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215 勇者とドラゴン
しおりを挟む武芸大会、決勝戦の舞台上にて。
ここまで勝ち上がってきたドラゴンラバーとシガピ。
ドラゴンラバーの三人娘の正体はドラゴン。
シガピの正体は光の勇者御一行。なおシガピは大会に参加しているメンバーの名前の頭文字を一つずつ取ってくっつけたという安直なモノ。
双方ともにいちおう周囲に正体はヒミツ。
二つのチームや観客らをまえに、大会主催者である領主のゼリッシュ・ダスコールが演説をしているのを適当に聞き流しながら、言葉を交わしていたのは、女戦士と男戦士。
「ひさしぶりだな、フレイア」
「あんたもな。まさかこんなところで会うとはおもわなかったよ、ガントン」
自分をふった相手だというのに、気さくにあいさつをかわすフレイア。
自分がふった相手だというのに、まるで気にしていないガントン。
なんとも神経の図太い二人にあきれつつも、対戦相手の戦士にいつになくきびしい視線を向けていたのはレプラとラフィール。
彼女たちの中では、すでに彼はウルル姫を狙う毒虫、全女性の敵認定されてしまっていたのです。
「えらくにらまれてるな。おっさん、彼女たちに何かしたのか? にしてもピンクの彼女、べっぴんだなぁ。正体明かしたらお近づきなれるかな」と勇者シュウ。
「……殺意の波動を感じる。これは有罪確定。あとたしかにピンクの彼女は可憐。それから勇者の看板にひかれて寄ってくるのにロクなのはいない。いいかげんに学べ」とは弓士ピピン。無口な彼にしてはめずらしく、いつもよりちょっと口数が多いのは、祭りの空気にあてられたせいかも。
仲間たちからあらぬ疑いをかけられて、首をぶんぶん横にふったガントン。
しかしいくら潔白を主張しようとも二人はジト目のまま。
キレイどころの女性から熱い視線を受け、なんら身におぼえのないガントンは、困惑の表情を浮かべていました。よもや自分の女性の好みが原因だとはおもいもよらないことでしょう。
なお勇者組に所属している魔法使いのドックは街の図書館に行っているので、会場にはいません。野郎どもの応援なんぞ時間のムダなんだそうです。
神官のエリエールはお義理で観戦中。
先鋒戦はレプラ対シュウ。
光の勇者はこれまでの旅のモロモロの中で学びました。一番の見せ場に登場だとか、真打ちはあとからとか、主役は遅れてやってくるとか、ごちゃごちゃ考えていると出番がちっとも回ってこないということに。
だから一番手に名乗りをあげたのですが……。
初手からはげしくぶつかる両者の剣。
互いに一歩も引かずに、舞台の中央にてはげしく打ち合う。
じょじょに攻撃の手を速めていくシュウ。ですがこれに難なくついていくレプラ。
じきに剣身がほとんどの観客の目では追えなくなり、きらめく残光の軌跡とキンキン鳴る二人の剣が奏でる音ばかりが会場内にひびくように。
そして両者が同じタイミングで真一文字にふり抜いたところで、二人の剣がそろって粉々に砕けてしまいました。
引き分け。
そうおもわれた次のしゅんかん、後方に飛ばされたのはシュウのカラダ。
レプラの強力な前蹴りによって、そのまま場外に。
これにて勝負あり。
しかし勝ったはずのレプラがムズかしい顔をしてもどってきたので、フレイアがワケをたずねました。
「ギリギリで自分から後方に飛んで蹴りの威力をそらされた。いかに人化しているとはいえ、このわたしの蹴りを。いったい何者だ? あの冴えない見た目もひょっとしたら擬態なのかもしれん」
「あー、そういえば言い忘れてた。ガントンのヤツな、いまは光の勇者のパーティーにいるんだと。だからたぶんさっきのアレが勇者じゃないかな」
「アレが女神の聖剣に選ばれた男か……、なるほど」
フレイアの話を聞いて、フムとうなづいたレプラ。どうやら納得したみたいです。
次鋒戦はラフィール対ガントン。
会場内はラフィールへの応援一色。貴賓席から身をのりだしている青年は領主の息子でしょうか。彼までもが周囲が止めるのも聞かずに、熱心に声援をおくっている始末。
そんな中ではじまった試合。
「ウルルはわたしが守る!」
開始直後に猛然と突っ込んでいくラフィール。
瞳には決死の覚悟が宿っており、これまでの流麗な戦い方とは真逆にして苛烈な攻め。嵐の夜に降りしきる雨のような拳打。
あまりのはげしさに防戦一方となるガントン。
大きな剣を盾代わりに、なんとかしのいでいるという状況にて、「ちょ、ちょっと待て。ウルルってだれのことだよ?」となんとか口にする。
「わたしのかわいい妹です」
「妹? とんと身におぼえがないぞ。どこかで会ったか? あんたほどのべっぴんさんの妹だったら、忘れるはずなんてないんだが」
「あなたのようなケダモノに会わせるわけがないでしょう! わたしはそれを阻止するために、ひいては世界中のいたいけな女の子たちを守るために戦っているのですから」
「はぁ? ますますもってワケがわからん」
「とぼけたところでネタはすでにあがっているのです。観念して正義の鉄槌を受けて猛省しなさい」
「ネタとはなんだ。いったい何の話を……」
「ええい、まだ空とぼけるとは。ならば言ってあげましょう、その身の罪深さを」
とちゅうから雲行きがあやしくなっていた次鋒戦。
先ほどまでのはげしいやりとりが、ウソのようにピタっととまったかとおもったら、対戦相手に指先を突きつけて、美姫の口より語られたのはガントンの異性の好みについて。
しんと静まりかえる場内。
いけないモノを見てしまったかのような気まずい空気。
そんな中で、領主さまの命を受けた二人の騎士が舞台上に姿をあらわす。
騎士たちはガントンの両脇をガッチリ固めると、そのまま連れて行ってしまいました。
念のためにこれから取り調べるそうです。
「オレは無実だぁーっ!」
ガントンの魂の叫びは、疑惑のまなざしにて黙殺。
次鋒戦は没収試合となりました。
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