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244 鳥のさえずり
しおりを挟むツバサを持つ者たちの聖地、鳥葬の塔。
ムリをしたおかげで半日ばかりで目的へと着いた黒カラスのセンバ。
しかしそのカラダはすでにフラフラ。ずっと高い場所を飛んでいたことで、すっかり冷え切っており、疲れや傷の影響もおおきかったのです。
だからいささか頭がぼうっとしており、ついつい聖地でのしきたりを忘れて、いきなり最上階へと足を踏み入れてしまいました。
塔の上部はトリたちの墓場。彼らの魂が眠る場所にて、みだりに立ち入ることを禁じられていたのです。
くたびれてひっくり返っているセンバをのぞきこみ、「バカもん!」と一喝したのは灰色のフクロウ。
彼こそが聖地をとり仕切っている長老のスウェード。
いきなり目当ての人物とあえてよろこぶセンバとは対照的に、長老の方は怪訝そうな表情を浮かべています。なにせ相手は傷だらけのカラスでしたので。
息もたえだえのセンバの口より、かつまんで事情を説明され、水色オオカミの行方を捜していること、できるかぎり早く連絡を取りたいことなどを聞いた長老は、協力するかわりにある条件を持ち出しました。
それは魔法の小袋を十個、用意するというもの。
魔女エライザさまお手製の魔道具、ひとつだけでもすごい価値だというのに、それを十も寄越せと言われて、「そいつはいささか欲張りすぎじゃあないですかい」と、センバもさすがにあきれ顔。
「早とちりをするではない。だれも寄越せとはいっておらん。貸してほしいと言っておるのだ」
「あっしには同じに聞こえるですが……、それでそんなに集めて何をするつもりなんで?」
そこでよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに前のめりになった長老。
クリクリよく動く丸い目にて見つめながら口にしたのは、森の配達人のこと。
現在はセンバが一人で担っているその業務を、ぜひとも拡大したいと彼は言いました。
評判がおもいのほかに広がっており、問い合わせが殺到しているんだとか。
利用したいという相談も多く、どうしたものかと思案しているところに、当人が飛び込んできたというわけ。スウェードいわくこれはもはや天命であろうと。
「まぁ、保証はできませんがエライザさまに頼むぐらいならばなんとか。けれどもいまは取り込んでいやすから、そっちが片付いてからということになりますよ」
すっかり乗り気になっている長老。とりあえずそれで良しとし、ついでだとばかりに業務を拡大した際には、センバに運営責任者となる約束まで取りつけてしまいました。
「こっちの弱みにつけこんで、なんてジジイだ」
面倒事を押しつけられて悪態をつくカラスに、にへらと笑ってみせた灰色のフクロウ。
ですが約束した以上は、きちんと仕事を引き受けてくれたらしく、すぐさま彼の命を受けたトリたちが方々へと向かって塔より飛び立っていきました。
そこまで見届けたところで、ついに限界に達したセンバは気を失ってしまいます。
そのせいで彼を介抱しながらスウェードがぼそりとつぶやいた言葉は、聞き取れませんでした。
「仲間のためにここまでカラダを張るか。森の配達人としての評判も上々にて、賢人からは小袋を託されるほどに信任も厚い。ふむふむ、これはおもわぬ拾いものかもしれん。ゆくゆくはワシの後継者に……」
当人だけがあずかり知らぬところにて、将来の道がかってにひらけていたセンバは深い眠りへと。
その間に各地へと向かったトリたちが、水色オオカミへと託された伝言を拡散していく。
大きくチカラの強いツバサを持つ者は、より遠くまで飛んでいき、小さくチカラの弱いツバサを持つ者は次へ次へと伝言をバトンのように回してつなぐ。
トリからトリへと網の目のように広がっていく情報。
まるでマス目を埋めるかのようにして、あっという間に地の国中をかけめぐることに。
ついにはツバサつながりにて、ある者たちの耳にも届きました。
「なに? ルクが面倒ごとに巻きこまれているだと。あいつには恩がある。それに白銀の魔女王にはいろいろと借りもあるしな。いいかげんに清算したいとおもっていたところだ」
「ならば、わたしもお供します。あの子には命を救われたのですもの。ここで立たねば女がすたります」
そんな会話を交わしていたのは、荒地の古城に住んでいるグリフォンのルシエルとその奥さんのティア。
時を同じくして、ちがう場所ではトリたちのさえずりを耳にして、にやりと笑う女傭兵の姿がありました。
連れの二人に顔を向ければ、一人はにっこりと微笑み賛同の意を示し、一人は天を仰いですこぶるめんどうそうな顔をしていました。
ですが二対一の多数決にて、次の行き先が定まってしまい、三人連れはさっそくそちらへと向かうことに。
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