水色オオカミのルク

月芝

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156 解決? 森の便利屋さん

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 男たちがもどるのぼんやりと待っていたところに、ふいにのせられたキレイな花かんむり。
 これにおどろいたエスタロッサ。
 ティーは微笑みかけながら言いました。

「やっぱりかわいい。とってもよく似合っているよ」

 これになぜだか、ポォーとした表情をみせるエスタロッサ。
 しかしティーの方はまるで気がつきません。
 だってティーは知らなかったのですもの。人間たちのお芝居には王子さま役もお姫さま役も、ぜんぶがぜんぶ女性の役者さんたちだけで行われている舞台があるということを。
 そして自分が男兄弟に囲まれているせいか、病で寝込んでいたときの反動もあって、森の便利屋さんとしての活動を続けるうちに、サバサバとしてわりと男っぽくなっていたということも。それが見る者の目によっては、どのように映るのかということも。

「にしてもおそいなぁ。なにやっているのかな、二人とも」
「それはティーがめんどうな条件をつけたからであろう」とガァルディア。
「だってせっかくの勝負なんだし、いわば公開プロポーズみたいな場面で、ヘンなの見たくなかったから」
「あー、それはたしかにのぉ」

 ぐったりした小動物とか、ぐったりしたヘビやトカゲとか、ぐったりしたムシたちとか。
 それよりかは、もうちょっとロマンチックな品を見たいと願った乙女心。

「そういえばエスタロッサさんのスキなモノって何なのかな? 自分で提案しておいていまさらだけど」
「わたしがスキなのは……」

 ティーからたずねられて、急にうつむいたアライグマの娘さん。
 なぜだか頬を染めてチラチラと野ウサギの方を見つめてくるばかりで、ちっとも答えてくれません。ついには「きゃっ」とはずかしそうに両手で顔を隠して背を向けてしまいました。
 これにはティーもガァルディアも、頭にハテナマークを浮かべるばかり。
 だから二人してヒソヒソちょっと相談。

「なにか口にはしづらいモノなのかしら」
「好みはそれぞれ。あまり深く追及しないのがよかろう」
「それもそうよね。乙女たるもの秘密のひとつやふたつぐらいあるわよね」
「うむ。そういうことにしておこう」
「うんうん。そうしましょう」

 森の便利屋さんらがそんな話をしていると、ようやくもどってきたアンドリューとシリウスの両名。
 各々が手に袋をさげています。きっとその中にエスタロッサにささげる品が入っているのでしょう。

 アンドリューが袋から得意気にとり出したのは、花束。
 これには「おっ、なかなかやるじゃん」と感心しかけたティー。しかしすぐに顔から表情がするりと抜け落ちてしまいました。
 それはウルリーという名前の花。
 甘酸っぱいいいニオイがして、見た目には青くてとてもキレイなのですが、根には毒があって、これを食べるとお腹がゴロゴロしちゃう。
 ちなみに花言葉は「秘めたにくしみ」で、別名「ヨメいびり」と呼ばれているモノ。
 愛娘がよそさまの家に嫁ぐさいには、姑から勧められてもうっかり口にしないよう、くれぐれも用心するように母親から言われるとかなんとか。
 女の子たちの間ではわりとよく知られていることですが、どうやら男の子たちの間ではあまり知られていなかったみたい。
 だって、「まだ小さかったころ、二人で泉のほとりで見つけたときに、彼女がステキって言っていたから」と、アンドリューさんが自信満々なんですもの。
 きっと幼少期の美化された想い出にかこつけて、エスタロッサさんの心にうったえかける作戦なのでしょうけれども、完全に裏目にでました。

 シリウスが袋からとり出したのは、木彫りの腕輪。
 けっして上等な細工仕事ではありません。けれどもいっしょうけんめいに相手のことを想って造ったという、熱意がヒシヒシと伝わってくる品。不格好だけども、とってもステキな贈り物。
 これには「おっ、なかなかやるじゃん」と感心しかけたティー。ですがそんな気持ちはすぐに冷めました。
 だって直後に現れた別のアライグマの娘さんが、その腕輪をひったくってこう言ったのですもの。

「ちょっとお兄ちゃん! かってに私の大切な腕輪をもっていかないでよ。せっかく彼ががんばって作ってくれたのに」

 もちろん品物は妹アライグマに没収されて、かわりに彼がもらったのはバシンと平手打ち。
 右の頬をはらしたシリウスを前にして、もはやかける言葉もみつからない一同。
 そしてこんなアンドリューとシリウスの求婚に、エスタロッサが応じるわけもなくって、結果として最後の勝負も引き分けに終わってしまいました。

 森の便利屋さんとしてのお仕事は失敗?
 丸一日かけた茶番劇がすべて台無しに終わり、ぐったりするティーとガァルディア。
 がっくしとうなだれる男たち。
 そんな彼らにたいしてエスタロッサが口にしたのは、「ごめんなさい。わたしはほんとうの愛を見つけてしまったの。だからあなたたちとは、もうこれっきりにしてちょうだい」という冷たい宣告でした。
 肉体よりもおもに精神的なつかれのせいか、どこかぼんやりとした頭にて、エスタロッサのこの発言を聞いていたティーは、つくづく思いました。

「さいしょからあなたがきっぱりと言っていたら、それでよかったんじゃないの」と。

 こうして森の便利屋さん主催による「エスタロッサの愛、争奪戦三本勝負」は幕を閉じたのです。
 そしてアンドリューとシリウスは勝負を通じて、友情を深めたせいか、終生の友となり、森の便利屋さんには翌日から、新たな仲間が増えることになりました。


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