41 / 286
41 天空の覇者と皇国の軍神
しおりを挟む姫奪還の任をおびて勇者一行が軍勢を離れてから、半日ほどたった頃。
斥候より「グリフォン出現」の報を受けたサイラス王子。
すぐさま全軍に指示を出して、陣形を整えました。
その様子を上空より悠然と眺めていたグリフォンのルシエル。「ほぅ」と感心します。
テキパキと動いては、集団が変形して陣となっていく姿が、まるで一匹の獣のようにまとまっています。洗練された行軍行動。以前に古城へとやってきた騎士どもとは大違い。
「ふむ、見事だな。よほどの将が率いているとみえる。兵も精強そうだ。だとするとますますわからんなぁ。それほどのヤツが、どうしてボルバなんぞに手を貸す? 軍隊を動かすのもタダではあるまいに」
ルシエルが考えているうちに、気がつけば地表では三日月の形になっていた軍勢。
どうするのかとうかがっていると、ドンという太鼓の音に合わせて、陣の右の先っぽから一斉に弓が放たれました。
陽がかげるほどの、ものすごい数の矢。
よほどの強弓らしく飛距離や威力も充分。狙いも正確にて、矢が集団となり、まとまって空にいるグリフォンへと殺到してくる。
とはいえ、いかに名手とよい弓を揃えたところで、強靭なルシエルの体には矢が通りません。だからとてわざわざ当たってやることもない。
ツバサをバサリとひとふり。
たったそれだけの動作にて、数多の弓矢が風にあおられ、チカラを失い、霧散してしまいました。
それにもかかわらず、第二射、第三射と、地上からの攻撃が続きます。
ルシエルも同じ動作をくり返す。なのに弓は止まりません。四射、五射、六射としつこい。なんとも退屈で単調な攻撃。
「ええい、うっとうしい。つまらぬな。これは買いかぶりすぎたか」
少しイラついたルシエルが文句を口にしたとき、ふいに反対側に風の乱れを感じて、そっちを振り向くと、陣の左の先っぽから投石器より放たれた、岩が飛んでくるではありませんか。
「なるほど。一方に注意をひきつけておいて、もう一方から仕掛けるか。やりおるわ、だが甘い!」
岩の塊を前足の一撃にて粉砕するグリフォン。
次々と飛んでくる岩を、やすやすと砕き、叩き落としていく。その間にも弓矢の攻撃は止まらない。
三日月状に展開されている地上の陣。その両端から絶え間なく攻撃が発せられる。
これをものともしないルシエル。
本陣よりその雄姿を見上げていた指揮官のサイラス王子。
「なんという威容か、さすがは天空の覇者。だがコレならばどうだ!」
頃合いをはかっていた彼の合図により、三日月の陣の中央部より轟音が鳴り響く。
火を噴いたのは大砲。
この一撃を確実に当てるために、わざと両端から延々とムダとも思える攻撃を続けて、グリフォンを足止めしていたのです。
左右の対処に追われて、そちらにばかり注意を払っていたルシエル。
突如として正面よりものすごい速度にて飛来した、大砲の玉への対応が間に合わない。
「しまった! すべてはこのための行動であったのか!」
避けることかなわずに、グリフォンのライオンの体に着弾する大砲の玉。
固い石の城壁を打ち砕き、鋼鉄の扉をも貫くほどの破壊力。
だがそれでもドラゴンと双璧をなすほどの存在である、グリフォンを倒すにはいたらない。
ハズであった。
着弾と同時に大爆発を起こす玉。
紅蓮の炎とともに無数の小さな玉つぶが飛び出して、至近距離から無防備な態勢のグリフォンの腹におそいかかり、さらなる爆発を引き起こす。
これを好機とみたサイラス。
砲撃手に命じて、ありったけの大砲の玉をたて続けに撃たせました。
荒地の空に起きた大爆発。
立ち込める黒煙がモヤとなり、乾いた大地に破片がパラパラと降り、火薬のツンとしたニオイが辺りに漂う。
猛攻の様子を全軍が固唾をのんで見守る中。
ぐらりと傾げた巨体。
上空よりグリフォンが、地表へと落ちていく。
ドサリと音がして赤い砂塵が舞った。
それと同時に天地を揺るがすほどの大歓声が上がりました。
0
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
にゃんとワンダフルDAYS
月芝
児童書・童話
仲のいい友達と遊んだ帰り道。
小学五年生の音苗和香は気になるクラスの男子と急接近したもので、ドキドキ。
頬を赤らめながら家へと向かっていたら、不意に胸が苦しくなって……
ついにはめまいがして、クラクラへたり込んでしまう。
で、気づいたときには、なぜだかネコの姿になっていた!
「にゃんにゃこれーっ!」
パニックを起こす和香、なのに母や祖母は「あらまぁ」「おやおや」
この異常事態を平然と受け入れていた。
ヒロインの身に起きた奇天烈な現象。
明かさられる一族の秘密。
御所さまなる存在。
猫になったり、動物たちと交流したり、妖しいアレに絡まれたり。
ときにはピンチにも見舞われ、あわやな場面も!
でもそんな和香の前に颯爽とあらわれるヒーロー。
白いシェパード――ホワイトナイトさまも登場したりして。
ひょんなことから人とネコ、二つの世界を行ったり来たり。
和香の周囲では様々な騒動が巻き起こる。
メルヘンチックだけれども現実はそう甘くない!?
少女のちょっと不思議な冒険譚、ここに開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる