水色オオカミのルク

月芝

文字の大きさ
25 / 286

25 地底湖

しおりを挟む
 
 古代都市に張り巡らされた水路。
 その一つから地下へと続く階段を降りていくハクサとルク。
 ぐるぐると螺旋状になった階段が真っ暗な地の底へと続いている。
 壁のところどころに埋め込まれた石がぼんやりと光っているので、歩くのに問題はありません。ですが同じ景色が続いて、たいくつです。
 薄闇の中、延々と階段を降りるだけに飽きたルクが、ハクサに話しかけました。

「ハクサはいつからここに住んでいるの」
「ワシか? ワシが住み着いたのは、この都が滅びる少し前じゃったかの。御使いの勇者として各地を転々とした後に、ここへと流れ着いたのじゃ」
「ふーん。でもどうしてここだったの? やっぱりガァルディアさんと仲良くなったから?」
「いいや、ちがうの。ヤツと知り合いになったのは、住み着いてから後のこと。まさか神像に意志があるとは思わなかったもんでな。はじめて話しかけられたときには、たまげたもんじゃわい。おっと、ソレでどうしてこの地を選んだのかということじゃったな。それはここの景色を見た瞬間に、ピコンと閃いたからじゃよ。『あぁ、自分はこの地に来るために長い旅を続けていたんだ』とな」
「えー、そんなので選んじゃうのー」
「他の勇者どもは知らんが、ワシの場合はそうじゃったのだからしょうがあるまい」
「うーん。そうなのかなぁ」

 瞳の色がかわって、御使いの勇者に選ばれた水色オオカミは、天の国より地の国へとおもむき、各地を放浪した後に、自分の居場所を決める。
 それが勇者の使命だと長老から聞かされていたルク。
 悪いドラゴンを倒したり、囚われの姫を救い出したり、物語に登場する勇者とはあまりにも違うので、ちょっと疑っていたのだけれども、どうやら本当であったみたい。
 納得したわけではないけれども、とりあえずそういうものであると理解しておくことにルクはした。

 下へ下へと階段を降りていくほどに、空気がひんやりとしていき、水気もましていく。
 おどろくほどに単調な道行。
 眠くなってきて「くわぁ」と大アクビをするルク。

「そういえば、ガァルディアさんの大切なモノを盗った悪い人たちは、どうやって地底湖まで運んだの。やっぱりこの道を通ったの?」
「悪党どもがそんな手間をかけるもんかね。地上から地下へと通じているタテ穴から落としたんじゃよ」

 そんな乱暴なことをされて、ガァルディアの心臓は大丈夫なのかと心配するルク。
 すると「カカカ」とハクサが笑いました。

「案ずるな。その程度で壊れるぐらいならば、誰も用心してヤツの神殿の入り口をふさいだりはせぬよ」

 バロニア王国の初代の王様が造った特別製のガァルディア。
 侵略者たちはこれを壊そうとやっきになったそうですが、かすり傷ひとつつけられません。神殿そのものにも。
 心臓を奪われているので動きようのないガァルディアなのですが、それでも万一のことが起きないとはかぎりません。侵略者たちは、恐れるあまりに神殿の入り口をふさいでしまったとのことです。

 御使いの勇者のことや王国のことなどを聞いているうちに、ようやく階段も終わりが見えてきました。
 それにともなって、魔女王の呪毒が放つイヤなニオイもきつくなっていく。

「体の方は問題ないか?」とたずねるハクサ。
「くさいけどへいき」ルクは鼻の先にシワを寄せながら答えました。

 最後の一段をおり、短いトンネルを抜けると、姿を現したのは広大な地下空間。
 緑や赤、青に銀や金、いろんな色の鉱石が混ざり合った岩肌。ところどころに突き出た大きな水晶の塊。それらがぼんやりとした淡い輝きを放ち、かつて古代都市の生活を支えていたという、地底湖の水面を七色に染めている。
 湖面が波打つたびに、色彩が変化する姿は幻想的でステキ。
 ですが、ここに満ちているのはとっても邪悪な気配でした。
 あのイヤなニオイが満ち満ちています。

 湖岸にてたたずむ霧のオオカミと水色オオカミのルク。
 そんな彼らを暗い水底より見つめる何者かの姿が……。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

にゃんとワンダフルDAYS

月芝
児童書・童話
仲のいい友達と遊んだ帰り道。 小学五年生の音苗和香は気になるクラスの男子と急接近したもので、ドキドキ。 頬を赤らめながら家へと向かっていたら、不意に胸が苦しくなって…… ついにはめまいがして、クラクラへたり込んでしまう。 で、気づいたときには、なぜだかネコの姿になっていた! 「にゃんにゃこれーっ!」 パニックを起こす和香、なのに母や祖母は「あらまぁ」「おやおや」 この異常事態を平然と受け入れていた。 ヒロインの身に起きた奇天烈な現象。 明かさられる一族の秘密。 御所さまなる存在。 猫になったり、動物たちと交流したり、妖しいアレに絡まれたり。 ときにはピンチにも見舞われ、あわやな場面も! でもそんな和香の前に颯爽とあらわれるヒーロー。 白いシェパード――ホワイトナイトさまも登場したりして。 ひょんなことから人とネコ、二つの世界を行ったり来たり。 和香の周囲では様々な騒動が巻き起こる。 メルヘンチックだけれども現実はそう甘くない!? 少女のちょっと不思議な冒険譚、ここに開幕です。

処理中です...