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243 ツバサの聖地
しおりを挟む西の森に張られた広域結界を破り、抜け出した魔女エライザ。
彼女を首からさげた魔法の小袋に収納して、フィオやタピカら野ウサギの兄弟たちがすむ森へと空をいそいでいたのは黒カラスのセンバ。
ですが飛び始めてしばらくすると、ツバメたちの集団におそわれました。
滑空してきたのをかわしたとおもったら、クルリとひるがえりすぐさま下から突き上げてくる。
四方八方からせまり、うっかりツバサがかすっただけで、スパッと切れたものだからセンバはびっくりしました。どう考えてもふつうのトリにできることではありません。
かぎりなく漆黒に近い藍色の群れ。
つぎつぎと突撃してくるのを、なんとかかわしつつ先を急ぐも、速さでは向こうが上手につき、多勢に無勢。
このままではマズいと考えたセンバは、急降下して森の中へと逃げ込みました。
元気にしげっている枝葉が障害物となり、ツバメたちの動きをジャマする。
通り抜けられる箇所がかぎられるので、どうしても進路がかさなりがち。
追跡してくる数が多いがゆえに渋滞を起こす連中を尻目に、地面のうえをチョンチョンと跳ねるかのようにして進んでいくカラス。左右のツバサを半開きにしては、器用に浮いたり沈んだりをくり返し、まるでスキップをしているかのよう。
カラスはこういう細かい動きが得意。
単純な競争では勝ち目がないと考えたセンバは、ツバメたちを障害物競争へとまんまと引きずり込んだのです。
日頃から森の配達人として各地を飛び回っている経験もおおいに役に立ちました。
地の利をいかして、なんとか猛追をかわす。
カラダ中にすり傷をたくさんつくりながら、連中をふり切って目的地へとたどりついたセンバ。
ですがそこで待っていたのは、ティーを連れ去れて意気消沈している一同と、あちこちがヒドイありさまになっている森の痛ましい姿でした。
黒カラスのセンバのがんばりによって、なんとか合流を果たしたのですが、ひと足おそくティーは連れ去れたあと。
エスタロッサの口から語られるティーとコークスとの会話の断片。これを思案顔にて聞いていたエライザは、確信を得て「やはり狙いはルクか」と言いました。
白銀の魔女王がティーをオトリにして、ルクを捕獲するつもりだと知り、いきどおる一同。
「こうなればなんとしてもルクと連絡をとらねばならん。誘われるままにノコノコと出かけたら、連中にいいようにやられてしまう。そうなったらルクだけでなくティーの身もあぶない」とエライザ。
なにせこれほどの無体を通す連中です。
オトリや人質として価値があるうちは、それなりのあつかいをされるだろうが、用済みとなったらどうなるかわからない。
だからなんとしても連中より先に水色オオカミの子と連絡をとり、ともにことに当たってティーを救出する必要があります。
ここからは時間との勝負だとエライザに言われて、ならばと声をあげたのはセンバ。
頭からバシャバシャと傷薬をあびて、威勢よく立ち上がりました。
「ルクとはあっしが渡りをつけやす。なぁに心配いりやせん。ツバサの聖地にひとっ飛びしてヒマをしている野郎どもに声をかければ、ルクの居場所なんてすぐにわかりますんで。だからみんなは救出の段取りの方をおねがいしやす」
言うなりツバサをはためかせて空へと浮かびあがった黒カラス。
「おまえにばかり苦労をかけるね。たのんだよ」
「へい、エライザさま。しかとまかされやした」
一度だけみんなの頭上を旋回したカラスは、進路を南へととると、飛び去っていきました。
センバはふだんよりもズンと高い空をゆく。
その分、風の道の流れははげしく、カラダへの負担も大きいのですが、歩みは速い。
彼が一路目指していたのは、すべてのトリたちが聖地とあがめる場所。
ツバサの聖地、鳥葬の塔。
見渡す限りの湿地帯の中にぽつんと立つ巨大な塔。かつては天を貫くほどの高さであったとおもわれるが、なかほどでポキリとおれており、すこしばかり傾いてさえいる。中もほとんどの床が抜け落ちており吹き抜けの煙突状態。階段もとうに朽ちて消え失せているので地上からあがることはまず不可能。それこそツバサでもなければとても登れやしない。
古い建物につき、だれがいったい何のためにこんなところに建てたのかはわかりません。
渡り鳥たちがツバサを休めるのに立ち寄ったり、嵐から身を守るのに利用しているところで、ふだんからじつに多くのトリたちが集ってはにぎやかにしている。そして多くのトリたちがここで最期の時を迎えてもいます。
なぜならここはツバサを持つ者たちみんなの家だから。
最期は家族や友人らに見守られながら、ココロおだやかに逝きたいと願うもの。ゆえにいつからか己の死期をさとったトリたちのツバサが、おのずとここを目指すようになりました。
そんな場所だからこそ聖地には、トリたちが各地で見聞きした多くの情報も集まります。
センバは鳥葬の塔を取り仕切る長老に面会して、なんとしても協力をとりつけるつもりなのでした。
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