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24 ガァルディアの心臓
しおりを挟む「ひさしいな。ガァルディアよ」
ハクサの呼びかけにて、巨像の双眸に淡い赤色光が灯る。
ぶぅんと低い音がしたと思ったら、大聖堂内に男性の声が響いた。
「ひさしいな。ハクサ。今日は珍しくオオカミの形をしているのだな。おや、そちらは?」
「はじめまして。ボクは水色オオカミのルク。よろしくね」
「私はガァルディア。見てのとおりの巨像さ。動けないから頭も満足に下げられない。礼を失しているが、どうか許しておくれ」
そう言われて「気にしないで」と応え、シッポをふるルク。
とりあえず互いに自己紹介をすませたところで、本題に入る霧のオオカミのハクサ。
「ガァルディアよ。今日はヌシによい報せを持ってきた。このルクが手伝ってくれれば、アレを拾ってくることが可能じゃ」
「なんと! しかしアレは屈強な男たちが数人がかりでようやく運べる重たい代物。それに沈んでいるのはあそこだぞ。いかに水色オオカミとはいえ、まだ子ども。少々、ムリがあるのではなかろうか」
「たしかに直接、持ち上げるのはムズかしい。だが水を操るチカラを使えば、工夫次第でやりようがあるだろう。現場の様子は行ってみなければ何とも言えん」
「だが」
「この数百年、すっかり忘れ去られ、訪れる者とていなかったこの地に、ようやく現れたルクに賭けてみようではないか。ヌシとて動けるのならば動きたいであろうに」
「それはそうなのだが……。わかった。だがくれぐれも危険なマネはさせないように約束してくれ。私は自分のために誰かが犠牲になるのなんて、見たくはないのだから」
守護神の役割を造物主より仰せつかりながらも、王国が滅びるのを、ただ眺めていることしか出来なかったガァルディア。
たたずむだけの長い歳月。
国を裏切った女を怨んだことも、侵略者たちを憎んだこともある。だが何度も何度もくり返す悪夢を見ているうちに、すべての感情はすり切れていった。
後に残ったのは、怒りよりも、むしろ憐れみに近い感情。
故郷を捨てて、家族や友人らを裏切ったネネ。彼女はそれに見合うだけの、望んだモノを手に入れられたのであろうか? そんなことばかりが頭に浮かぶ。
大切なモノを失ったからこそ、もう二度とはゴメンだと語るガァルディア。
今後のことで盛り上がるガァルディアとハクサ。
だけどちょっと置いてけぼりをされてしまったルク。
おずおずと彼らの会話に口をはさみました。
「あのー、それでボクは何をとってくればいいのかなぁ?」
「おぉ、そいういえば肝心なことを話していなかったのぉ。ほれ、そこの壁を見てごらん」
ハクサが示した壁は、神像のちょうど裏手にあたる場所。
そこに四角く、くり抜かれたかのような箇所がある。
丸まればルクがすっぽりと収まるぐらいの大きさ。
「そこにはこやつを動かすのに必要なモノ。『ガァルディアの心臓』がはめ込まれておったのじゃ」
「それが無くなっちゃったから、ガァルディアさんは動けないのか」
「うむ。戦の前に奪われてしまったらしい」
「そっかー。それをボクがとってくればいいんだね。でも、どこにあるかわかっているの?」
「あぁ、それはワシが突き止めてある。場所はわりとすぐ近くなんじゃ。なにせこっそりと運び出すには重たいし、目立つからの。だから盗んだ連中は手近なところに捨てることにしたようだ。だがおかげですぐに探し出せたわい」
奪われたガァルディアの心臓。
その在り処は、古代都市のはるか地下にある地底湖だと、霧のオオカミのハクサは言いました。
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