水色オオカミのルク

月芝

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181 強さの代償

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「この地を訪れた者らは、みんなかんちがいをしている」と剣聖さんは言いました。
「かんちがい?」

 ルクが小首をかしげると、やれやれと肩をすくめてみせた剣聖。

「ちゃんとあの石碑にも書いてあっただろうに。『我が剣をもって試練を越えし者。武の極みへと至らん』って」

 剣の修行なんだから、自分の剣を用意して挑むのは当たり前でしょう。
 なのにその解釈が、そもそもまちがっていると剣聖さん。
 石碑にあった「我が剣」とは「自分の剣」という意味ではなくて、文字通りのこと。
 つまり剣聖さんの剣たる、このボロっちい剣を持っていけという意味だったのです。
 なのにみんな周囲にある立派な剣にばかり目がいき、このボロ剣に手を伸ばすものは一人たりともいなかったそうです。
 他の剣にしたって、彼女が無造作に地面に突き刺しただけのモノ。
 まあ女の恨みというか怨念というか、それに近い何かがたっぷりと込められてあるので、生半可なことでは抜けるハズもなく、しかも男性となればなおさらとは剣聖さん談。
 でも、これはとてもいい情報が聞けました。
 おもわず水色オオカミの子どもはシッポをぶんぶん。
 だってこの剣を持って行けば、ライムさんの願いがかなえられるんだもの。
 いえ、ひょっとしたら一発逆転すらもあるかも。

「ルクがよろこんでいる理由はおおかた予想がつくけれども、ざんねんながら、そんなに世の中、甘くはないんだよ」
「どういうこと?」
「強いチカラを得るには、相応の代償を支払う必要があるということさ」
「だいしょう、それって」
「剣聖へと至る。そのために払うモノとは……」

 それは人生。本来ならばおとずれたであろう幸福。その未来を対価にすること。
 とどのつまり、「一生結婚できない呪い」にかかってしまうのです。
 恋人だとか、大人の付き合いだとか、そんな抜け道は一切なし。
 異性どころか同性からもいくら好意を寄せられようとも、けっして結ばれることはない。
 ようは先代の剣聖さんと同じ孤独の道を歩むということ。
 そのかわりに特典として、伝説の剣士から手とり足とり、というか頭の中に直接、心の中にも直接、ときにはカラダをも直接あやつられて、年中無休にて四六時中、ガシガシ熱血指導を受けられます。
 これで強くならないほうがどうかしている、というほどの英才教育が施されるんだとか。
 たしかに最強へと至る道、それを最短でひた走ることにはなるのでしょう。
 ですが地味にヒドイ。
 さすがに、この条件には水色オオカミの子どもも「えぇーっ」と声をあげずにはいられない。

「まっ、そんなわけだからムリ強いはしないよ。よくよく考えることだね。人生を捨てて、武の奈落へと飛び込む覚悟があるのならば我が剣を手にとれと、ライムだっけか? あの若造に教えてやってくれ」

 剣聖さんがそう言うなり世界がふたたび動き出す。
 そして彼女の姿はいつのまにか消えていました。


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