水色オオカミのルク

月芝

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03 道しるべ

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 雨でぬかるんだ道。
 水たまりを楽しそうに、じゃぶじゃぶ踏んでは、その音を喜んでいる水色オオカミのルク。
 なにせ空の上には、こんなにたくさんのモノがない。
 あるのは白い雲と青い空ぐらい。
 こんなにいろんな色がない。
 緑色をした葉っぱ、茶色い土、灰色の岩、赤青黄白色と咲くたくさんの花々。
 地上のなんと色彩ゆたかなことか。
 だから、見るモノ、聞くモノ、すべてが彼には新しい発見。
 落ちている小石、道端に生えている草の一本すらもが、ルクの茜色の瞳を輝かせる。
 足の肉球ごしに伝わる感触も、天の国とはまるで違う。
 雲はふわふわとして気持ちいいけれども、地の国の大地はどっちりとしていて、そのゆるぎない感じが、ものすごく頼もしい。
 初めてずくしに、すっかり浮かれているルク。
 ウキウキしているので足どりも軽やか。
 だけど二匹の旅の連れはそうもいきません。

 ドロドロの道に足をとられて、体が小さい野ウサギには、歩くだけでもひと苦労。
 自慢の茶色の毛に泥と水が絡みついて、重いこと重いこと。
 フィオとタピカのそんな様子に、遅まきながら気がついたルク。
 地面に向かって鼻先を近づけると、大きく息を吸い込みました。
 するとドロドロだった地面から、たちまち水気が抜けて、乾いていくではありませんか。
 ついでに彼らの体をキレイな水を出して洗い、さっと水気をとって乾かしてあげる。

「ボクは水色オオカミだからね。これぐらい、かんたんかんたん」

 どうやら水色オオカミには、水を操るチカラがあるみたい。
 おかげですっかり歩きやすくなった地面。汚れて濡れそぼっていた体もキレイに。
 フィオたちは「ありがとう」とお礼を言いました。

「すごい! まるで魔法みたいだ」
「そうなのタピカ? ボク、魔法ってみたことないから、よくわかんないや」
「空の上には魔法使いはいないの?」

 フィオがたずねると、うーんと考え込んだルク。
 しばらく悩んでから、「わかんないや。ひょっとしたら長老なら知っているかも」

 三匹がそんな話をしていたら、「こりゃ」と怒鳴り声。
 いきなり叱られたものだから、みんなビックリして、思わずぴょんと飛び上がった。
 けれども周囲には彼ら以外には誰もいない。
 するとまたしても「こりゃ」と怒鳴られた。
 声はするのに姿は見えない。
 あれれ? そろって首をかしげるフィオとタピカとルク。
 どこから声がしたのかと、注意をこらして探すと、ようやく声の主を見つけた。
 それは近くの木の枝にとまっていた、小さな小さなテントウムシのおじいさん。

「こりゃ! そこの水色オオカミ、かってに地面の水を消すやつがあるか!」
「だって、友だちが歩きにくそうだったから……」

 怒られて、おずおずと言い返すルク。
 これを諭すかのようにテントウムシのおじいさんは言いました。

「友だち想いなのはよい。だからとてアレはいかん。雨水は森にとっては貴重な天の恵み。お主らとて、いきなりオヤツをとりあげられたらイヤじゃろう」

 よかれと思ってやったことが、他の人の迷惑になったと知って、尾をさげてしゅんとへこむルク。「ごめんなさい」とテントウムシにあやまります。
 元はといえば自分たちのせいだと、フィオとタピカもいっしょに頭を下げました。

「うむ。わかればよい。これからは強いチカラを考えなしに使うでないぞ。それにしても、こんなところで水色オオカミが野ウサギと何をしておる?」

 西の森の魔女のところへ向かっていることを話す三匹。
 フィオとタピカの病気の妹のために旅をしていると聞いたテントウムシのおじいさん。

「ふむ。それは感心よな。よかろう、この森を抜けるまではワシの友人らに道案内をさせよう」と申し出てくれた。

 なんでもこの森は、内部が薄暗く、ところどころが入り組んでおり、中には底なし沼もある。うっかり迷ったあげくに、落ちようものならば、とても無事ではすまないとのこと。
 底なし沼……、ああ、なんて恐ろしい。
 知らなかった三匹は、自分が沼にはまった姿を想像して、ブルルとふるえました。

 テントウムシのおじいさんに礼を述べて、先を急ぐ一行。
 薄暗い森の中。
 まだ日中だというのに、奥へと進むほどに、どんどんと暗さが増し、闇が濃くなっていく。
 じきに二つに道がわかれた。
 すると右の方にて、ぼんやりと小さな淡い光が灯る。

「あっ! あれがきっとおじいさんの言っていた道しるべに違いない」

 フィオの言葉にうなずくタピカとルク。
 淡い光に誘われて、そちらへと足を向ける。
 以降も分かれ道があるたびに、姿を見せる光の道しるべ。
 それはホタルの光であった。

 道案内のおかげで無事に森を抜けた三匹。
 空はすでにオレンジ色に染まりはじめていました。

「ありがとー」

 みんなで声を出してお礼を言ったら、森の中にてたくさんの光がまたたきました。


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