優の異世界ごはん日記

風待 結

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ウィンドホロウの町と新たな絆

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日記、九日目。


ルミエールへの旅の二日目。  
ウィンドホロウの町で、市場の新しい食材を使った料理が旅人たちに大好評だった。  
でも、市場でちょっとしたトラブルに巻き込まれたんだ。  
リナの行動力、カイラの冷静な魔法、キラの鋭い嗅覚、そして僕の料理で、なんとか場を収めた。  
その過程で、意外な人物との絆が生まれた。  
王都ルミエールが近づくにつれて、冒険も料理も、どんどん面白くなってきたよ。  

---

朝、ウィンドホロウの宿屋「シルバーリーフ亭」で目を覚ました。  
木の窓から差し込む朝日が、部屋を暖かく照らしてる。  
キラは、僕の枕の上でピピッと小さな声で鳴きながら、ふわふわの羽を揺らしてる。  
可愛い。朝から癒やされる。
リナはまだグースカ寝てるけど、カイラはもう起きてて、杖を手に魔法のメモを整理してる。  

「カイラ、おはよう。 何してるの?」  

カイラが、微笑んで光るメモを見せてくれた。  

「おはよう、優。  昨日の料理の魔力を記録してたの。 シルバーリーフの動きを速くする効果はちゃんと出てたわ。それにブレイズナッツのリフレッシュ効果も、旅人に効いてた。あなたの料理の魔力を引き出す才能はほんとすごいわね。」

「へえ、ほんと!?  魔法の効果って、料理でそんなに変わるんだ?」

「ええ、食材の魔力は、調理法で大きく変わるの。 あなたの場合、味と魔力のバランスが絶妙なのよ。ルミエールのコンテストでも絶対注目される!」  

リナがベッドからガバッと起きて叫んだ。  

「コンテスト!?  よし!優、優勝狙おうぜ!  よーし!私も、冒険者として有名になってやる!  カイラ、キラ、みんなでトップだ!」  

リナが力強く拳を振り上げる。
キラが、ピピッと鳴いて、リナの肩に飛び乗った。  
キラもやる気満々なのかな?
このチームはほんと最高の雰囲気だ。  

宿屋の食堂で朝食を食べながら、今日の予定を立てた。  
ウィンドホロウにもう一日滞在して、近場で少し狩りでもして、市場などで食材を補充。  
明日は次の町を経て、ルミエールまであと一日。  
でも、リナがちょっと心配そうに言った。  

「優、カイラ、ちょっと話があるんだけど……。 昨日、市場で聞いたんだ。ルミエールに向かう道で、最近、ブラックウルフってモンスターが増えてるらしい。でかくて、めっちゃ強いんだって。」  

「ブラックウルフ!?  それ、危なくない!?」  

カイラが落ち着いた声で答えた。  

「確かに、ブラックウルフは手強いわ。でも私の魔法とリナの弓があれば、対抗できる。  優は戦闘を私たちに任せて、料理で士気を上げてね。」  

「うん、わかった!  じゃあ、まずは昼まで近くを散策して昼過ぎに市場でブラックウルフの肉に合う食材探そう。もし倒せたら、美味しい料理にしてみせるよ!」  

リナが拳を握って叫んだ。  

「それだ!  優の料理なら、ブラックウルフもただの食材だよ!  キラも、モンスター見つけるの手伝ってね!」  

キラが、ピピッと鳴いて、まるで「任せて!」って言ってるみたい。  


馬車に乗り込んだ。
リナが御者を務め、カイラが地図を確認しながら、キラはいつものように僕の膝でピピッと鳴いてる。
森の道は少し揺れるけど、景色が綺麗で心地いい。

道の途中でお腹が空いてきた頃に、リナが馬車を止めた。
木々が囲む小さな休憩所で、誰もいない静かな場所。
みんなで少し休憩しようってことになったんだ。
カイラが魔法で小さな炎を起こしてくれて、暖かい空気が広がる。
こんな仲間だけの時間、最高だよ。

「優、なんか簡単なもの作ってよ! 持ってる食材でさ。スターライトベリー、余ってるよね?」  

リナがニコニコしながら、布の袋からベリーを取り出して言った。キラもピピッと鳴って、袋を突っついてる。カイラは杖を軽く振って、食材の魔力をチェックしてくれた。

「うん、スターライトベリーはまだ新鮮よ。疲労回復の効果が残ってるわ。ブレイズナッツも少しあるし、簡単なスナックにしたらいいかもね。」  

「よし、じゃあ、ちょっとした料理を作ってみるよ。みんなの元気をチャージするやつ!」  

僕は、持ってきた道具を使って、素早く準備を始めた。
まず、スターライトベリーを洗って、軽く潰して甘酸っぱいソースみたいにする。
カイラの炎で温めると、キラキラ光る実がさらに輝いて、まるで宝石のジュースみたいになった。
次に、ブレイズナッツを軽くロースト。
香ばしい匂いが辺りに広がって、みんなの顔がほころぶ。

