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48 封印解除
しおりを挟む暴れる巨大な赤い大蛇。
尾の一撃を大剣で受けて、戦士ガントンが飛ばされました。地面に激しく打ちつけられて苦しむ彼を治療するために、すかさず駆け寄る神官エリエール。
魔法使いドックの放った炎の玉は、大蛇の口から発っせられたイナヅマにてかき消され、弓士ピピンの必中の矢は、体をおおう固いウロコにはじかれてしまいます。
唯一まともに通るのは聖剣での攻撃。
ですがソレをさせじとカミナリ魔法を放って、勇者を近づけさせない蛇体のミラ。
人の形のときとはケタ違いの威力を前にして、勇者シュウもなかなか近寄れません。
「ええい、ちょろちょろとうっとうしい。コレでも喰らいなっ!」
ミラが天に向かって吼える。
とたんに、無数のいかづちが雨のように古城の中庭に降り注ぐ。
直撃こそはかわす勇者たち。ですがそれでも全身が傷だらけになってボロボロになるほど。
ティア姫とルクを守りながらの戦い。
戦況は極めて不利。
「マズいな……」
勇者がポツリとつぶやいた、そのときです。
うっすらと視界がかすんでいることに気がつきました。
おもわず自分の目元をゴシゴシこする勇者。
てっきり毒でも受けたのかと心配したのですが、そうではありませんでした。場所全体に白いモヤがかかっているようです。
「ドックの魔法か?」
「ちがう。私じゃない」
「だったらヤツか」と口にしたシュウ。ですが大蛇のほうもこの状況に戸惑っている様子。どうやらちがうみたい。
そうしているうちにも、ドンドンと白さを増して濃くなっていくモヤ。
ついには一帯が白い霧におおわれて、なにも見えなくなってしまいました。
霧は中庭だけでなく、古城全体をもおおいつくしてしまう。
中にいる者たちは自分の指先すらも見えません。
赤い大蛇が闇雲にシッポをふりますが、まるで体にまとわりついてくるようで、ますますひどくなっていく。怒りにまかせていかづちを放つも、すべて霧に吸い込まれて消えてしまいました。これは先ほどと同じ。
「くそ! またしても、なんなんだい、さっきから」
どたんぼたんと暴れて、霧の中にミラの怒鳴り声が響きます。
それから遠ざかるように、慎重に後退していく勇者たち。
まるで霧が導いてくれるかのように、自然と合流をはたす五人。
「これは、天の御使いであるルクさんのチカラでしょう。おそらく先ほどのいかづちを吸収したのも。あんな状態なのに私たちを助けるために……」
エリエールの言葉を聞いて、ギリッと歯を食いしばった光の勇者。
「あの野郎、ムチャしやがって」
「これでこたえなきゃあ、男がすたるってもんだな」と戦士ガントン。
「霧の魔法ですか。私はあとでやり方を教えてもらいたいですね」と魔法使いドック。
「……ヤル」と弓士のピピン。
「ええ、勇者組のチカラで、あのヘビ女にひと泡ふかせてあげましょう。全員、武器を出して下さい。封印を解除します」と神官エリエール。
彼女がみなの武器にひと指し指にはめた金の指輪を近づけて、ごにょごにょと呪文を唱えると、ぼぅと浮き上がったのは錠前のついた黄金のクサリ。
呪文が終わると同時に、錠前が音もなく開いて、ほどけたクサリとともにかき消えてしまいました。
とたんに勇者の聖剣が、戦士の大剣が、魔法使いの杖が、弓士の弓が、そして神官の腕輪が、グンと存在感を増す。
手筈を相談して散開する五人。
霧の中にもかかわらず大蛇の居場所や、お互いの位置がわかる。それどころか霧を通してみんなの考えていることが、おぼろげながらも伝わって来るから、視界がふさがれていてもあまり怖くありません。
きっと水色オオカミの子どもが手を貸してくれているのでしょう。
霧を切り裂くように飛来した矢が、赤い大蛇の体に次々と突き立つ。
さっきまで平気だったのに、たやすくウロコをつらぬかれたことに、痛みよりもおどろきを隠せないミラ。信じられないと自分の体に刺さっている矢を見つめる。
すると矢羽のところに、小さな何かがぶら下がっているではありませんか。
「うん? なんだいこりゃあ」
おもわず顔を近づけたその瞬間、「闇夜を照らす、女神の光、爆ぜろ」との女の声が霧の中から聞こえてきて、激しい閃光が発生。
これを近くにてまともに見てしまったからたまらない。
「ぎゃっ」と悲鳴を上げたミラ。紫の目がくらんでしまい、何もみえなくなってしまいました。
霧で見えないのとはまるで違う。たんにまぶしいのではない。頭の中にまで入り込んでは、かき回すような白光。
ズキンズキンと頭痛がして、あわてる赤い大蛇。
するとそこに重たい何かが体にのしかかってきた。
それは側にあった石柱。これを戦士の大剣にて薙ぎ倒したモノ。
一本だけでなく、二本、三本と続き、ついに重みに耐えかねたミラの長い体が、地面にどさりと押し倒された。
無防備に投げ出される格好になった大蛇の首。
そこに光を帯びた聖剣をふりかぶった勇者が、雄叫びをあげておどりかかりました。
必殺の一撃をまともに受けた赤い大蛇。
悲鳴をあげるヒマもなく、両断された首がゴロリと転がる。
ですが勇者は妙な手ごたえに違和感を覚えて、仲間たちに警戒を解くなと伝えました。
ふいに強い風が吹く。
あっという間に消し飛ぶ白い霧。
再び視界が戻り、古城の中庭が姿をあらわす。
そして空より降ってきたのは、押しつぶされそうなほどの強烈な威圧。
「オレの留守中に、いったいなんの騒ぎだ。ことと次第によっては、きさまら、ただではすまさんぞ」
勇者たちが見上げた先には、金色のツバサをもった天空の覇者の姿がありました。
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