水色オオカミのルク

月芝

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135 祝いの鐘

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 互いの拳が、同時に相手の顔面に炸裂。
 頬に受けた強烈な一撃。二人の半竜半人がのけぞって、ふらり。だがそれでも倒れない。
 おのれ! もう一発と踏み込んだところで、リンゴンと聞こえてきたのは鐘の音。
 とたんにピタリと動きを止めて固まったフレイアとレプラ。

 二人のケンカをとめようとして、逆にけちょんけちょんにされて、顔に青あざをつくっては周囲でのびていた多くの警備兵たちも、その音に反応するかのように、むくりと起きました。
 いまにもくずれそうな城内から、大切な書類とか貴重品をかかえて運び出していた事務員たちや、瓦礫に埋もれていた仲間を掘り出していた者たち、その場に居合わせてしまった運のわるい者たち。それだけではなくて、街の方にて日常生活をおくっていたドラゴンたちや、およそ竜の谷にすむすべての住人らが、その鐘の音がはじまったのと、ほとんど同時に口をつぐみ、あらゆる行動をとめて、その音に耳をかたむけます。

 竜の谷の最深部にある皇龍一族の居城。
 敷地内に建つ、いちばん空に近いところにまで伸びた丸い塔。その内部にてグルグルと上へ向かい、螺旋状に吊るされてあるのは、四十六もの数の大きな鐘。どれぐらい大きいのかというと、中にすっぽりと大人のドラゴンがおさまってしまうぐらい。
 使われている素材や、厚みや形が工夫されており、鳴らすとひとつひとつがちがった音がして、その鐘の音は竜の谷のすみずみにまで届く。
 でもこれはただの鐘ではありません。
 音色にはすべて意味があり、竜の谷に生まれた者は、まず最初にこれを徹底的に教えこまれます。
 ドラゴンたちにだけわかる暗号のようなもの。

 静まりかえって、四十六の鐘が奏でる音色に耳をすましていた者たち。
 全員がいっしゅん呆けて、キョトンとした表情をしました。ですが次のしゅんかんには、そこかしこにて歓声があがり、ついには谷全体が吉事にわきかえりました。
 鐘の音が告げていたのは、『第二姫ラフィールさま、石化より回復』だったのです。
 これにはたったいままで殴りあっていたフレイアとレプラも、仲良く肩を組んで「やった!」とおおよろこび。
 こうして不毛な争いは終わりましたが、あとに残ったのは、ほとんど原型をとどめていない、しっちゃかめっちゃかのお城。これはもう建て直したほうが、きっと早いことでしょう。
 売り言葉に買い言葉、過去の因縁やら、女の意地やら面子やら失恋の痛手なんかが複雑にからみあい、すっかり頭に血がのぼって、そんなマネをしでかした二人。
 いまはラフィールの復活の報せに、むじゃきに笑いあっていますが、わるいことをしたのですから、とうぜん、きちんとバツを受けることになります。

 断罪する者はすぐにあらわれました。
 お目出度い報せを受けて、登城しようと神殿からやってきてみれば、このありさま。
 傷だらけでボロボロの二人の様子を見て、すぐに何が起こったのかを察し、こめかみに太く立派な青筋を浮かべたのはウィジャばあさん。
 膨れ上がる彼女の怒気。
 ゆらゆらと気焔があがり、あまりの熱気に景色もゆがむ。
 フレイアとレプラのケンカを、体をはってとめようとしていた、勇敢な警備兵たちが、ギョとなって、泡を喰って一目散に逃げ出していく。ただでさえさんざんな目にあったというのに、これ以上のまきぞえはごめんだからです。
 二人の周囲から潮が引くかのようにして、半竜半人姿のドラゴンたちがいなくなったところで、天よりまばゆいばかりの青白い巨大ないかずちがズドン。
 ビリビリ、バリバリ、ドカンと一発。
 空と大地をつなぐかのよう閃光の柱は、今回の騒動の張本人たちをのみ込み、ついでだとばかりに、くずれかけてフラフラしていたお城にもトドメをさしました。
 おかげですっかり更地になったので、再建はずんずんはかどりそうです。


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