それを、馬車に積んでたパンに塗って、簡単なオープンサンドイッチ風に仕上げる。スターライトベリーのソースをベースに、ブレイズナッツをトッピングして、少しの塩とカイラの魔法のハーブを加えるだけ。すぐ出来上がったよ。
こんな道中だから、複雑な料理はできないけど、みんなの笑顔のために十分だ。

「できたよ! スターライトベリーとブレイズナッツのクイックスナック。食べたら、みんな元気になるはず!」  

リナがすぐに手を伸ばして、頬張った。  

「わー、甘酸っぱくて香ばしい! スターライトベリーの効果で、体が軽くなった気がするよ。優、さすがだなあ!」  

カイラが、食べながら杖で自分を分析して笑った。  

「本当ね。スターライトベリーの疲労回復効果がちゃんと出てるわ。ブレイズナッツの香ばしさが、気分をリフレッシュさせてる。優の料理、魔力を引き出すのが上手すぎるよ。」  

キラは、ピピッと鳴きながら、自分の分をパクパク食べてる。
なんか、キラの目がキラキラしてて、元気になってるみたいだ。可愛いなあ。

みんなで木陰に座って食べながら、くだらない話をした。
王都の噂や、キラの面白い行動について。
リナが「次は、ルミエールでドラゴンの鱗を使った料理作ってよ!」って言って、みんな爆笑した。こんなシンプルな食事でも、仲間と一緒にいると、特別な味になるんだよな。

この旅で料理を通じてみんなを幸せにできるって、改めて思った。
どんな食材が待ってるのか、ワクワクが止まらないよ。

---

昼前に僕たちはウィンドホロウの市場に戻った。  
昨日より人が多く、商人、旅人、冒険者で賑わってる。  
屋台には、ムーンビーンズ(月明かりのような光沢の豆)、ファイアトマト(ピリ辛の赤いトマト)、ウィンドハーブ(風のような爽やかなハーブ)が並んでる。  
クラウドマッシュルームも、ふわっとした食感が魅力的だ。  

「うわ、ムーンビーンズ、すっごくキレイだね!どんな味なんだろう?」  

カイラがムーンビーンズを手に取って調べた。  

「茹でると甘みが強くなるわ。魔力的には、夜の視界を良くする効果がある。 旅の夜にピッタリだね。」  

「ファイアトマトは?」  

「それは、体力を少し回復する感じね。ピリ辛で、スープやソースにいいかも。」  

リナがファイアトマトを手に持ってニヤニヤ。  

「よーし!これ、ブラックウルフの肉に絶対合う! 優、スパイシーな料理、作っちゃお!ね?!」

市場で、ムーンビーンズ、ファイアトマト、ウィンドハーブ、クラウドマッシュルームを買い込んだ。  
でも、屋台を歩いてる時、騒ぎが聞こえてきた。  
若い男の冒険者が、商人と大声で言い争ってる。  

「おい、この肉、腐ってるだろ!  こんなの食えるかよ!」  

「腐ってねえ!  新鮮なゴブリンホッグだ!  
文句言うなら、買わなきゃいいだろ!」  

リナが眉をひそめて言った。  

「あ、あの冒険者、ギルドのやつじゃん。トムってやつ。  短気で、いつもトラブル起こしてるんだよね……。」  

カイラがため息をついた。  

「またトムか。 この町に来るたびに、ケンカしてるのよね。優、料理で場を収めてみない?  あなたの料理なら、二人とも落ち着くわよ。」  

「え、僕!?  ど、どうやって?」  

「簡単。  新鮮な食材で美味しいもの作って、食べさせればいい。  私の魔法で食材の鮮度をアピールするから。」

リナが目を輝かせて言った。  

「へえ!いいね! 優の料理はケンカも収めちゃうんだから!  さっそく作ろ!」  

全く二人とも好き勝手言うなぁ…。
市場の広場で簡易キッチンを借りて、クラウドマッシュルームとファイアトマトでスープ、ムーンビーンズでサラダを作ることにした。  
カイラが魔法で火を安定させ、クラウドマッシュルームを炒めると、ふわっとした食感が広がる。  
ファイアトマトを加えると、ピリ辛の香りが漂う。  
ムーンビーンズは、茹でてウィンドハーブと混ぜ、爽やかなサラダに。  

