水色オオカミのルク

月芝

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21 バロニア王国

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 整然と敷かれた石畳の道を、霧のオオカミのハクサに案内されて歩く水色オオカミの子ルク。
 ところどころがひび割れ、下から雑草が顔を出していますが、まだまだ道としての原型をとどめています。
 建物らの天井部分や木戸などは朽ちて跡形もありませんが、石の土台はいまだ健在。
 高地であるがゆえに、背の高い植物らの浸蝕を受けなかったおかげだと、ハクサは言いました。
 これならば修繕(しゅうぜん)をしたら、すぐにでも住めそうです。
 なのにここには誰もいない。
 住民たちはみんなどこに消えてしまったのでしょうか。
 ふしぎに思ったルクがたずねると、ハクサは教えてくれました。

「みなが消えた理由か……。いくつかあるが、主な原因はアレじゃよ」

 ハクサが灰色の顔を向けたのは、広場にあったモノ。
 古代都市を横断している道。そのなかほどに位置している円形の広場。中央部には井戸が設置されてある。
 かつて都が栄えていた頃には、ここには毎朝、多くの女たちがツボを手に集っていたものだと、懐かしそうに語るハクサ。
 ですがその表情はすぐにくもります。
 理由はルクにもすぐにわかりました。
 井戸の中から、とってもイヤなニオイが漂ってきているのです。
 おもわず顔をしかめて、鼻先にしわを寄せるルク。

「すごくクサイ。いったいこれは何のニオイなの?」
「白銀の魔女王の呪毒じゃよ。かつてこの地が戦乱に見舞われたとき。ヤツの配下が、どさくさに紛れて、呪毒が込められた玉を放り込んでいったのじゃ。本当にひどいことをしよるわい」

 古代都市のある台地の地下深くには、それはそれはキレイな水の湧く地底湖があった。
 これを生活に使用することで、こんな山奥の高台でも人々が暮らすことができていた。
 だが呪毒の玉によって水源はケガされてしまった。
 はじめはなんとかしようと、がんばっていた人たちも、呪いを解くことはかなわず、ついにはあきらめて、みな去ってしまったという。
 もう千年近くも前のこと。だというのに呪いは今だに続いており、消える気配がない。
 なにが魔女王という人物にそこまでさせたのでしょうか。
 理解しがたいドス黒い何かが横たわっているような感覚におそわれて、ブルルとふるえたルク。

「おかげで、かつては天空の楽園とうたわれたバロニア王国も、いまではこのザマというわけじゃ」
「ひどいことをするね。白銀の魔女王がどんな人かはわからないけれども、ボクの知っている魔女さんとはえらいちがいだ」

 野ウサギの兄弟の妹を助けるのに手を貸してくれた、西の森の魔女エライザといじわるな白銀の魔女王を比べて、あまりの違いにプンプンと怒るルク。おもわず青い毛も逆立ちます。
 そんな水色オオカミの子どもに、霧のオオカミのハクサが頼みたいことがあると言いました。

「ごらんの通りワシには実体がない。だからモノを掴んだり運んだりできない。やれることといったら、せいぜい霧をあやつり、視界をふさぐことぐらいじゃ。そんなワシにかわって、どうかヤツを助けてやってはくれないだろうか?」

 友人を助けて欲しいと言うハクサ。
 友だちを助けるのなんて当たり前のこと。ルクは二つ返事で引き受けました。
 これに喜んだ霧のオオカミ。さっそくルクを案内したのは、古代都市の中でも一番大きな建物のあるところ。

「ここにはバロニア王国の守護神がまつられておる」とハクサは言いました。


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