水色オオカミのルク

月芝

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157 港街の勇者たち

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 これは水色オオカミのルクが、地の国の旅の中で多くを学び、スクスクと成長していた頃のお話。
 魔王の姿を求めて旅を続けていた光の勇者一行は、とある大河沿いにあった港街へと立ち寄っていたのですが……。

「渡し船が出せないって、どういうことなのですか?」

 向こう岸へと行きたい勇者たち。
 いつものようにめんどうな交渉事は、神官のエリエールにまかせっきりの野郎ども。
 船の手配は彼女にお願いして、自分たちはさっさと酒場へとくり出しています。
 まあ、話しかけられる方も、むさくるしい男たちよりかは、すらりとした清楚な美人さんから声をかけられたほうがうれしいですし、なにより一行の財布のヒモをがっちりにぎっている彼女が、最初から出張ったほうが話がはやくてすみますから。
 しかしどうにも雲行きがあやしくなってきました。

「どうもこうも、しばらくまえから河にバケモノがでるようになって、何隻も沈められちまってな。幸い死人こそでちゃあいないが、おかげでこのありさまよ」とは渡し守のおじいさん。

 港には大小の船がずらりと並んで停泊しており、そこかしこにて昼間から酒をのんでは、賭け事に興じている男たちの姿が。
 船が出せなければ仕事になりません。船乗りから船をとりあげられたら、陸にうちあげられた魚と同じ。できることはほとんどありません。
 街に入ってきたときから、なんとなく活気がないなぁ、とは思っていた神官のエリエール。
 このぶんでは、他の船乗りたちに声をかけても同じ答えがかえってくることでしょう。
 しかたがないので先に酒場に行っていた仲間たちと合流して、今後のことを相談するために、いったん話を持ち帰ることにしました。

 酒場に一歩足を踏み入れたとたん、どんよりとした陰気な室内の空気。おもわず「うっ」と、いっしゅんエリエールはのどをつまらせました。
 お酒を楽しむところなので、独特のニオイが充満しているのはあたりまえ。ですが陽気にうたってさわぐ大人の社交場が、すっかりお通夜会場と化しています。
 そこかしこから聞こえてくるのは、グチと不平不満とタメ息ばかり。しんきくさいったらありゃしない。
 そんな暗い雰囲気の中、奥まった席にて陣取っていた勇者と戦士と魔法使いと弓士。

「なんで港街にきたってのに、魚のミイラを喰わなきゃならないんだよ」

 ぶつくさ文句をいいながら、料理をつついていたのは聖剣に選ばれし光の勇者のシュウ。ここのところずっと移動続き、ろくな食事にありつけなくて、ようやくまともな料理が食べられるとよろこんでいたのに。

「まぁ、料理はアレだが酒はわるくないぞ。がははは」

 質より量を信条とする戦士ガントン。大剣をふりまわす剛腕と巨躯をほこる彼は、見た目そのままに細かいことは気にしない。そしてお酒が飲めればわりと機嫌がいい。

「……干物、きらいじゃない」

 山野をかけめぐる元狩人の弓士ピピンは、かつてはたえずエモノを求めて動き回っているような生活だったので、彼の人生においては保存食での食事の方が主食のようなもの。なんだかんだで慣れ親しんだ食生活がいちばん落ち着ける。

「交易が盛んだと聞いていたから、めずらしい魔道具や書物の掘り出し物とかあるかもと期待していたのに……、まさか図書館すらもないとはな。とんだハズレだった。これだから田舎はイヤなんだ」

 手帳になにやら熱心に書き込みながら、そんなことを言っていたのは魔法使いのドック。人とは似て非なる種族である魔法使い。彼らの興味は基本的にいかに自身の知的好奇心を満たすのかということに尽きる。よって知識のニオイのしない土地には、まるで興味なし。

 以上四名の男たちの輪に加わった神官のエリエール。
 彼女こそが勇者組の紅一点にて、唯一の常識人、そして影のリーダー。もしも彼女という楔(くさび)が外れてしまったら、たちまち彼らの旅は立ちゆかなくなってしまい、男たちはバラバラになってしまうことでしょう。

「船が出せないそうです。そしてシュウの料理がマズいのも、河に出没するとかいうバケモノのせいらしいですよ」
「よしっ! さっそく退治しよう。そしてウマい料理にありつくんだ」

 エリエールの話を聞いて、すぐに席を立とうとしたシュウ。
 しかしそれはドックに止められました。

「あいかわらずの考えなしだな。相手は河の中なんだぞ。どうやって見つけるつもりだ」
「そりゃあ船で」
「だれがその船をだしてくれるんだ」
「船乗りたちが」
「それが出来ないからこそ、ここみたいにみな昼間っから飲んだくれているんだろう。ちがうか?」
「うっ」
「まぁ、移動手段についてはおいおい考えるとして、問題は場所だ。水の上だとかってがちがいすぎる。圧倒的にこちらが不利だぞ」

 ドックに言い負かされたシュウは、すっかりヘコんで、ダマりこんでしまいました。
 そんな勇者は放置して、残りのみんなでしばらく相談をしたのですけれども、どうにもいい考えが浮かびません。
 とりあえず今夜のところは宿にこもり、のんびりと長旅のつかれをとろうということになりました。

 夜も次第にふけていき、一行が各自でおもいおもいに過ごしているとき、シャランという鍔鳴り(つばなり)の音がしました。
 それはシュウの持つ光の聖剣から発せられた澄んだ音色。
 あてがわれた部屋のベッドにてゴロゴロとしていた彼は、ガバっと勢いよく起き上がると 剣に手をのばしました。
 まるで音に導かれるかのようにして宿を出ると、そのまま夜の街へと。
 どこか退廃的でにぎやかな歓楽街を尻目に、勇者の足が向かったのは港の方。
 すっかりひとの姿がなくなって、しんと静まりかえり、さびしくなっている船着き場。
 月明りの下、桟橋をつきあたりまでゆっくりと歩いていく。
 するとそこには見知った顔がおりました。

「よう、また会ったな」


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