水色オオカミのルク

月芝

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138 ふた悶着

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 すっかり元気を取り戻した水色オオカミの子ども。
 いろいろあってかなり長いこと滞在することになった竜の谷を、いよいよ去ることになりました。
 なにせ御使いの勇者としての旅は、まだ道なかばなのですから。
 だからとて、すんなり「じゃあね」「バイバイ」とはいきません。
 旅立ちに際して、ひと悶着もふた悶着も起こります。
 まずウルル姫が、せっかく仲良くなった友だちがいなくなってしまうことに、盛大にゴネました。

「行ってはいやなのじゃ。ルクはここに住めばいいのじゃ。ずっといっしょにいてほしいのじゃ」

 姉が石化していた間は、自分がその分もがんばらないとと、幼いながらに気丈にふるまっていたウルル。その問題が解決したことによって、歳相応の表情や態度をみせるようになって、周囲の大人たちは内心で、ホッとしていたのですけれども、そのぶんちょっとだけ甘えてわがままを言うように。
 それとてもかわいらしいモノなのですが、今回は旅立つ友だちを引きとめようと、自室にこもるという手段にうってでました。
 扉を固く閉ざして、食事も一切とらず、心配し説得にあらわれた王さまや王妃さまの言葉にもまるで耳をかそうとはしません。
 ルクもこのまま別れるのはイヤだったので、なんとか話しをとおもったのですが、機嫌をそこねた幼子はとっても手強くて、「いやいや」とくり返すばかり。どうしたらいいのかわかりません。
 そんな中でウルルを諭したのは、姉のラフィールでした。

「よく聞いてウルル。あなたはこんな形で大切なお友だちと別れてしまって、ほんとうにそれでいいの? わたしたちドラゴンはその身の強さゆえに、ついつい今日も明日も明後日も、同じような毎日が続くと思ってしまう。でもね、ほんとうは先のことなんて誰にもわからないの。ひょっとしたらこれが今生の別れになってしまうかもしれない。わたしはそれをちっとも理解していなかった。失くしてしまってから、あとからいくら後悔しても、かなしんでも、もう手遅れなの。わたしは、ウルルにはそんな想いをしてほしくないの」

 扉ごしに室内にいる妹へと、やさしい声音で語りかけるラフィール。
 愛する人を失って、かなしみのあまり石と化し、自分の世界に閉じこもった彼女だからこその重みをもった言葉。
 しばらくして扉のカギがかちゃりと鳴って、内側から涙目でうなだれている桃色のドラゴンが姿をあらわしました。

 これにて一件落着。
 大人たちはヤレヤレといった表情を浮かべました。
 ですがそのタイミングで、ふたつ目の悶着が起こったのです。

 自分の部屋から「ごめんなのじゃ。うえーん、姉さまー」と泣きながら出てきた妹を、包み込むようにして抱きしめた姉。
 そんな姉妹を見つめる両親たちの目にも光るものが浮かんでいる。

「がんばったわね、ウルル、えらいわ。もしも、どうしてもルク君に会いたくなったら、自分から会いに行っちゃえばいいのよ。わたしもそうするつもりだし」

 ラフィールのこの発言を耳にして、「うん?」と小首をかしげたのは王さま。
 本名「ロン・ユニコ・イギス・ホルンギャスパー・イグニット・ヴァンテイン・イーザル・シナート・アンスウェラー・ガルマラ・ドグマ・シルマリル・ギヌス」といいますが、名前がめちゃくちゃ長くて、めんどうなので、みんなはギヌス王と呼んでいます。

「ラフィールや、そうするつもりとは、いったい何のことなのだ?」とギヌス王。
「何って、もちろんまだ帰らぬあの人を探す旅に出ることですよ。お父さま」

 しれっと答えた娘の発言を受けて王さま、びっくりぎょうてん! 目玉が飛びでんばかりにおどろきました。
 だってようやく石化がとけて、元通りになったばかりだというのに、生粋の箱入り娘がそんなことを言い出したのですから。
 当然ながら父親は猛反対します。ですが娘も引き下がりません。なにせ外へと飛び出す決意を固めての復帰だったのですから。かなしみにうつむいて、待つばかりなんて、もうまっぴら。
 そう主張するラフィールに、「おまえみたいな世間知らずが外界なんぞにいったら、どうなるかわかったものではない」とギヌス王。
 末妹のウルルの引きこもり騒動が片付いたとおもったら、今度は次姉のラフィールの家出宣言? みたいな騒動が勃発。

 かわいい娘に危険な旅なんて絶対にさせたくないギヌス王。
 メソメソ泣き暮らすだけの毎日なんて、もううんざり。絶対に行くとの強硬姿勢をくずさないラフィール。
 このままではらちがあかないと、急遽開かれることになった親族会議。
 はてさて、どうなることやら……。


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