水色オオカミのルク

月芝

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41 天空の覇者と皇国の軍神

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 姫奪還の任をおびて勇者一行が軍勢を離れてから、半日ほどたった頃。
 斥候より「グリフォン出現」の報を受けたサイラス王子。
 すぐさま全軍に指示を出して、陣形を整えました。
 その様子を上空より悠然と眺めていたグリフォンのルシエル。「ほぅ」と感心します。
 テキパキと動いては、集団が変形して陣となっていく姿が、まるで一匹の獣のようにまとまっています。洗練された行軍行動。以前に古城へとやってきた騎士どもとは大違い。

「ふむ、見事だな。よほどの将が率いているとみえる。兵も精強そうだ。だとするとますますわからんなぁ。それほどのヤツが、どうしてボルバなんぞに手を貸す? 軍隊を動かすのもタダではあるまいに」

 ルシエルが考えているうちに、気がつけば地表では三日月の形になっていた軍勢。
 どうするのかとうかがっていると、ドンという太鼓の音に合わせて、陣の右の先っぽから一斉に弓が放たれました。
 陽がかげるほどの、ものすごい数の矢。
 よほどの強弓らしく飛距離や威力も充分。狙いも正確にて、矢が集団となり、まとまって空にいるグリフォンへと殺到してくる。
 とはいえ、いかに名手とよい弓を揃えたところで、強靭なルシエルの体には矢が通りません。だからとてわざわざ当たってやることもない。
 ツバサをバサリとひとふり。
 たったそれだけの動作にて、数多の弓矢が風にあおられ、チカラを失い、霧散してしまいました。
 それにもかかわらず、第二射、第三射と、地上からの攻撃が続きます。
 ルシエルも同じ動作をくり返す。なのに弓は止まりません。四射、五射、六射としつこい。なんとも退屈で単調な攻撃。

「ええい、うっとうしい。つまらぬな。これは買いかぶりすぎたか」

 少しイラついたルシエルが文句を口にしたとき、ふいに反対側に風の乱れを感じて、そっちを振り向くと、陣の左の先っぽから投石器より放たれた、岩が飛んでくるではありませんか。

「なるほど。一方に注意をひきつけておいて、もう一方から仕掛けるか。やりおるわ、だが甘い!」

 岩の塊を前足の一撃にて粉砕するグリフォン。
 次々と飛んでくる岩を、やすやすと砕き、叩き落としていく。その間にも弓矢の攻撃は止まらない。
 三日月状に展開されている地上の陣。その両端から絶え間なく攻撃が発せられる。
 これをものともしないルシエル。
 本陣よりその雄姿を見上げていた指揮官のサイラス王子。

「なんという威容か、さすがは天空の覇者。だがコレならばどうだ!」

 頃合いをはかっていた彼の合図により、三日月の陣の中央部より轟音が鳴り響く。
 火を噴いたのは大砲。
 この一撃を確実に当てるために、わざと両端から延々とムダとも思える攻撃を続けて、グリフォンを足止めしていたのです。
 左右の対処に追われて、そちらにばかり注意を払っていたルシエル。
 突如として正面よりものすごい速度にて飛来した、大砲の玉への対応が間に合わない。

「しまった! すべてはこのための行動であったのか!」

 避けることかなわずに、グリフォンのライオンの体に着弾する大砲の玉。
 固い石の城壁を打ち砕き、鋼鉄の扉をも貫くほどの破壊力。
 だがそれでもドラゴンと双璧をなすほどの存在である、グリフォンを倒すにはいたらない。
 ハズであった。
 着弾と同時に大爆発を起こす玉。
 紅蓮の炎とともに無数の小さな玉つぶが飛び出して、至近距離から無防備な態勢のグリフォンの腹におそいかかり、さらなる爆発を引き起こす。
 これを好機とみたサイラス。
 砲撃手に命じて、ありったけの大砲の玉をたて続けに撃たせました。

 荒地の空に起きた大爆発。
 立ち込める黒煙がモヤとなり、乾いた大地に破片がパラパラと降り、火薬のツンとしたニオイが辺りに漂う。
 猛攻の様子を全軍が固唾をのんで見守る中。
 ぐらりと傾げた巨体。
 上空よりグリフォンが、地表へと落ちていく。
 ドサリと音がして赤い砂塵が舞った。
 それと同時に天地を揺るがすほどの大歓声が上がりました。


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