僕たちのテーブルに近づいてきた。
彼女の目は、キラに釘付けだ。
「あなたが、フェザーモルの羽を使った料理を作った人? 私はカイラ、よろしくね。そのフェザーモル、どこで手に入れたの?」
「えっ?うん、僕は月森優。 この子はキラだよ。森でリナが捕まえたんだ。羽をトッピングに使ったら、キラキラして美味しかったよ。」
カイラが、目を輝かせて言った。
「やっぱり! フェザーモルの羽には、微量の魔力が含まれてて、食べると気分が少し高揚するの。 あなたは料理でその効果を引き出したんだね!すごい才能だよ!」
「は?!魔力!? そんな効果があったの?」
リナが驚いた顔で割り込んできた。
「カイラ、それほんと!? じゃあじゃあ、優の料理ってば魔法の料理ってこと!?」
カイラが、クスクス笑った。
「まぁ、そういう言い方もできるかな。 エルドリア大陸の食材には、魔力が宿ってるものが多いの。 特に王都の市場には、魔法のスパイスや、モンスターの素材がたくさんあるよ。私は食材の魔力を研究してるから、あなたの料理にとても興味あるわ。」
「王都の市場?どんな食材があるの?」
カイラが杖を軽く振って、空中に小さな光のリストを投影した。
これが魔法!?
すげえ!
「例えばドラゴンベリーは、食べると一時的に体力が上がるの。フロストハーブは、冷やす効果があって、デザートに使うとひんやりする。 あと、ゴールデンホークの肉は、調理法次第で集中力を高める効果があるよ。」
「ドラゴンベリー!? ゴールデンホーク!? 料理したらどんな味になるんだろう!?」
頭の中で、メニューがどんどん膨らんでいく。
ドラゴンベリーのジャム、フロストハーブのシャーベット、ゴールデンホークのロースト……。
考えるだけで、ヨダレが出そう。
カイラが、微笑んで言った。
「あなたが料理に興味あるなら、王都に来るべきだよ。ルミエールの料理コンテストを知ってる? 魔法と料理を組み合わせた、すごい料理人たちが集まるの。私はそこで食材の魔力を試す予定なんだけど、一緒に来ない?」
リナが、目を輝かせて叫んだ。
「お!カイラも王都に行くの!? 優、絶対行くよね!?私とカイラ、優の三人で、最高の冒険になるよ!」
「三人!? カイラも一緒に?」
カイラがちょっと照れながら頷いた。
「もし嫌じゃなければ。あなたの料理と私の魔法を組み合わせたら、面白いことになると思うんだ。」
「嫌じゃないよ! むしろ、凄く楽しみ! 魔法で料理って、どんな風になるんだろう?」
カイラが杖を軽く振って、小さな光の球を作った。
「例えば火の魔法で、完璧な火加減にできるよ。氷の魔法なら、食材を瞬時に冷やして新鮮さを保てる。私の魔法とあなたの料理は絶対相性いいよ!」
リナが興奮してテーブルを叩いた。
「やばい! 優の料理にカイラの魔法! こーれ、王都のコンテスト!優勝狙えるよ!」
「はは、まだ気が早いって! でも面白そう。 …よし!カイラ、リナ、キラ、みんなで王都目指そう!」
キラが、ピピッと鳴いて、同意してるみたい。
なんか、即席にしてはいいチームになるんじゃないかな?
---
昼過ぎ、僕たちは王都への旅の準備を始めた。
カールさんが、馬車のルートを教えてくれた。
オークウェルからルミエールまでは、馬車で三日くらい。
途中、モンスターが出る森や、小さな町があるらしい。
リナモンスター対策の装備をチェックして、カイラが魔法の道具を準備してる。
僕の役割は、道中の食事。
「優は道中の料理、頼んだよ! モンスターの肉とか、森の食材とってくるから美味しいもの作ってよね!」
「うん、任せて! カイラの魔法もあるしどんな食材も美味しくしてみせるよ!」
カイラが微笑んで言った。
「じゃあ、早速試してみる? 村の外に、面白い食材があるの。スプリングリザードの卵って食べたことある?」
「スプリングリザード!? 卵!? どんな味!?」
「ふふ、焼くと、クリーミーで、ちょっとハーブみたいな風味があるの。私の魔法で、卵の鮮度を保ちながら運べるから、採りに行こう!」
リナが拳を握って叫んだ。
「よし、行くぞ! スプリングリザード、捕まえるの、私得意だから! 優、カイラ、キラ、冒険開始だ!」
キラが、ピピッと鳴いて、飛び跳ねてる。
僕も、なんだか胸が熱くなってきた。
王都への旅、どんな食材や料理が待ってるんだろう?
カイラの魔法と組み合わせたら、どんなすごい料理ができるんだろう?
夕方、僕たちは村の外の森へ向かった。
スプリングリザードの卵を探しながら、キラが先頭でピピッと鳴いてる。
リナが弓を構え、カイラが杖を手に、僕が食材袋を持って。
このチーム、なんか、めっちゃいい感じじゃない?
この日記はリナがまた紙を貸してくれた。
早く自分で買えるようにならないとな。
キラは、僕の肩に乗って寝てる。
明日はいよいよ、王都への旅の第一歩。
どんな冒険が待ってるかな?
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