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90 悪魔の山の悪魔
しおりを挟む水をもちいた新境地を開拓したカイロさん。
子ウシほどもある紫のクモは、今日も洞くつ内にて、せっせと創作活動に没頭中。
おかげでルクはちっともかまってもらえません。最初にチョロロと水をだしたら、お仕事終了です。あとはとくにすることがありません。
かといって森をぶらぶらしていて、うっかりチョウチョたちにからまれたら、またぞろムチャクチャ言われてしまいますので、かないません。
あの子たちってば、キレイな見た目に反して、口がとってもわるいんですもの。
なので本日は洞くつにこもって、チャチャ姉さんといっしょに、ゴロゴロして過ごしたり、存分に壁画を眺めたりして、ゆったりとすごすことにしました。
手頃な大きさの岩の上で、四肢をだらしなくのばしてダラけている大山猫が、地べたにて腹を見せてバンザイのかっこうをしていた水色オオカミの子に、「そういえば」と話しかけてきました。
「そもそもルクは、なんだってこんな辺鄙(へんぴ)なところに来たんだい?」
いまさらの質問のような気もしますが、天の御使いの勇者としての旅のことなどを、かいつまんで説明しました。そのついでに、ここの悪魔とやらについても興味があって足を運んだと話をしたら、急にくつくつ笑いだしたチャチャ姉さん。
カイロさんと同様に、てっきり物好きなと呆れられるのかと考えていたルク。
しかしチャチャ姉さんの口から次に飛び出したのは、あまりにも意外な言葉。
「だってわざわざ、わたしに会いにきただなんて言うんだもの。おかしくって、おかしくって」
目じりに涙を浮かべて、なおも笑い続けるチャチャ姉さん。
対するルクはポカーンとするしかありません。
だって彼女の言葉が確かならば、チャチャ姉さんこそが、この悪魔の山の悪魔ということになるのですから。
ひょっとして何かの聞きまちがいなのかと、念のためにもう一度、たずねてみたのですが……。
「そうだよ。わたしがここの悪魔、と呼ばれている者さ。ただし封じられているウンヌンの話はデタラメだけどね」
「えぇーっ!」
まさかの展開に、ルクはあんぐり、とってもおどろきました。
そしてそれはこの話をはからずしも耳にしてしまったカイロさんも。
創作活動中はわき目もふらないハズのクモが、おもわずこっちをふり返って、大山猫をガン見しています。
「そんな話、おら、初めて聞いたで」
作品を放り出して、チャチャ姉さんにつめ寄るカイロさん。
「いや、だって、これまでいちども聞かれなかったから。っていうか、ちっとはおかしいと思わなかったのかい? 山猫ってのは山に住むから山猫なんだよ。それがこんなところに居着いている時点でおかしな話だろうに。それもアンタがガキのころから、ずっとかわらない姿のままで」
「そりゃあ、そうだども……。だって、じいちゃんが『女のとしは見た目じゃあ、わかんねえ』って言ってたし。にしても、ほんとうに悪魔だべか」
ちょっぴり疑いのまなざしを向けるカイロさんに、前足をふりふりして、ウソじゃないと誓うチャチャ姉さん。
「そんな目で見るなよ。ウソじゃないって。あー、もう、わかった。だったらあんたらをわたしの家に招待してやるよ」
「えっ、家って、もしかして?」とルク。
「あぁ、この山のてっぺんにあるわたしの家さ。だけどあんまり居心地はよくないぞ。空気はうすいし、風はきついし、寒いし、部屋の中は殺風景だし。それでもよければ来るかい?」
白い霧におおわれて、ツバサを持つトリたちですらもたどりつけずに、ずっとナゾとされていた悪魔の山のてっぺん。
ひょんなことから、そこに足を踏み入れる機会を得たルクとカイロさん。
まさかまさかの展開続き。
ほんとうに、ここは水色オオカミをの子どもを、おどろかせてばかりの場所なのです。
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