完成したスープとサラダを、トムと商人に持って行った。  

「えっと、ケンカやめて、これ食べてみてください。  市場の新鮮な食材で作ったスープとサラダです。」  

トムが、怪訝な顔でスープを飲んだ。  
そしたら、目がパッと開いて、叫んだ。  

「は?!なんだこれ!?  めっちゃ美味いじゃん!  このキノコはふわふわだし、トマトの辛さが最高!」  

商人も、サラダを食べてニコニコ。  

「ムーンビーンズがこんな甘いなんて!  お前さん、どこでこんな料理覚えたんだ?」  

「えっと、別の世界から来たんですけど……。  この食材はウィンドホロウの市場で買ったやつです。 新鮮ですよね?」

カイラが杖を振って、食材に青い光をかけた。  

「私の魔法で、食材の鮮度を確認したわ。
このスープとサラダは全部今日の市場のもの。 ケンカする前に、味わってよ。」  

トムと商人は、顔を見合わせて、ちょっとバツが悪そうに笑った。  

「まぁ、悪かったな。 このスープ、確かに美味い。 お前、すげえ料理人だな。」  

「へへ、俺も言いすぎた。 このサラダ、最高だよ。」  

トムは、ちょっと照れながら言った。  

「月森優、だろ?  覚えたぜ。  ルミエールに行くなら、また料理食わせてくれよ。」  

そう言って、トムは市場の奥に消えていった。  
リナが、ホッとした顔で言った。  

「よかった、ケンカ収まった!  優の料理、ほんと魔法みたいだね!」  

ちょ、ちょっと?!
リナってば出来るかわかんないのにけしかけてたの?
キラがリナの肩の上でピピッと鳴いて飛び跳ねてる。
喜んでるみたいだけど
ふ、ふくざつ~!

---

その夜、宿屋で旅の準備をしていたら、問題が起きた。  
馬車を点検してたリナが、焦った顔で戻ってきた。  

「優、カイラ、大変!  馬が足を痛めたみたいで、動けないよ!  このままじゃ、ルミエールに予定通り着けない!」  

カイラが冷静に言った。  

「うーん、馬の怪我を治す魔法はあるけど、時間がかかわね。別のルートを探すか、馬車を修理する必要があるね。」  

その時、市場で会ったトムが、宿屋の入り口に現れた。  

「よお、聞いてたけど、馬が動けねえんだな。  俺、ルミエールへのショートカット知ってるぜ。  森を通るルートだけど、ブラックウルフが出るメインルートより安全だ。」  

リナが眉をひそめて言った。  

「はあ?トム、なんで教えてくれるの?  何か企んでる?」  

トムが肩をすくめて笑った。  

「昼に食わせてくれた飯のお返しだよ。俺はソロで冒険者やってるけど、金欠でイライラしてたんだ。 でもお前の料理でなんか心落ち着いた。 だからさ恩返しさせてくれよ。」  

カイラが冷静に提案した。  

「ルートを知ってるなら、役に立つんじゃない?優、リナ、どう思う?」  

「うーーーん。まぁトムってちょっとトラブルメーカーだけど、ルート知ってるなら助かるかも。  優、いいよね?」  

「うん、トムの情報を信じてみよう。 でも、ちゃんと安全な道を頼むよ?」

トムが、ニヤッと笑った。  

「了解だ。 明日は俺が案内するよ。 ただ、ルミエールまで行くなら、俺も一緒に旅させてもらえねえかな?  ソロじゃ、最近限界感じててさ。」  

リナがちょっと警戒しながら言った。  

「は?!一緒に!?  急に何!?  昨日もトラブル起こしてたのに!」  

トムが、頭を掻いて言った。  

「まあ、悪かったよ。でも、お前らのチームワーク見て、なんかいいなって思ったんだ。 俺、地形やモンスターの知識あるから、役に立てるぜ。」  

カイラが微笑んで言った。  

「優の料理でトムの心が動いたなら、別に悪くないんじゃない?試しに、ルミエールまで一緒に旅してみない?」  

僕もリナと目を合わせて、うなずいた。  

「うん。いいよ、トム。 でもケンカは控えて、チームのルール守ってね。 それと、料理の感想はちゃんと教えてよ!」  

トムが笑って手を差し出した。  

「了解!  お前の料理、毎日食うぜ!」  

キラが、ピピッと鳴いて、まるで「仲間増えた!」って言ってるみたい。  
キラも賛成ならいっかー。
その夜は食堂で、トムも一緒にスープとサラダを食べた。  
トムがムーンビーンズのサラダを食べて、目を丸くした。  

「な?!これ、夜でも目が冴える感じ!まじかよ!優、お前、ほんとすげえな!」  

リナがニヤニヤしながら言った。  

「ほーらね!  優の料理はどんなやつも味方にするんだから!  トム、ルミエールまで、ちゃんと働けよ!」  

カイラが笑いながらグラスを掲げた。  

「優の料理、リナの弓、トムの知識、私の魔法、キラの嗅覚。  ルミエールのコンテストでも優勝狙えるわよ!」  

カイラ?酔ってる??
滅茶苦茶ご機嫌にグラス傾けまくりだ。
新しい仲間が増えた、かな?
なんだかんだリナもトムと仲良くやれそうだし、ね?キラ。
キラを見るとキラはムーンビーンズをつつきなからピピッと鳴いた。


就寝前の日記を書く。
キラは、僕の膝で寝てる。  
明日はトムのショートカットでルミエールに近づけるかな?
一体どんな冒険が待ってるかな?  



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