水色オオカミのルク

月芝

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22 神像ガァルディア

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 守護神の神殿。
 この一画だけ、他ほど風化のあとがほとんど見られません。建物の屋根も落ちていない。
 でも正面入り口は岩や土砂で埋まっていました。
 ここまで来る道すがらの建物が、不自然に破壊されていたところをみると、そちらを崩してわざわざ瓦礫(がれき)を運んだみたい。
 どうやら何者かの手によって念入りに、ふさがれたようです。

「こっちじゃ」

 ハクサに促されて、ルクは後ろについていきます。
 神殿の横手へと回ると、ハクサは「ここを押せ」と壁の一部に灰色の鼻先を近づけました。
 見た目にはただの壁にしか見えないのですが、言われた通りに前足を押し当てると、ガコンと音がして、奥へと吸い込まれてしまいます。
 壁にぽっかりと開いた四角い穴。
 その穴を起点として、コトン、カタンと動きだす周辺の石。
 次第に穴は大きくなっていき、ついには大人の背丈ほどにもなり、隠し扉が姿を現しました。
 千年たっても壊れない建物。
 生きている仕掛けに、目を見張るルク。

 隠し扉を開けると、しばらく細い廊下が続いて再び扉が。
 カギはかかっていません。
 押し開けると、ついに神殿の内部へと到達しました。
 中の空気はものすごく清らか。青白い燐光を放つ天井や壁。床にはホコリ一つおちていない。
 ちょっと薄暗いですが、前が見えないほどではありません。
 と思ったら、急に明るくなる室内。
 太陽の輝きや月の明かり、暖炉の火やランプの灯りとも違う。白くてまぶしい明かり。
 ビクリと身構えたルク。
 そんな彼をみて、ハクサがクスリと笑う。

「なぁに心配はいらぬ。かってに明かりがつく仕掛けになっておるんじゃ」
「これって魔法なの?」
「いいや、魔法ではない。機械仕掛けじゃな。カラクリじゃよ」
「きかいじかけ? からくり?」
「歯車がこう……。うーん、説明がちょっいとムズかしいのぉ。まぁ、魔法とは違うチカラだと考えておけばよい。この国を造った初代が、そいつに長けておったのよ」
「へー」

 神殿内部に詳しいらしく、入り組んだ内部を迷うことなく、ずんずんと進んでいくハクサ。
 彼の歩みに合わせるかのように、前方の明かりが灯っていく。
 扉が現れたとおもえば、かってに左右に開いて、通り過ぎたら音もなく閉じる。
 どれもこれもすべてカラクリとのこと。
 物珍しさにキョロキョロしつつも、遅れないようにとついて行くルク。
 そうして二匹が辿り着いたのは、神殿の最深部、奥行のある大きな広間。

「ここは大聖堂じゃ」

 見上げるほどに高い天井。アーチ状に加工されており、晴れ渡る色あざやかな空の絵が描かれてある。
 壁面には、この国の建国からの歴史が刻まれたであろうレリーフ。
 冠をかぶっているのが王さま。その周りに多くの人たちの姿があるけれども、これにヘンテコなのがたくさん混じっている。
 手足はあって人のような形なのに、みな顔がなくて、のっぺらぼう。
 小首をかしげてルクが見上げていたら、それらは初代の王が造ったカラクリ人形だと、ハクサが教えてくれました。

「この都市の大部分は、王の命によって、そやつらがこしらえたのよ」

 兵士よりもチカラが強く、職人よりも手先が器用で、誰よりも働き者のカラクリ人形たち。それらを使って、この広大な都市をわずか半年足らずで建造したというのだから、ルクも開いた口がふさがりません。
 どうやらカラクリが得意だったという王様は、想像以上の人物であったようです。
 ですがそれでもバロニア王国は滅んでしまいました。
 魔女王の呪いといい、この地にて過去にいったい何があったのでしょうか?

 いにしえの地に残る神殿の大聖堂。
 その奥にたたずむのは、無骨な甲冑姿をした一体の青銅色をした巨大な像。
 両腕を胸の前で交差させて、片膝をおり、まるで天に祈りを捧げるかのような格好をしている。
 とても大きい。立ち上がれば、きっと神殿の天井付近にまで背丈があるはず。
 威風堂々、まさしく守護神に相応しい姿。こんなのに踏まれたら、一発でぺちゃんこです。
 あまりの迫力に目を白黒とさせるルク。ここにきてからおどろかされてばかり。
 そんな水色オオカミの子どもの反応を、楽し気に見ていた霧のオオカミ。
 像の方に顔を向け、これに話しかけました。

「ひさしいな。ガァルディアよ」

 ハクサの声に反応するかのように、巨像の双眸に淡い赤色光が灯る。


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