剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝

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004 赤いスコップ

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 お日さまサンサン。
 そよ風ふよふよ。
 心なしか、空を流れる雲の足取りも軽やか。
 とってもいいお天気にて、絶好の園芸日和。
 天気のいい日は外でがんばり、天気のあまりよくない日には家の中でがんばりなさいと、学び舎の教壇に立つ神父さまもつねづねおっしゃっている。
 だからわたしは花壇の手入れをしようと思い立つ。
 しかし愛用の赤いスコップが見当たらない。
 他の道具といっしょに物置へしまっておいたはずなのに。
 妹カノンにたずねるも「知らなーい」との返事。
 母アヤメも「見てないわよ」
 父タケヒコが使うことはないので、「おかしいなぁ」と首をかしげていたら、すぐ背後にてふよふよ浮かんでいる、ミヤビの様子がちょっとおかしい。

 この世に誕生して以来、ずっと剣の母であるわたしの後ろを、ちょこちょこついて回っているミヤビ。
 タマゴから孵ったばかりの雛が、親鳥のあとをついて回る姿にそっくり。
 そうそう。「ちょこちょこ」と言えば、わたしのチヨコって名前は母方の祖母ハナノがつけたんだ。
 なんでも初孫誕生に浮かれて、両親が喜び勇んで披露に行ったら、やたらと手足をバタつかせて元気ハツラツな赤子のわたしを見て、祖母が「ちょこちょこして、落ち着きのない子だねえ。よし! この子の名前はチヨコにしよう」と言い出す。
 さすがに「そんな適当な」と両親は難色を示すも、祖母ハナノは言い出したら聞かない人であった。
 まぁ、それはともかく……。
 ふしぎなもので、勇者のつるぎが背後に漂っているという生活には、すぐに慣れた。
 で、母は母であるがゆえに、我が子の異変にとっても敏感。
 例えばオネショをした子どもがこれをごまかす。あるいはイタズラをした子どもがこれを隠そうとする。
 けれども、母親の千里眼の前には無力。すべてお見通し。いかなる巧妙な裏工作も、あっさりバレる。
 子育てあるある。お尻をペンペンされて思い知る母の偉大さ、その強さよ。そして魂の奥底に刻まれる絶対不変の上下関係。
 恥ずかしながらわたしも通った道。
 だからこそ、すぐにピンときた。
 面と向かってジト目にて問い詰めたら、「その目はやめて!」とミヤビは降参。あっさり白状した。

「だって、いつもいつもチヨコ母さまを独り占めするんですもの。あんまり憎たらしいから、つい……」

 そう言って、プイと剣身をそらすミヤビ。
 園芸用の赤い小さなスコップに嫉妬する勇者のつるぎ。
 何やら微笑ましくって、つい頬が緩むのを抑えられない。
 けれども妬みがこうじて、罪のない赤いスコップをズタズタに切り裂き、地中深くに埋めるのはどうかと思う。
 だから、とりあえず「物には罪がないから、今度からは素直に甘えなさい」とやんわりたしなめておいた。
 しかし「ですわ」というお嬢さま口調といい、この逸脱ぶりといい、うちの子には悪役令嬢の素質があるのかもしれない。
 フム。剣の母としては、我が子の行く末がちょっと心配。
 なお、無残な最期を遂げた赤いスコップにかわり、わたしの手に握られるようになったのは白銀のスコップ。ミヤビが変じたものである。
 勇者のつるぎ、超便利。砂利や小石もなんのその。おかげでザクザク掘れて助かっている。


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